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第7話 お姉ちゃん大工事!?

「す、すげぇ・・・・・」


「さすがお姉ちゃん・・・だね」


「玲菜ちゃ〜ん・・・・・お姉ちゃん疲れたよ〜ぅ・・・・・」


里奈が木下家の壁をぶっ壊した翌日、壁やらテーブルやらガラスやら、そしてあの液晶テレビでさえもが全くといっていいほど元通りになっていた。

壁をコンコン、と叩いてみる。―――壊れない。張りぼてじゃない。

テレビをつけてみる。―――ちゃんときれいに写る。おもちゃじゃない。

ガラスをつんつん、と突っついてみる。―――破れない。張り紙じゃない。

驚いた。それはもう心の底から仰天した。まさか、昨日言ったことを実行するなんて、思っても見なかった。




■■■■■




「あはは・・・・今あたしお金ないんだよねぇ・・・・」


「でも壊したでしょ?ちゃんと弁償しないと駄目だよ、お姉ちゃん」


「そうですね。ガラス一枚割られたのとじゃわけが違いますから、きっちり弁償してもらいます」


「えぅ・・・・」


視線をきょろきょろ動してうろたえる里奈。その視線の動きようといったら、まるで先ほど警官から尋問されている刹那と同じだった。落ち着きがなく、さらには動揺している。

えぇ〜っと、うん〜っと・・・・、としばらく考えているうちに、刹那と玲菜の視線に耐えられなくなったのか、テーブルを叩いて勢い良く立ち上がった。


「いいわ!!わかりました!!明日までこのあたしがきっちり直して元通りにしておきます!」


「・・・・・刹那、今のちゃんと聞いたよね?」


「・・・・・あぁ、しかとこの耳で聞いたぞ」


「な、何よ2人ともその目は!!あ、あたしを信用してないでしょ!!」


「大変失礼とは承知ですが、その通りです」


「私もちょっとハッタリにしか聞こえないよ」


「うぅうう!!!見てなさいよ!!ぜ、絶対元通りにしてやるからね!!」


そう言ったあと、里奈は凄まじい勢いで家を走って出て行った。里奈が走り去るその速さといったら、あまりの速さに小さな竜巻が起こってしまったほどである。ぐるぐる回ってびゅーびゅー風が吹く、そんな感じだった。

里奈が走ってこの家を出て行ったとき、2人は同時に同じことを考えた。・・・逃げたな、と。

ところがその1時間後、里奈は戻ってきた。―――両手に余るほど、大量のドリルやら金槌やらの工具を持って。


「いくわよ〜!!絶対明日まで直してやるからね!!!」


里奈はそう言って作業に取り掛かったのであった。




■■■■■




「まさか本当にやるとはなぁ・・・・」


夜中、ガンガンという音もしなかったので、てっきり諦めたのかと思ってはいたが・・・・・これほど忠実に元通りにするとは予想できなかった。


「夜中なんて大変だったんだから・・・・・。ドリルとか金槌とかの音はうるさいから全部手でやったのよ・・・・」


よく見ると、里奈の手は真っ赤に腫れている。釘などを手で打ったのだから当然だろう。

・・・・・って、よくこれだけで済んだな!!釘だぞ釘!?素手でやってその程度で済むのかよ!!


「お姉ちゃん大丈夫?」


玲菜は仰向けに倒れている里奈に声をかける。


「うぅ〜・・・・・ちゅーしてくれたら治るかもぉ・・・・・」


「じゃあ大丈夫だね。よかった」


「大丈夫じゃないよ〜・・・・・」


ぐったりしている里奈を遊んでいる玲菜。・・・おいおい、ちょっと休ませないとやばいんじゃいのか?


「里奈さん、お疲れ様でした。玲菜の部屋で休んでください。廊下を真っ直ぐ行ってすぐです」


「・・・そうする」


里奈はむくり、と立ち上がると、ふらふらと千鳥足で玲菜の部屋へと向かっていった。・・・ゴツ!!と、途中で壁に頭をぶつけている。本当に大丈夫か?


