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第59話 博人たちは・・・?

ガヤガヤ、と賑わっている祭り会場とはまったく逆で、博人たちの休憩している木の下は全然人気がなかった。はしゃいでいる子供もいなければ、仲良くおしゃべりをしているカップルだっていない。・・・休憩するにはもってこいの場所だ。逆に、騒がしかったら落ち着いて休んでもいられない。休憩はやはりこういう場所ではないと・・・。


「どうですか博人君。良くなりましたか?」


博人に膝枕をしている恵利が、心配そうに尋ねた。


「う〜ん・・・・・まだちょっとフラフラするかなぁ〜♪」


全っ然平気そうな声で、博人はゴロゴロ〜、と恵利の膝の上で転がってみせる。


「もう、博人君ったら〜。ふふふ」


「あははは〜」


「ねぇ博人ちゃん。本当に気分悪い? やっぱり、ちょっとやりすぎちゃった・・・?」


里奈は似合いもしないのに、おたおた、といかにも心配そうに博人に具合を尋ねる。無意識のうちとはいえ、あんなフルパワーでブンブン! と音が出るくらい博人を振ってしまったことを本当に悪かったと思っているようだった。

そうでなければ、あの里奈がここまでしおらしくなるわけがない。例えるのなら、腹を空かしているライオンが、怪我をしているからといって餌となるシマウマを諦めるようなものだ。そんなことはありえない。生きるか死ぬかの瀬戸際に立っているライオンが、情けをかけて獲物を諦めるなんてありえない。

つまり、里奈がこんな風になる、ということはそれだけのことだということだ。・・・・・こんなこと、間違っても本人には言えないが。言った日にはもう血祭りだ。確実に殺される・・・。

そんな里奈に、ははっと笑いかけて、博人はむくりと起き上がった。


「里奈さん、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。ほら、この通りピンピンしてますし」


「・・・本当に?」


「本当ですって。滅茶苦茶速いジェットコースターに乗って酔った、たいな感じですから」


「そう。それならいいけど・・・・・」


しゅん、としている里奈に、恵利は笑顔で話しかけた。


「里奈さん、博人君も元気になったことだし、そろそろお祭りを楽しみませんか?」


「そうだな。せっかくの祭りだし、楽しまないと損ですよ里奈さん」


「そ、それはいいんだけどね。迷子になった子たちはどうするのかな?」


「こんな人ごみじゃ多分探しても無駄ですよ。見つけるだけで何十分もかかっちまうから、祭りが終わったあとに探したほうが絶対に早いです」


「そうかな・・・・・」


なかなか首を立てに振らない里奈。当然だ、女の子2人がこんな広いところで迷子になっているのだ。もしかしたら、酒に酔った危ないおっさんとかにからまれてるかもしれない。それとも、この間の海で会ったナンパ野郎みたいなやつに襲われてるかもしれない。そう考えると、心配で心配でたまらないのだ。・・・ちなみに刹那のことは心配ではない。別にどうでもいいや、みたいな感じである。

大丈夫大丈夫、となだめるように恵利が言った。


「3人ともしっかりしていますから、心配しなくても大丈夫ですよ。もしかしたら、3人とももう合流して楽しんでいるかもしれないですよ?」


「・・・そうよね。大丈夫よね、2人とも」


「? 3人ですよ里奈さん」


「あ、そうそう。3人3人。刹那のことすっかり忘れてたわ」


博人と恵利は里奈の爆弾発言に一瞬だけ呆気に取られ、顔を見合わせてクスクスと笑い出した。


「さぁ! 行きましょう里奈さん。祭りは始まったばっかりですよ!」


「そうです! お祭りは楽しむものです! 一緒に楽しみましょう、里奈さん!」


まるで打ち合わせでもしていたかのように、博人と恵利は同時に里奈の腕を組む、そのまま祭りの会場へと戻って行った。


「わ、わかったから引っ張らないで。あ、歩きにくいわ」


2人に引っ張られている里奈は、そういえば、と思った

いつの間に、自分は人に腕を組まれることに抵抗がなくなったのだろうか、と。

いつの間に、自分はこの子たちに心を許していたのだろうか、と。

ちょっとだけ真面目に考えてみたが、2人の楽しそうな顔を見たら、何だかそんなのどうでもよくなってしまった。自分を楽しませようと張り切っている2人の笑顔は、何だか昔の玲奈みたいだった。世の中の汚い部分を知らず、ただただ純粋で穢れのない真っ白な心。

そのせいだろうか。2人に触れられても違和感がない。むしろ心が洗われるような感じさえする。


{・・・・・はしゃぐのも、たまにはいいかもしれないわね}


心の中でそう思った里奈の足取りは、次第に早くなっていき、いつの間にか逆に2人を引っ張る形になってしまっていた。


こっちももう少しで夏祭りが始まるようです。

これからも「殺し屋」よろしくお願いします!

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