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第68話 一緒に登校

「はぁ・・・・・」


今日帰ってくるころには元通りになっている、と言ったものの、本当に元通りになれるかどうか自信がなかった。その証拠に、さっきからため息ばかりついている。理恵と会ったときにどういった態度をとればいいのか・・・・・見当もつかない。


「・・・はぁ」


今日で一体何回ため息をついたのだろうか? 何回大きくため息をついても一向に収まらない。何だか、常にため息をついていなければならなくなってしまったみたいだ。

ため息と一緒にこの憂鬱な気持ちも出ていってしまえばいいのに。そうすれば、たぶん昨日のことなんて何の問題もなく理恵と話すことができる。何事もなかったかのように、ごく普通に。

でもそうはいかない。ため息をいくらついたところで、この憂鬱な気分を晴らすことなどできない。理恵と直接話しをし、そして元通りの関係になるまで、この気分が晴れることはないのだ。

理恵と会うのは昼にみんなと一緒に昼食を食べる昼休みのときだ。そのときに謝ろう。


「・・・・・よし」


となれば、だ。どうやって謝るかを考えなければならない。まさか行き当たりばったりで解決できるほど甘くない。もしそうだったとしても、自然と出た言葉で理恵に許してもらおうだなんて考えるのは失礼だ。・・・・・まぁ、理恵と会ってしまったら何も言えなくなってしまうだろうが。

まずは・・・・・どうしようか。理恵を呼び出せばいいのだろうか? それでもって、昨日のことを謝る。・・・いや、でも何ついて謝っているの? って切り返されたら言い返せない。何せ原因が自分でもわかっていないのだ。

となると、やっぱりそのことから考えなければいけないのだろうか? 昨日あんなことになってしまった原因・・・・・昨日ずっと悩んで、考えても出なかった答えをだ。そんな難問を、昼休みまでの短時間で理解することはちょっと難しいことかもしれないが、やらなければならない。こうなったのはすべて自分のせいなのだか―――――


「刹那? どうしたの、ボーっとして」


「え・・・・・? え゛!!??」


後ろを振り向いてみると、そこには理恵が立っていた。・・・まずい、こんなに早く会うとは思ってもみなかった。まだどういうふうに謝るか考えていないのに・・・・。


「? どうしたの? そんなに慌てて」


「いや、えっと、その・・・・・」


「?」


「その・・・・・えっと・・・・・」


予想していた通りだった。あらかじめ謝る内容を考えていないため、どうもうまく喋ることができない。何か言おうとしても、出てこない。どもってしまって、なかなか言葉になってくれない。

でも、謝らなければ。謝って、昨日のことを許してもらわなければ。


「あ、あの―――」


「・・・昨日はごめんね」


「え?」


「急に帰っちゃって・・・。自分から帰ろうって言ったのに、本当にごめんね・・・」


「い、いえ、謝るのはこっちです。怒らせてしまったようで、本当にすみませんでした」


「それもアタシのせい。刹那は何も悪くないのに、勝手に怒って、勝手に帰って・・・・・本当に、馬鹿みたい」


「そ、そんなことないですよ! 大体、悪いのは俺のほうだし・・・・」


「・・・ありがと。刹那は優しいね」


そう言うと、理恵は刹那ににっこりと微笑んだ。・・・・・何だか、違和感がある。いつもと雰囲気が違うというか、ツンツンしてないというか、どうもいつもの理恵と違う。

でも理恵は、別に無理をしてそんな態度をとっているわけではなさそうだった。うまく言えないのだが・・・・・今のこの理恵が本来の姿で、いつものツンツンした態度の理恵が本当の姿じゃないみたいな、そんな感じ。


「色々ね、考えたんだ」


「え?」


「昨日、ずっと考えてたの。恵利と一緒に」


「何を、ですか?」


「だから、色々。自分のこととか、刹那のこととか。他にもいっぱい考えたの」


「・・・・・」


「それでね、決めたの! もっと、素直になろうって!」


理恵は笑顔のまま、胸を張ってそう言った。自信を持って、刹那の目をまっすぐ見つめながら。・・・・・理恵からここまでじっと見つめられることなんて初めてだった。いつもならすぐに目を逸らす理恵に、見つめられている。何だか、少しだけ不思議な感じがした。


「今まで、冷たくしてごめんね。ちょっと、恥ずかしかったから」


「恥ずかしいって・・・・・何がですか?」


「内緒。・・・ふふ」


人差し指をを唇に当て、理恵はいたずらっぽく笑ってみせた。・・・今まで見たことのなかった、理恵の女の子っぽい仕草に、少しドキッとしてしまった。理恵にもこんな可愛らしいところがあったんだな、と思わずにはいられなかった。

初めてそんな表情を見せられてぼーっとしている刹那に、理恵は笑いながら尋ねた。


「どうしたの? もしかしてアタシに見とれてる?」


「え? は?! いや!! これはその!!」


「くすくす、冗談だってば。そんなに慌てなくてもいいのに」


理恵は本当におかしそうに目を細めて笑った。・・・なんか、やばい。顔がすごく赤くなっているような気がするし、すっごく恥ずかしい。


「り、理恵さん!! あの、そろそろ行かないと、その、時間が・・・・」


「あ、そうだね! それじゃ早く行こう!」


そう言うと、理恵はたった、と走り出した。・・・・・走っている理恵の後姿が、何だか嬉しそうだった。理由はよくわからないが、とりあえず仲直りできたようでよかった・・・。

理恵は刹那が追いかけてこないのに気が付くと、くるっと振り返って手を振りながら叫んだ。


「お〜い。遅刻しちゃうぞ〜?」


「え、あ、はい! 今行きます!」


慌てて理恵の後を追う刹那。・・・心の中のわだかまりは、いつの間にか溶けてしまっていた。


と、いうわけで仲直りです。

これからも「殺し屋」よろしくお願いします!

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