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第61話 ゆっくりでいいんじゃない?

一方、こちらは里奈と博人と恵利の3人。


「今更だけど、お祭りって本当に人が多いわね。何でこんなに人が多いのかしら?」


里奈は綿あめを食べながら、あまりの人の多さに驚いていた。今までまともに『祭り』というものに関わっていなかった里奈は、なぜこんなに人が集まるのかよく理解できていなかった。


「まぁ、楽しいですし、年1度の行事ですし、色々理由はありますよ。あむ」


博人はそう言いながら、里奈の食べかけの綿あめをむしって口に運んだ。・・・・・1口で2分の1を食べられてしまった。


「私たちみたいに、カップルで仲良く過ごしたいっていうのもありますしね。はむ」


恵利はそういいながら、里奈の食べかけの綿あめをむしって口に運んだ。・・・・・またもや2分の1を食べられてしまった。つまるところ、全部食べられてしまった。里奈自身、あまり食べていないのに・・・。


「・・・ねぇあなたたち」


そう言い、里奈はガシッ!! と2人の肩を掴んだ。

そして、いつも刹那に向けている怖〜い笑顔を2人向けた。


「あたし、綿あめ全然食べてないんだけど? 1口2口しか味わってないんだけど?」


「い、いや〜。あんまりにもおいしそうだったからつい!」


「ご、ごめんなさい。え、えと、代わりにこれあげますから!」


そう言って、恵利は手に持っていたイチゴ飴を里奈の顔の前にさ! と差し出した。なかなか大きいイチゴの周りに、赤い綺麗な飴がコーティングされていて実に可愛い。食べるのが惜しいくらいの可愛さだ。

里奈はしばらくじぃ〜っとイチゴ飴を見つめると、はぁ、と軽くため息をついてそれを受け取った。


「・・・しょうがないわね、許してあげるわ。『恵利ちゃん』だけね」


「お、俺はこれを!」


里奈に、じと、と睨まれて慌てて博人が差し出したのは、たこ焼きだった。ほかほかのたこ焼きの上にかけてある香ばしいソースとマヨネーズ、それに青海苔。

里奈はイチゴ飴のときと同様、たこ焼きをじ〜っと見つめてから受け取った。


「・・・ま、いいわ。博人ちゃんも許したげる」


「ど、どうもありがとうございます」


へへ、っと笑いながら、博人は鼻の下を指でこすった。・・・その無邪気な笑顔を見ていると、綿あめを食べられてしまったことなんてどうでもよくなってしまった。しょうがないなぁ、とつい許してしまうのだ。


「博人君ったら、浮気しちゃやだよ? そんな顔しちゃって」


「しないさ! 俺はいつでもお前にべた惚れだよ!」


「ひ、博人君・・・・・」


ひしっと手を握り合ってお互いを見つめ合う2人。それがなんだか微笑ましくて、里奈は止めるのをすっかり忘れて2人に見入っていた。

里奈は玲奈と同様、年が近い男性との出会いがない。殺し屋の仕事でそんなことを求めている暇もなかったし、出会いの場だってこれっぽっちもなかった。

ちょっとしたきっかけがあれば、自分もこんな感じになっていたのかな、と似合いもしないことを考えながら博人と恵利を見てしまう。そんなこと、あるはずないのに、と思っているのに、ついつい思考がそっちのほうへ走ってしまう。


