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第56話 やっちゃったぜ!

ガヤガヤ、と祭りの会場となっている神社は賑わっていた。

浴衣を着たカップルやら、お面を被った男の子、綿あめをおいしそうに食べている女の子や、いい年して金魚すくいに熱中しているおじさんなど、とにかくたくさんの人が祭りを楽しんでいた。


「相変わらずすごいな」


「そりゃ、たぶん町の半分は来てるだろうからな。夏の大イベントをお前みたいに忘れてるやつの方が珍しいんだよ」


ぐ・・・・・それを言うなよ。結構気にしてるんだからさ・・・。


「これ、ちゃんとくっついてないと迷子になりそうですね」


「大丈夫だ恵利。俺は何があってもお前の傍から離れない!」


「博人君・・・・・」


「恵利・・・・・」


手を握り合い、お互いの瞳を見つめあう2人。・・・おいおい、みんな見てるぞ。恥ずかしくないのかこいつらは。あ、子供が指くわえて見てる。こういうのって、教育上あんまりよくないんじゃないのか? ちょっぴり不安だ。


「ちょ、ちょっとあんた達! み、みんな見てるんだから止めなさいよ!」


顔を赤くしながら理恵が2人に文句を言う。アツアツなその光景を見ているだけでも恥ずかしいのか、時々目をそらしている。


「っとそうだった。ここは人が多すぎる。・・・恵利、今度は人のいないところで・・・・・」


「博人君・・・・・そんなこと・・・・・」


「あ、あんたね! うちの妹にななな、何する気よ!!」


赤かった理恵の顔がさらに赤くなった。何ていうか、病気なんじゃないのか? というくらい真っ赤だった。・・・・・いや、本当に大丈夫だろうか? 倒れたりしないだろうか? 心配だ。


「博人ちゃん、そういうことは人目のつかないところでやるのよ?」


「ん〜、里奈さんが言うんじゃしょうがないな。今回は止めとくか」


「そうですね、里奈さんが言うんだったら我慢します」


「うんうん♪ 2人とも偉いわね、あたし素直な子は好きよ♪」


そう言って、里奈は2人の頭を撫でる。2人とも恥ずかしそうな、でもまんざらでもないような表情を浮かべていた。

・・・この2人、絶対に騙されている。猫を被っている里奈さんに絶対騙されている。あ〜、何と不便なやつらなんだろう。里奈さんの本性を知ったら、あんなふうに喜んで頭を撫でられてなんかいられないだろう。

そう頭に思い浮かべた刹那を、にこ〜っと笑顔で見つめてくる里奈。・・・心なしか殺気が篭っているような気がする。やばい、怖い。ごめんなさい、冗談です、里奈さんは至高の女性です、世界一・・・・いや、宇宙一の女性です。

そう頭に思い浮かべた瞬間、里奈が発している刹那への殺気が消えた・・・・・ような気がする。チクチク、と針が刺さるような感じは消えたが、相変わらず里奈の顔には怖〜い笑顔が張り付いていた。・・・いや、もうホントに勘弁してください。この通り。反省してます。


「と、とりあえず! これからどうすのよ博人!」


依然顔を赤くさせたまま、理恵が博人に尋ねる。


「ん〜、そうだな〜・・・・・。ま、いいや。難しいことは考えないで、適当に出店でも回るか」


ぐるっと周りを埋め尽くしている出店を見ながら博人は言った。


「そんじゃ行くか。人も多いし、祭りの会場も広い。離れたら迷子になるから気をつけるんだぞ」


祭りの会場は先ほども言ったが神社となっている。もちろん出店は神社を中心にあるのだが、そこにしかない、というわけではない。神社をはみ出して町のほうにも出店は広がっており、それに比例して人も多くなっている。神社から町のほうにある一番端の店までの距離は約200m。

つまり、だ。こんな広くて人の多い場所ではぐれたら最後、合流するのはかなり難しい、ということになる。いちいち200mもある道を歩いてみんなを探さなければならなくなるし、人ごみが多すぎて、探しているみんなが陰になって見えなくなる、ということもあり得る。・・・これは大変だ。絶対はぐれないようにしないとな。

博人を先頭に一同は歩き出した。刹那ももちろんその後を追いかける。・・・はずだったのだが、





ドンッ! チャリリリ〜ン!





はしゃいでいた子供に体当たりを食らわされ、刹那は財布の中の小銭をぶちまけてしまった。


「あ、お兄ちゃん、ごめんよ!」


慌ててぶつかった子供は小銭を拾おうとするが、刹那は笑って言った。


「いや、拾わなくていいよ。友達いるんだろ? 行きなよ」


「え? 本当かい!? ありがとう兄ちゃん! あと、ごめん!」


そう言って子供は手を振り、人ごみに紛れている友達の元へと走って行った。・・・ははは、元気があっていいな。今度は人にぶつかるんじゃないぞ。

子供を見送り、刹那は地面にぶちまけた小銭を拾い集める。幸い、財布の中には500円玉1枚と、100円玉5枚しか入っていなかったので、すぐに拾い集めることができた。

拾った小銭を財布に入れると、刹那は博人たちの後を追おうとしたの、だ、が・・・・・。


「・・・・・いない」


博人たちが見当たらない。さっきまで近くにいたはずなのに、いつの間にか目の前から消えていた。辺りを見回してみても、いない。どこにもいない。・・・これって、迷子?


「ってやばいだろ!! いきなりかよ!! はぐれるなよって言った途端にこれですか?!」


ツッコミを入れるが、誰も返してくれない。・・・ってか、これって本当まずくないか? 何かすごく寂しいんだけど・・・。


「・・・どうしよう」


ははは・・・っと自嘲気味に笑いながら、刹那はこれからどうしよう、と考えていたのだった。


迷子・・・・です。刹那くんはなんと迷子になってしまいました。

さぁ、これからどうなるのでしょうか? ちゃんとみんなと合流できるのでしょうか?

・・・・たぶん無理ですかね?

これからも「殺し屋」よろしくお願いします!

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