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第6話 お姉ちゃん大演技!?

「警察か・・・・・。どうしよう・・・・・」


「今のうちに逃げちゃおうよ玲菜ちゃん。お父さんも心配してたし」


「駄目、私は今日からここで住むんだもん。自分の家は守らないと・・・・・」


「ん〜・・・・・、お姉ちゃんなんで玲菜ちゃんがこの家にこだわるのかわかんないぃ〜・・・・・」


悩む素振りをしている姉を無視して、玲菜は刹那と警官のやり取りを壁に隠れながらこっそりとのぞいていた。

刹那は誰が見てもわかるように狼狽しながら後ずさり、警官はしつこく刹那に詰め寄っている。

―――駄目だ、このままじゃ署まで連行されるかもしれない。何か、何か良い手はないか?

・・・・・・?


{?}


そういえば、何で自分は刹那のために悩んでいるんだろう?ふと、玲菜はそう思った。

別に警察に引き渡したっていいじゃないか。どうせ、恐喝に強盗に殺しの嫌疑をかけられている。それが本当だったら、将来大犯罪者になりかねない。

ちょっとでも毒を出す可能性のある悪い芽は摘み取っておいても問題ない。だから、この場で引き渡してもいいはずだ。

なのに、何で自分はこんなにも刹那のために頑張っているのだろう?

・・・・・そうだ、風邪で倒れたときに世話になったじゃないか。その恩を返すために、今自分は必死になっているんだ。

頭の疑問符を少し強引に消すと、すぐさま現状況の解決策を考える。何かないか、何かないか・・・・・。

必死に考えていたそのときだった。隣にいた姉が、はぁ、とため息をつき、すっと前へ出た。


「お、お姉ちゃん?!」


「玲菜ちゃん、うまくいったらお姉ちゃんにありがとうのちゅ〜してね♪」


玲菜にウインクをした後、刹那と警官のいる玄関へと向かっていった。




+++++




「嘘なんでしょ?今のうちに吐いちゃえば罪は軽くなるよ?」


「お、俺が悪いことしてる前提なのかよ!!」


「そうじゃなきゃ嘘で誤魔化そうとはしないでしょ?」


「う・・・・・」


返す言葉が見つからなかった。どうしても警官の目を見れず、挙動不審な態度を取ってしまう。

いや、自分は悪いことをしたわけでもないし、あの壁を壊したわけでもないのだから、堂々としていてもいいはずなのだが、この警官の目つきと威圧感のせいで自分が悪いことをしてしまったかのような錯覚に襲われる。

じりじり、と詰め寄られる中、救世主は突如現れた。


「あら、どうなさったんですの?」


―――救世主というか、現在の状況を作り出したそもそもの原因というか。

どういうことなのか、刹那と警官の前に現れたのは壁をぶっ壊した張本人の美女だった。


「あ、あっはっはっは。いやいや、近所から通報があったものでして・・・・・」


警官は顔を赤らめながら美女に説明をする。

おい、俺と扱いが全然違うじゃないか!! そう思わずにはいられないほど、その警官の態度は一変していた。


「あ〜、壁のことですわね。実は転んだときに壊しちゃって・・・・・。ほら、この家だいぶ古いですから」


・・・・・刹那の言い訳と同レベルだった。しかもこの家はそれなりに新しいほうだ。刹那が産まれた翌年に建てられたのだから。

当然、警官は美女の言い訳に反論する。―――顔を赤らめながらもじもじと。


「え、いや〜・・・・・。転んだくらいであんなにはならないんじゃないかなぁ〜・・・・・」


「ひ、ひどい・・・・・・」


美女は目に涙を溜め、さめざめと泣き始めた。


「そうですわ、確かに私たちのお家は古いですわ・・・ぐす・・・・・。でも、でも建て直すお金もリフォームするお金もないんですのよ・・・・・ひっく・・・・・。それなのに・・・・それなのにおまわりさんったら・・・・・私たちのお家を馬鹿にしますのね・・・・・。転んだくらいで壊れない?そんなの・・・・・偏見ですわ・・・・・私たちのお家をそんな目で・・・・・」


「す、すみません!べ、別にそんなつもりで言ったんじゃ・・・・」


「嘘です!!私たちを馬鹿にしてるんだわ!!『家くらい建て直せないのかこの貧乏人!!』って目が言ってますもの!!こんなのひどすぎるわ!!!う、うわぁああああん!!!」


―――美女はとうとう床に突っ伏して泣き始めた。それを見た警官はとたんにおろおろしだし、どうすれば泣き止むのかと必死に考えていた。


「うぇえええん!! ひどいわ・・・・・ひどすぎる!!!うぅぅうう!!!!」


「し、失礼しました!!!ほ、報告書には転んだことによる破損と書いておきます!!大変お邪魔しました!!!」


泣き止まないのを悟ったのか、警官は大慌てで玄関を飛び出していった。―――あまり急ぎすぎたので、玄関と道路の段差に足を引っ掛けて転んでいた。

・・・・ってそんな理由でいいのかよ!!!

