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第62話 何となく・・・・?

たくさんあった屋台も一通り回り終わり、刹那と玲奈はカキ氷片手にそこら辺をうろうろと歩き回っていた。ちなみに刹那はイチゴ味、玲奈はメロン味だ。山盛りの氷の上にたっぷりとかけられたシロップがなんとも涼しげだ。


「そういえば刹那」


カキ氷をしゃくしゃく、と混ぜながら玲奈が刹那に声をかけた。


「何だか、さっきより人が多いような気がするんだけど・・・気のせいかな?」


「いや、気のせいじゃないよ。多くなってる。まぁ、もうちょっとで始まるからな」


「? 何が始まるの?」


実に興味深そうな顔をして刹那を見つめる玲奈。・・・う、そんなに見つめられちゃ恥ずかしいぞ。


「花火だよ、あまり大規模なものじゃないけどな。ほら、みんな神社のほうに向かってるだろ? 神社の空いてる所にシートとか敷いて座りながら見る人が多いんだ。花火やる前には神社付近の屋台は片付けるて広くなるし、花火はそこのほうがよく見えるからさ」


言われてみれば、みんな奥のほうにある神社へと向かっている。向かっていないのは自分たちくらいなもので、ほぼ全員の人が神社のほうへ歩いていた。

玲奈はぱっと笑顔になって、刹那の袖をくいくいっと引っ張った。


「ねぇ刹那、花火見に行こうよ!」


玲奈はこういう祭りの会場で花火を見たときがなかった。花火は人の目を惹きつけるものだから、それを利用して気が付かれないうちにターゲットを始末する、という作戦のときにちらっと見たことくらいはあったものの、じっくりと見て楽しむ機会は一度もなかった。せっかくの祭りだし、玲奈も一度くらいはゆっくり何も考えず、ただ純粋に楽しんでみたかった。

だが、玲奈の思惑とは逆に刹那はすぐには返事をせず、まいったなぁ、と言いたげな顔をして目を泳がせていた。


「あ、あのさ玲奈」


「? どうしたの?」


「えっと、何ていうか、神社のほうさ、たぶん人が多くて俺たちが入れるスペースがないと思うんだ」


「うん」


「んと、だからさ、ちょっと見にくくなるけど、ここら辺でいいか?」


「え? 別にいいよ、見られればいいんだから。それに空いてないんじゃしょうがないよ。刹那のせいじゃないんだから、そんなおどおどしないで」


正直、玲奈がそう言ってくれたのでほっとした。初めて見る花火だったから、ちゃんとしたところで見たい、と怒られるかと思ったが、よくよく考えてみれば玲奈がそんなことで怒るはずがなかった。・・・ちょっと恥ずかしい。


「刹那、花火っていつから打ち上げられるの?」


「確か、7時半だったかな。それで今は・・・・・7時25分だから、あと5分」


「もう少しかぁ。楽しみだね」


玲奈は本当に楽しそうな顔をしていた。それだけ生まれて初めて見る花火が楽しみなのだろう。・・・あぁ、眩しい。玲奈のその顔が眩し過ぎる。不謹慎だけど、みんなとはぐれてよかったかもしれない。あぁ、神様・・・・・この日ほどあなたに感謝した日はありません。本当にありがとうございます・・・・・。


「? 刹那、どうしたの、変な顔して?」


「え? あ、いや! 別に何でもない! うん、何でもない!」


「・・・・・そう? それならいいんだけど、」


玲奈は何だか納得いかないような顔をしていたが、何とか誤魔化すことはできたようだった。・・・危ない危ない、こんなことが玲奈に何と思われることやら。

もうすぐ花火が始まるからなのか、屋台という屋台は明かりや火をを消し始めた。明るければ花火が綺麗に見えない、という配慮なのだろうが、これだと足元が見えなくて転んでしまうかもしれない。つまり、ここから動けなくなってしまった、ということだ。・・・いや、別に花火の途中に歩き回るわけではないからいいのだが。

屋台の明かりが全て消え、辺りが真っ暗になった。・・・・・いよいよ花火が始まる。

町内会のアナウンスが提供やら何やらを言ったあとに、ヒューン!! という大きな音が響き渡り、空に打ち上がった小さな玉が雲1つない夜空に綺麗な花を咲かせた。そして数秒遅れたあとに聞こえてくるパーン!! という炸裂音。玲奈が生まれて初めてじっくりと見た花火は、これから打ち上げられるたくさんの花火の前座に相応しい、丸くて、大きくて、そしてとても綺麗な打ち上げ花火だった。


「わぁ・・・・・」


「まだ驚くのは早いぞ、この祭りの花火はこれからだからな」


最初の花火を皮切りに、夜空には数え切れないほどの花火が打ち上がっていった。単発のもの、連発のもの、炸裂したあとに広がるもの、広がったあとに動き出すもの、シャワーのように降るもの、星形のものやハート形のもの。もうどれだけの種類が打ち上がったかわからないくらい、たくさんの花火が打ち上がった。

ちらっと、玲奈の顔を見てみる。打ち上げられた花火の明かりのおかげで、表情を確認するのはそう難しいことではなかった。微笑んでいた。楽しすぎたり、嬉しすぎたりすると自然に笑みがこぼれてしまう。それと同じだと思った。


「・・・? どうしたの?」


「あ、いや、玲奈の顔を見てただけ」


「? どうして?」


「ん〜・・・・・何でだろうな」


「ふふ、変なの。花火見逃しちゃっても知らないからね」


そう言うと、玲奈は再び花火を見始めた。じぃっと、一生懸命に花火を見ることを楽しんでいるようだ。じっと見ているのも悪いかな、と思ったが、刹那は花火見ようとはせず、玲奈の顔をじっと見つめていた。何というか、目が離せなかった。離してしまうのが、何だかもったいないような気がした。

どうしてだろう? と刹那は思った。どうして自分は花火じゃなくて玲奈の顔ばっかり見てるんだろう、と。どうして目が離せなくなっているんだろう、と。・・・自分でも不思議でしょうがなかった。

いつもだったら、『玲奈が可愛いからだ』、と自分の中で納得できる。だが、今は別にそんな理由で玲奈を見ているわけではない。かと言って、ちゃんとした理由があるわけでもない。

ただ何となく、それだけだ。あやふやだが、理由はこれしか見当たらない。何となく・・・・・見たい。それだけ、のはず。


「・・・・・」


自分が今、何を思って玲奈を見つめているのか?

花火の音が響く中頭を捻って考えても答えは一向に出ず、答えは結局花火が終わったあともわからずじまいだった。


夏休みももう終わりに近づいて参りました。

次は・・・・・修学旅行・・・? でしょうか?

これからも「殺し屋」よろしくお願いします!

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