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第64話 始業式も始まり・・・

「・・・・・ついに、ついにこの日がやってきてしまった」


居間の窓を開け、刹那はそう呟いた。外はまだ静かで、日の光が霧を照らしていて不思議な雰囲気を醸し出していた。・・・自分のこの憂鬱な気分も、この霧に覆われてしまえばいいのに。

どうしても、そう思わずにはいられなかった。なぜこの日が来てしまったのか、それを嘆いても目の前にある現実は消えない。そう、消えないのだ。事実は消えることなく、まもなく訪れる。避けることなどできやしない。受け入れるしかないのだ。ならばいっそ、見えないように事実が霧に覆われてしまえばいいのだ。事実は、いつも幸せをもたらすとは限らないのだから。

だが、そんなことを言っても何の解決にもならない。霧に包まれて見えなくなったからと言って、事実はなくならないのだ。先ほども言ったとおり、受け入れるしかない。現実を、素直に受け入れるしかないのだ。つらくても、そうするしかないのだから。


「窓開けて何やってんのよ。早くこっち来てご飯食べなさい。玲奈ちゃんが作ってくれた料理が冷めちゃうでしょうが」


「・・・・・だって里奈さん、今日から学校ですよ。夏休みももう終わっちゃったし・・・・・」


「そんなこと言ったって、あんた学生じゃないのよ。とっととご飯食べて学校行きなさい。その間、あたしは玲奈ちゃんといちゃいちゃしてるから」


「人がすげぇ悩んでるのにあんたずいぶん楽しそうなこと計画してますね!」


「あんたがいると玲奈ちゃんが恥ずかしがるのよ。つまり、あんたは邪〜魔ってわけ」


「何回も突っ込みましたけど、ここ俺ん家ですよねぇ!?」


「うっさい黙れ! とっとと学校行け! そんで帰って来るな!」


「あんたずいぶん偉そうですね!」


「お姉ちゃん! 住ませてもらってるのにそんなこと言わないの!」


「はぁ〜い・・・・・」


キッチンから、ご飯と味噌汁と焼き魚を乗せたお盆を持った玲奈がやってきた。・・・うん、相変わらずいい匂いだ。空っぽの胃袋にこの匂いはたまらない。


「刹那、今日から学校なんでしょ? ほらほら、急がないと遅刻しちゃうよ?」


「そうだけど、やっぱりなぁ・・・・・休みが続くと行くのが億劫になるっていうか」


「学生さんなんだから頑張らないと! おいしい夕飯作って待ってるから!」


「よ〜し、そんじゃ今日も一日頑張るかぁ〜!」


「・・・・・っち、調子のいいやつめ」


「お姉ちゃん! 水差さないの!」


「はぁ〜い・・・・・」


「ははは・・・」


しゅん、とした里奈をそよに、刹那はテーブルに着く。・・・今日の夕飯はなんだろうか? それだけが今日の楽しみだ。それがあれば頑張れる。億劫な気分も、どこかへ吹っ飛んでしまったくらいだ。


「それじゃ、いただきます」


「「いただきま〜す!」」


玲奈のいただきます、のあとに刹那と里奈がいただきます、をし、朝食は始まったのだった。





+++++





「・・・・・ってわけだ。んじゃ、後期も頑張っていくからな。おしまい」


「きり〜つ」


委員長の掛け声に合わせ、クラス全員はその場で起立する。


「れ〜い」


そして一斉に頭を下げる。・・・2、3人めんどくさがって下げないやつがいるが、担任はそんなことお構いなしにさっさと教室を出て行ってしまった。


「あ〜・・・・・めんどくさい・・・・・」


椅子にもたれかかり、心底だるそうな声でそう漏らす。・・・だるいのは俺もだっての。


「そう言うなって、みんなそうなんだからさ」


「まぁ、そうなんだがな・・・・・。そうだ、恵利んとこ行こう!」


「お前なんか里奈さんみたいだな・・・・・って速!」


刹那が話し終わる前に、博人はだっ! と全速力で教室を出て行った。・・・自分も恋人とかが出来ればあぁなるのだろうか。・・・なりたくないな。身近にそれっぽい人がいるからなおさら・・・。


「はぁ・・・・・帰るか・・・」


クラスの連中はいつの間にかいなくなっていて、教室に残っているのは刹那1人だけだった。いつまで居てもしょうがないし、勉強道具なんて何も入っていない空っぽの鞄を持ち、刹那は教室を後にしようとした。・・・が。


「せ、刹那!」


「おわ!!」


ドアをくぐったところで、いきなり声をかけられた。慌てて見てみると・・・・・なぜか理恵がいた。担任に何か用があるのだろうか?


「理恵さん? どうしたんですか? 担任だったらもう職員室に行きましたけど・・・・」


「ち、違うわよ! あ、あんた今から帰るとこ?!」


「え、あ、はい。そうですけど・・・・・」


「そ、それじゃ、いい、一緒に帰るわよ!!」


「え?! それって・・・・・」


「べ、別に好きで一緒に帰るわけじゃないわよ!! ひ、博人のやつに頼まれたからしょうがなく帰ってあげるだけよ!!」


「ははは・・・・・はい。わかりました。それじゃ一緒に帰りましょうか」


俺って理恵さんに何か嫌われるようなことしたかなぁ・・・。いくら刹那が頭を捻っても答えは一向に出なかった。・・・理恵が照れくさくて、ついツンツンしてしまうことを刹那は知らないのだから当然なのだが・・・。

とにかく、刹那は理恵と一緒に帰ることになったのであった。


と、いうわけで理恵さんと帰ることになってしまった刹那です!

夏祭りではあまりにも理恵さんが不憫だったため、ちょっと考慮してみました。

これからも「殺し屋」よろしくお願いします!

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