「? どうしたんですか里奈さん。ぼ〜っとしちゃって」


「も、もしかして里奈さん疲れましたか? 私たちはちょっと連れまわし過ぎた、とか・・・・・」


あせりながら心配してくれる2人がおかしくて、里奈はぷっと吹き出してしまった。クスクス、と周りの目も気にせず笑う里奈。

それを見て、博人たちは頭に疑問符を浮かべながら首を傾げた。・・・里奈が急に吹き出した理由がわからないようだった。


「違うわよ。ちょっと、考え事」


「考え事ですか?」


「そう、考え事。2人を見てね、ちょっと羨ましいかなって」


「羨ましい、ですか? 私たちが?」


里奈の返答が意外だったのか、博人と恵利は顔を見合わせた。・・・いちいち反応が可愛いな、と思ってしまった。


「そう。2人ともね、とっても幸せそう。あたしはそんな人いないから、羨ましいなぁって」


「え?! 里奈さん彼氏いないんですか?!」


博人が心底驚いたように目を見開いた。当然だ、こんな美人で、優しくて(これは猫被っているだけ)、まさに理想的とも言える女性に彼氏がいないなんてありえない。ありえなさすぎる。宝くじ一等が5回くらい連続して当たるくらいありえない。いや、もしかしたらそれ以上にありえないかもしれない。

里奈は苦笑いをしながら答えた。


「恥ずかしいことにね。もう20だし、そろそろそういう人見つけないとっては思ってるんだけど・・・・・忙しくてね」


「忙しい? ・・・・・あぁ、里奈さんってモデルやってるんでしたっけ?」


「え?! そうなんですか?!」


恵利がびっくりして里奈に尋ねる。


「まぁ、一般の人が知ってるなんてことはほとんどないくらい売れてないモデルだけどね」


「ど、どうりで綺麗なはずです! すごいです、里奈さん!」


まるで子供がヒーローにでも会ったかのように、恵利は目をキラキラと輝かせて里奈を見つめていた。・・・何というか、里奈はこういう嘘をつきなれているのだが、その、恵利の尊敬の眼差しが何だか痛い、というか。

だが、いたし方がない。本当のことを言うわけにはいかないのだから。


「でもまぁいいわ。ゆっくり見つけてみるから」


「・・・でも、里奈さんだったらその気になればいつでも恋人なんて作れるじゃないんですか? 何もそんなにゆっくりじゃなくてもいいんじゃ・・・」


「恋人を『作る』のと、『見つける』のとじゃ全然違うのよ博人ちゃん。『作る』だとお互い好き合ってないみたいでしょ?」


「ん〜・・・・・確かに」


「だから『見つける』の。ちゃ〜んとあたしのことをわかってくれて、好きでいてくれて、それでいてあたしが好きになれる人をね」


里奈は2人を見て続けた。


「2人だって、作ろうって思ってそういう仲になったわけじゃないでしょ?」


2人は顔を見合わせ、何も言わずにこくん、と頷いた。


「だからね、あたしもあなた達みたいになりたいなって。・・・運命? とか、そういうのってちょっと素敵じゃない?」


「確かに、私と博人君も運命的な出会いだったし」


「図書館なんて、あの日行かなかったらもう2度と行かなかったかもしれないしなぁ」


博人と恵利は、お互い出会ったときのこと思い出して、クスッと笑った。・・・よほど初めて出会ったときが衝撃的だったのだろうか、しばらく2人は笑ったままだった。

一通り笑ったあと、博人はポンッと手を叩いて里奈に言った。


「それじゃ里奈さん! さっそく運命的な出会いを探しに行きましょう!」


「そうですよ里奈さん! その運命の人がこのお祭りに来てるかもしれませんよ! 私と博人君も協力しますから!」


「え? あ、ちょ、ちょっと・・・・・」


一方的に腕を取られ、里奈は強制的に歩かされる形になる。


「ほらほら! 早く行きましょうよ!」


「そうです! 出会いは待ってくれませんよ里奈さん!」


「じ、自分で歩けるから! ふ、2人ともそんなに引っ張らないで! 食べ物が落ちちゃう!」


言うことも聞かず、ただただ自分の腕を引っ張り続ける2人。

・・・・・何だか弟と妹が2人できたみたいだな、と里奈はクスッと笑いながら2人についていったのだった。




・・・気が付けばいつの間にか総アクセス数が20万・・・・。

これも皆様のおかげであります! ありがとうございます!

そして、これからも「殺し屋」よろしくお願いします!

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