第57話 バラバラ事件!!
「あれ? お姉ちゃん、刹那がいないよ?」
刹那がいなくなったのに真っ先に気が付いたのは玲奈だった。くるくると辺りを見回し、刹那を探すが一向に見つからない。・・・もしかして、と嫌な予感がした。
「? あら、全然気が付かなかった。はぐれちゃったのかしら?」
里奈も玲奈と同じようにくるくると辺りを見回してみるが、見つけられないようだった。里奈でも探せないとなると・・・・・やっぱり刹那ははぐれてしまったのだ。
「私、ちょっと探してくる!」
「え? あ、ちょっと・・・・・!」
里奈の制止を振り払って、玲奈は人ごみの中へと紛れ込んでいった。慌てて追おうとするが、すでに玲奈の姿は見えなくなっている。このまま追いかけてしまうと、自分まで迷子になってしまう。
とりあえず、だ。このことを博人に報告しなければならない。
「ひ、博人ちゃん!」
「え? どうしたんですか里奈さん」
「玲奈ちゃんが! あたしの玲奈ちゃんが刹那を探しに行ってしまったわ!」
「えっと、つまり・・・・・」
答えようとしている博人の胸倉を掴んで、里奈は涙目に語った。それはもう・・・熱く・・・・。
「あたしの玲奈ちゃんがいなくなったのよ!? どうしましょう! あんな純粋な子がこんな広いところで迷子になっちゃったのよ!? きっとあの子泣いてるわ! 助けてお姉ちゃ〜んって泣きながら叫んでるわ! でもでも! ここで探しに行ったらあたしも迷子になるじゃない?! だから動けないの! 何とかしてよ博人ちゃん!! ねぇねぇねぇったら!!」
「り、なさん! ちょ、っと、落ち、つい、て」
がくがくがく、と思いっきり揺すられながら、博人は里奈を何とかして落ち着かせようとしていたが、里奈が落ち着く気配は一向にない。むしろ混乱が加速している。さすがの博人もちょっと意識が・・・・・。
「り、里奈さん! せ、刹那が迷子になったって、ほ、ほんとですか?!」
理恵はぶんぶん! と力強く博人を振る里奈に尋ねた。心なしか、顔が引きつっているような感じがする。
ややヒステリック気味に、里奈は答えた。・・・何というか、恐竜が暴れてるみたいに。
「そうよ!! あいつったら迷子になるなって言われたばっかりなのに! どうしてこんなに早くいなくなっちゃったりするのかしら! 何考えてんのかしら! 何考えてんのかしら!! な〜に考えてんのかしら!!!」
ますます力を込めて博人をぶんぶんと振る里奈。玲奈のことを心配するあまり、力の加減ができないでいる。・・・博人の顔がちょっと青くなってきた。
「り、な、さ、ん、お、ち、つ、い、て、く、だ、さ、い、よ」
「り、里奈さん落ち着いて! 博人君が大変なことになっちゃいますよ!」
「・・・・っは! ご、ごめんなさい博人ちゃん! あたしったらついつい・・・・。大丈夫?」
恵利の言葉で、ようやく我に返った里奈は慌てて博人から手を離す。ようやく解放された博人は、へなへな〜と、恵利に寄りかかり、ははは、と乾いた笑いで里奈に言った。
「あはは・・・・・。り、里奈さんって、結構力強いんです、ね。ふ、振りほどけなかったです」
「ごめんなさいね、あたしったら、玲奈ちゃんのことになると我を忘れて・・・・」
「でも本当にすごい力でしたよね。里奈さんすごいです!」
里奈の怪力に、特に怪しんだ様子もなく、尊敬の念をますます強くする恵利に、里奈はははは、と笑うしかなかった。
「せ、刹那が迷子・・・・。迷子・・・・・」
「? どうしたの姉さん?」
恵利に声をかけられ、理恵はがばっと赤くなっている顔を上げた。
「ア、アタシ! さ、探してくる!」
「へ? 姉さん?」
「べ、別に心配だからって行くわけじゃないわよ! ちょ、ちょっと可哀想だから行ってあげるだけなんだから!」
「姉さん、誰もそんなこと聞いてません」
「あ〜もう! どうしてあいつったら迷子になんかなるのかしら! まったく、とんでもなく迷惑だわ! こっちの身にもなってほしいわね!」
「姉さん、嫌だって言ってるのにどうして探しに行くんですか」
「ほ、本当にだめなやつなんだから! アアア、アタシがいないと、ほほ、ほんとにだめなんだから!」
「姉さん、1人で行ったら迷子に・・・・・って、行っちゃった」
何やら独り言を言っている理恵は、恵利の忠告も聞かずに人ごみの中へと紛れ込んでいった。
「ひ、博人君! ど、どうしよう、玲奈さんも姉さんもはぐれちゃったよ!」
「と、とりあえず、休ませてくれ・・・・・」
おどおどしながら、恵利は自分の腕の中にいる博人に話しかけるが、博人はちょっとそれどころではないようだった。・・・よほど里奈に揺すぶられたのがよっぽど効いたらしい。ちょっと目の焦点が合っていないような気がする。
「ご、ごめんね博人ちゃん。本当に大丈夫?」
「はっはっは、大丈夫と言いたい所ですか、さすがにちょっと気分が・・・・・」
「ごめんなさいね、本当に・・・・・」
「なぁに、少し休めば大丈夫ですよ。・・・それにしても」
「それにしても?」
「こんなに早いうちにばらばらになるなんて思わなかったです」
「・・・それはあたしもね。さ、とりあえずここから離れましょ」
「そうですね。・・・はぁ、みんな大丈夫かなぁ・・・・」
・・・・・そんなこんなで、里奈と恵利は博人を支えて人気のないところへと向かったのだった。
果たして、はぐれてしまった刹那、玲奈、理恵の3人の運命やいかに。
見事にバラバラになってしまいましたね。
この後いったいどうなるのでしょうか?
これからも「殺し屋」よろしくお願いします!