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第58話 迷子の迷子の刹那ちゃん

幼かった頃、『迷子の迷子の子猫ちゃん〜♪』という歌を聴かされたことがある。今の自分はその子猫だなぁ〜、と刹那はしみじみと実感していた。

今自分が祭り会場のどこら辺にいるのかもわからないし、博人たちの居場所もわからない。・・・・・本当に歌の通りになってしまった。もしかしておまわりさんとかも出てくるかもしれない。


「ん〜・・・どうしようかな・・・・・」


探しに行くとしても、居場所がわからない博人たちを探すのはちょっと無理だ。こんなに広い会場だし、人がたくさん居すぎて見分けられる自信がない。・・・まったく情けないが仕方ない。刹那は人探しが大の苦手なのだ。


「あ、そうだ」


そのとき、刹那の頭の中にある電球がパッと閃いた。

『ここで博人たちが来るのを待つ』というものだ。

下手に動けば、せっかく近くまできた博人たちとすれ違いになってしまって合流することができなくなってしまうかもしれないし、この考えなら自分から動かない分探すのにも集中できる。もしかしたら、自分が捜し当てる前に博人たちが自分を見つけてくれるかもしれない。・・・人探しが苦手な刹那にはぴったりの案だ。うん、そうだ、これでいこう。

だが、だ。それならそれでまた問題が出てくる。

・・・・・そう、待っている間がとっても暇だ。

こんな賑やかな会場内で、何もせずただボーっと待っているなんて、刹那にはできない。そう、できやしないのだ。この祭りのことこそ忘れていたが、こんな賑やかな会場にいて楽しまないなんて刹那にはできない! ・・・・・1人で、というのがちょっと寂しいが、こればっかりは仕方ない。

何か面白いものはないかな、と辺りを見渡す。あるのは、りんご飴、金魚すくい、お好み焼き、たこ焼き、などの出店。これでも十分楽しめる。りんご飴なんて甘くておいしいし、金魚すくいなんて最高だ。お好み焼きだって青海苔とソースがうますぎる。

だが! まだ何かが足りない! そう、何か決定的なものが欠けているのだ! もっと熱くなれて、更なる楽しみを与えてくれる素晴らしい出店がない!





そう! それは・・・・・!!







射的だッ!!








そう射的! それは男の浪漫! コルクの弾丸を景品にぶち当ててゲットする! 単純だ! 実に単純なルールだ! それは否定しない!

だがそれが深い! 実に、実に深いのだ!


的の大きさは?


重量は?


そしてどこに当てればいいのか?


それらを全て計算して引き金を引く一瞬の緊張! それがたまらない! 文字通り、血沸き肉踊るというやつだ! これ以上熱くなれる屋台なんてそうそうない! 祭りでも一押しの屋台だ!

射的をこよなく愛する刹那は、射的をやっている出店を探してクルクル回って辺りを見渡した。右を向いてクルクル、左を向いてクルクル。射的はどこかな・・・・・と。


「やっと見つけた」


「え?」


後ろから声をかけられ、刹那は驚いて後ろを振り向いた。そこにいたのは呆れ顔で。今にもため息をつきそうな玲奈だった。


「玲奈だ。どうしたんだ? こんなところで」


玲奈は刹那の言葉を聞くと、頭を押さえてはぁ、と軽くため息をついた。・・・・・そ、そんなに呆れなくてもいいじゃないか。


「刹那を探してたの。もう・・・だめだよ? 心配したんだから」


「ごめんごめん。それで、博人たちは? 一緒なんだろ?」


そう言って、刹那はキョロキョロと辺りを見回す。しかし、いくら見回しても博人たちの姿は確認できない。・・・探し方が悪いのか? よし、じゃあもっと注意深く探してやる。

一生懸命見回して博人たちを探している刹那を見て、玲奈は申し訳なさそうに切り出した。


「あ、あのね刹那・・・・・」


「ん? 何だ?」


「そ、その・・・・・私も・・・・・迷子になっちゃったの・・・・」


「・・・・・え?」


玲奈の言葉を聞いた刹那は一瞬聞き間違えかと思った。だって、あの玲奈がだ。しっかりしてい頼れる、というイメージが強い玲奈が、みんなと離れてしまって迷子だ。何だか玲奈らしくない。・・・何か理由があったのか?


「んと、どうして玲奈は迷子になったんだ?」


「えっとね、その、刹那がちょっと心配になって、その・・・・・」


しどろもどろ、と答えている玲奈。恥ずかしいのだろうか、顔を赤く染め、刹那の目をちらっと見てはすぐにそらす。

これは、何というか・・・・・すっっっっっごく可愛い。あの玲奈が、こんなにしどろもどろになって答えている。滅多に見れないこの姿。それが、いい! 実に、実にいい! どれくらいいいかというと、あまりの可愛さにクラクラするくらいだ! それは刹那も例外ではない! クラクラして今にも倒れてしまいそうだ!


「・・・刹那、聞いてる?」


そんな刹那に、玲奈が少し怪しがって声をかける。・・・当たり前だ。こんな人の多い中で変な顔をしながらフラフラしてれば誰だって怪しがる。周りの人たちも珍しいものでも見るかのように、じぃぃぃ、と刹那を見る。


「え?! あ、聞いてる! もちろん聞いてる! うん!」


「本当かなぁ・・・」


じと、と疑うような目で刹那を見つめる玲奈。・・・ごめんなさい。ほとんど聞いてませんでした。

心の中で謝り、刹那は気を取り直して玲奈に尋ねた。


「それじゃ、博人たちと離れたんだな?」


「う、うん。ごめんね・・・」


「別にいいよ。こうやって俺たちだけでも合流できただけでもよかったよ。玲奈も俺と合流できなくてずっと1人で祭り会場にいなきゃならないって最悪だろ?」


「うん。そうだけど・・・・・」


よほど博人たちとはぐれたことを悪く思っているのか、玲奈は申し訳なさそうに語尾を弱める。

そんな玲奈に刹那はにこっと笑いかけて、ある提案をした。


「玲奈、一緒に回ろう」


「え?」


玲奈はきょとん、としているが、刹那はお構いなしに続ける。


「せっかくの祭りなのに、みんなを探すだけなんて何か寂しいだろ? もっと楽しまないと!」


「・・・うん、そうだね。そうだよね!」


ようやく玲奈の顔にも笑顔が戻ってきた。・・・うん、やっぱり玲奈には笑顔が一番似合う。元気をくれるような、そんな感じがするから大好きだ。


「それじゃ行くか! まずは射的・・・・・やりたいんだけど、どこだろ?」


「あ、射的だったらあっちのほうで見かけたよ」


「よし、じゃあ行こうか!」


がしっ! と、刹那は玲奈の手を握る。・・・・・瞬間、玲奈の顔がぽっと赤くなり、わたわたし始めた。


「え?! ふぇ?! ちょ、ちょっと刹那?!」


「? あぁ、手のことか。こうしておけばさ、はぐれることなんてないだろ?」


「え? で、でもね! あの! そ、その!」


「よし、今度こそ行くぞ!」


「わ、わわ!」


顔を赤く染めた玲奈の小さな手をきゅっと握り締め、刹那は射的屋へと歩き出したのだった。




はい、合流です。こんなこともありますよね?・・・多分あるんじゃないかな・・・うん。

これからも「殺し屋」よろしくお願いします!

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