「ちょっと悪いことしちゃったかな・・・・」


「大丈夫だよ。たぶん、あれ演技だから」


「え、演技ぃ!?」


「うん。だってあれくらいで疲れるお姉ちゃんじゃないもの。仕事してるときなんて1週間の徹夜と労働なんて当たり前にこなしてたから」


「い・・・1週間・・・・」


「私は3日で駄目だったけどね。殺し屋だって楽な仕事じゃないんだよ?」


「へ、へぇ〜・・・・・」


玲菜の言ったことを聞いて固まっている刹那。

玲菜の3日間ぶっ続けで仕事をしている姿と、自分が3日続けて勉強している姿と重ねてみる。・・・・・やべ、気持ち悪くなってきた。


「? どうしたの刹那?」


「いや、玲菜も頑張ってるなぁって思ってさ・・・・」


「? まぁいいや。それより、おなか空かない?ご飯にしよ」


「あぁそうだな。それじゃ今日は俺がやるよ」


「え?私がやるよ」


さも当たり前のように玲菜が言ったので、刹那はきょとんとしてしまった。


「だって、昨日は3食全部玲菜が作ってくれたじゃないか。今日くらい俺がやるよ」


「じゃあ聞くけど、刹那って私より料理上手なの?」


「な、何でそんなこと聞くんだよ?」


「だって、私はおいしいもの食べたいもの」


「ぐ・・・・・」


・・・痛いところを突かれた。自分の料理の腕と玲菜の料理の腕じゃ天と地の差だ。昨日の3食ではっきりしている。自分の料理が一番星だとしたら、玲菜の料理は100年に一度見られるか見られないかの流星群だ。

とにかく、自分は玲菜よりも料理が上手ではないということだけは確かだ。それは認めざるを得ない。

心の中が顔に出ていたらしい。玲菜はいたずらに笑って言った。


「私のほうが上手だよね?それは昨日のでわかってると思うし」


「そ、そうだけど・・・・・」


「じゃあ決まりね。ほら、行こ?」


どうも納得がいかなかったが、まぁいいだろうと思い玲菜に料理を任せるとする。楽だし、自分で作るよりおいしいものが運ばれてくるのだ。悪い点などない。

でも、玲菜ばっかりにやらせるわけにもいかない。何か1つくらい自分もやらなければならない。何にしようか・・・・・そうだ。


「じゃあ皿洗いくらいはやらせてくれよ、それくらいならいいだろ?」


料理は駄目でも、それを作ったあとの片付けくらいなら玲菜だってやらせてくれるだろう。だが、玲菜は微笑みながら首を横に振った。


「何言ってるの、片付けまでが料理じゃないの。だから駄目」


・・・玲菜はどうあっても刹那をキッチンに立たせないらしい。何を言ってもやらせてあげないよ、と玲菜の顔がそう言っていた。

玲菜はキッチンに向かい、何を作ろうかな、と冷蔵庫の中にあるものを見て唸り、しばらく考え込んでいた。腕組みをしながら首を傾げる玲菜・・・・・なんかいいかも。

玲菜が考え込んでいる間、刹那はテレビを見ることにした。里奈がどこからか持ってきた刹那の買ったものと同じテレビを点ける。・・・ニュースがやってる。今日はどんな事件が起こってるんだ?