自分の不幸を心の中で嘆くしかなかった。

警官が完全に見えなくなった頃を見計らい、美女はガバッと立ち上がった。不思議なことに、美女の目は泣いたというのに全く赤くなっていなかった。―――あぁ、絶対嘘泣き使ったよこいつ。


「よし、警察は追っ払った!!玲菜ちゃ〜ん♪お姉ちゃんにちゅ〜して〜♪」


ガッツポーズしたあと、美女は玲菜のいるキッチンのほうに走っていった。―――何だか目が血走っていたように見えたのは気のせいだったのか?

まぁ警官がいなくなったからいいや、そう思い刹那は玲菜と美女のいるキッチンへと向かったのだった。




+++++




「玲菜ちゃ〜ん・・・・・なんでほっぺたなの〜?普通唇にでしょ〜?」


「いいの!!・・・・・本当はしたくもなかったんだから・・・・・」


むぅ〜、と不機嫌そうな顔をしている玲菜の腕には、何かをせがむような顔をしている美女が引っ付いていた。

警察が去った後、とりあえずこの美女は誰だ!!という話になった。玲菜が「お姉ちゃん」と呼んでいたから、玲菜の姉であることは会話の内容からわかるが、名前などそういうものは聞かなければわからない。

この美女のことを説明するため、今テーブルにそれぞれ座って話そうとしているのだが、いつまでたっても話し合いなどできない。

理由はいたって簡単、この美女が玲菜にべったりしているからだ。


「玲菜ちゃ〜ん♪うふふふふふ〜♪」


・・・この美女の猫なで声を聞いていると、何だか寒気がするのは気のせいだろうか?ぶるぶる。


「あぁあああ!!もう!!!とりあえず離れて!!いつまでたっても話が進まないでしょ!!」


「あ〜あ、玲菜ちゃんに怒られちゃった〜・・・・・」


心底残念そうに離れる美女。

はぁ〜と、深い深いため息をついたあと、玲菜は話し始めた。


「この人は私のお姉ちゃん、佐々木 里奈っていうの。私と同じ殺し屋だよ」


「玲菜ちゃんに名前で呼ばれちゃった〜♪お姉ちゃん嬉しい!!」


極上の笑みを浮かべて幸せそうにはしゃいでいる里奈を見てから、刹那は少しためらいがちに話しかけた。


「・・・・それで、里奈さん?何で俺ん家の壁を壊した挙句、俺を殺そうとしたんですか?」


刹那が喋ったとたん、里奈の表情は一変し、バンッとテーブルを両手で叩いて怒鳴った。

・・・そのときテーブルが少し軋んだような音を出したのは気のせいということにしておこう。


「決まってるでしょ!?あんたみたいな極悪人の家にあたしの可愛い玲菜ちゃんを置いとけるわけないからよ!!それで玲菜ちゃんを助けるためにあんたを殺しにきたのよ!!!」


「いや、でもさ・・・・・いくらなんでも壁は壊さなくてもいいんじゃ・・・・・」


「いや、何かかっこいいかなぁって・・・・・」


「おいッ!!!そんな理由で人様の家ぶっ壊してんじゃないよッ!!!」


「だってさ、インパクトってすごく大事だと思うのよね。だからさ、ちょいっとね」


「ちょいっていうレベルじゃないぞ!?あんた何考えてんだ!!??」


「あたしは常に玲菜ちゃんのことしか考えてない!!」


「親指立てて目ぇ輝かせながら言ってんじゃないよ!!」


一通りツッコミ終わったあと、ため息をつきながら椅子に座る。・・・何か知らないが疲れた。


「はぁ・・・・・とりあえず、要点をまとめますね。里奈さんは妹である玲菜を俺から取り戻すためにここへ来た。しかし玲菜が帰ることを渋ったため、その原因と思われる俺を殺そうとした」


「まぁそういうことね。私の玲菜ちゃんを拉致監禁したんだもの・・・殺されて当然よ!!」


「お姉ちゃん、だから違うってば・・・・・」


とりあえず、ギャウギャウ、と怪獣のように怒る里奈を落ち着かせるため、なだめるように頭をなでなでする玲菜。

すると、まるで魔法がかかったかのように里奈の怒りは静まり、自分の頭を撫でている玲菜に抱きつく。玲菜ちゃんかわいぃ〜♪、という言葉と共に。

その光景をしばらく見ていた刹那は、無邪気に玲菜を抱きしめている里奈のぶっ壊した居間のほうをちらっと見て、ため息をついた。

―――何度見ても、やっぱり無残にぶっ壊れている。時折ひゅーと入ってくる風が少し心地よかったり・・・・・。テーブルもひっくり返っちゃって・・・うわ、ガラスも粉々だし。あ〜あ、あのテレビ高かったのに・・・・・。


「・・・・・ところで、あれ・・・きっちり弁償してくれますよね?」


「当然だよ。ね?お姉ちゃん?」


「え?え〜っとね・・・・・あははは・・・・」


盛大にぶっ壊れた壁から、ひゅーと冷たい風が吹いた。


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