『・・・次のニュースです。○○党の斉藤議員が失踪しました』


「・・・え?」


『斉藤議員は昨日家を出たきり自宅には帰らず、そのまま行方が不明となりました。警察は斉藤議員の行き先などを調べていますが依然として居場所はつかめておらず、目撃者の情報を集めるものの情報が全くないとのことで、捜査は難航している模様です』


『どう思いますか辻さん』


『そうですね、やっぱりあれじゃないですか?最近話題になってる『悪徳議員、謎の失踪事件』ってやつですよ』


『やっぱりですか。斉藤議員、最近よくない噂が流れていましたもんね』


『ですね。まぁ悪いことをしたら天誅が下る、ってことですかね』


議員が謎の失踪をする事件のことを、毎日のように語っているニュース。でも、その謎は未だ解決されておらず、謎が謎を呼ぶ奇妙な事件ということで片付けられている。

刹那は、作るものが決まったのか、料理に取り掛かっている玲菜の姿を見て思った。もしかしたら、この事件は玲菜たちの会社が起こしているんじゃないのだろうか、と。そうなれば、楽しそうに包丁で野菜を切っている玲菜も、もしかしたらその事件に関わっているのかもしれない・・・・・。


『次のニュースです。平凡な住宅街で奇妙なことが起こりました』


「?」


『現場との中継でお伝えします。現場の阿部さん?』


『・・・はい阿部です!今その現場に来ております!このようにいたって普通の住宅街ですが・・・』


おいおい、近所じゃないか。一体何があったんだ?幽霊が出たとかか?・・・面白そうだな、近所だから今度行ってみようかな・・・。


『えぇと・・・あ、ここだここだ!ここの家です!ここが[怪奇!壊れた壁が一晩で直ってしまう家]です!!』


「玲菜ぁぁああああああああ!!!!!!!!」


テレビの画面に自宅が移された瞬間、刹那はキッチンにいる玲菜の元へ走った。

当然のことながら、いきなり自分の名前が大声で呼ばれた玲菜の体はビクッと撥ね、何事かと刹那のほうに体を向けた。


「ど、どしたの?」


「どしたのじゃない!!テレビ見ろテレビ!!」


「テレビ?」


「そう!!」


刹那が何で自分にテレビを見せたがるのか、玲菜はよくわからなかったが、刹那があまりにも血相を抱えていたので渋々料理を中断して居間へと足を運んだ。


「・・・・・・・」


「・・・・・・・」


『では、早速お邪魔したいと思います!!すみませ〜ん、おはようございます〜』


ちょうど玄関のほうから、男の声が聞こえてきたような気がしたが、気のせいだろう、うん。テレビの人の声と同じタイミングっぽかったのも何かの間違いだろう、うん。


『あれ?おかしいなぁ、すみませ〜ん!!いらっしゃいますか〜!!』


テレビの中継している人がちょうど家のドアを叩いているのが見える。あれ?そういえば何でさっきから玄関のほうからドンドンっていう音が聞こえるんだろう?おかしいな。


「・・・・・刹那」


「・・・・・・・」


玲菜の声が、刹那の背筋を凍らせた。なんと言うべきか、ゾクッというような、それでいて針のような物で背中を刺されたような、そんな感じがした。たらーっと、額から冷や汗が流れているのがわかった。


「・・・追い返してきて、今すぐ」


「はい・・・・」


玲菜はそう言うとキッチンに戻り、先ほど中断した料理の続きを始めたようだった。・・・何だか、野菜を切る包丁の音が激しいような気がする。ザクザクじゃなくて、ドンドンっていう感じ。切っているよりも、叩いている音に近い。

再びテレビのほうに目をやる。・・・もう家の中に押しかけてきそうな勢いだ。早目にいかないと、玲菜の堪忍袋が破裂する。


「・・・なんでこうなるかなぁ・・・」


はぁ〜、と深くため息をついてから、刹那は興味津々に目を輝かせているテレビ局の人が待っている渋々玄関先へと向かったのだった。

・・・余談だが、刹那が玄関先に向かったのが7時半ちょっと。朝食が9時過ぎになったらしい。


大体軌道に乗ってきました。

5日というゆったりとしたペースがいいのかもしれないです。この調子でやっていきたいと思います。

殺し屋、これからもよろしくお願いします!

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