第50話 ちょっとした世間話
「さて、改めまして自己紹介させていただきます。先ほども言ったとおり、私はA・B・K社、裏の顔である殺し屋の養成部最高責任者であるシリスです。今回はお嬢様方の様子を伺いにお邪魔した次第です」
各自テーブルに着いたところで、シリスは話し始めた。業務っぽくて営業っぽい感じの笑顔を浮かべている。
「はぁ・・・・・どうも。俺は木下 刹那って言います。んと・・・ちょっと気になったんですけど、里奈さんと玲奈とはどういう関係で?」
とりあえず、今自分が一番気になっていることをシリスに聞いてみた。・・・これは勘なのだが、シリスは里奈と玲奈の上司、だけの関係ではないような気がする。なぜかは知らない。そんな感じがする・・・あくまで勘だが。
シリスはちらっと里奈と玲奈を見てから、そうですね、と言って話し始めた。
「お嬢様方が幼少のころ、必要最低限の知識とマナー、それから少しの勉学を教えさせていただきました。飲み込みが早く、教える側としても実に楽しかったのを覚えております」
「確かに、そんなこともあった気がするわね。ずいぶん宿題に悩まされたものよ」
里奈が嫌いな食べ物を食べる子供のような表情をして話す。さすがの里奈さんも、勉強が嫌いなのは俺と同じか。・・・ちょっと意外かも。なんか親近感が湧くな。
「シリスさんには小さい頃からすごくお世話になったんだよ。お母さんみたいな感じかな?」
「もったいないお言葉です」
玲奈が顔に笑顔を浮かべて、とても嬉しそうに話す。・・・なるほど、お母さん、か。だから玲奈はさっきからこんなに嬉しそうにしてたのか。納得納得・・・ってあれ? ちょっと待て。
「お母さん、『みたいな感じ』?」
「あ、言ってなかったっけ? あたしたち捨て子だから、お母さんなんていないの」
「うん。公園で途方に暮れてた所をお父さんに拾ってもらったの。そのとき、あたしたちの教育係だったのがシリスさん。だから、シリスさんは私たちのお母さん同然の人なんだよ」
そんなの初めて聞いたぞ?! てっきりシリスさんが2人の母親かと思ってたのに。
・・・でも、よく考えてみれば、里奈さんも玲奈もシリスさんに似てないし、自分の母親に敬語を使うわけないしな。ん〜・・・ちょっと衝撃的だったけど、合点がいった。
「そうそう、小さい頃の教育っていえば・・・・・あたしには厳しくて、玲奈ちゃんには甘かったのよね。シリスさんは」
「・・・誤解です、そんなことはありません。そういうふうに感じられたのは、里奈お嬢様がお勉強の時間に逃げ出したり、居眠りをしたり、さぼったりしたからではありませんか。自業自得ですよ」
「う・・・・・」
うわぁ〜・・・・・。シリスさんが語れば語るほど里奈さんの秘密がどんどん明らかになっていくな。完璧超人に見える里奈さんも、昔はそんなんだったのか・・・。
「里奈お嬢様は才能があり、物事を幅広くこなす事のできるお方でしたが飽きっぽくて不真面目なのが玉に瑕。玲奈お嬢様は才能こそなかったものの、真面目で努力家でした。里奈お嬢様と違って私に甘えてくる一面もありましたが、それはそれは可愛いらしいものでした」
「・・・・・あたしに甘えてこなかったのが、ちょっとショックだったわね。あのときは」
「む、昔のことだよ! 今は違うよ!」
玲奈が必死になって弁解する。・・・・・甘えん坊の玲奈か。シリスさんとの態度を見てれば納得かも。幼い玲奈がシリスさんに抱っこされてる姿が簡単に想像できるな。・・・確かにこれは可愛いな、うん。
「ところで刹那様、お嬢様方はきちんと役に立っていますでしょうか? 何かお邪魔になっていたり、こういうことは止めて欲しいなどあったらご遠慮なく申してください。言って聞かせますので」
う、これは・・・正直に言っていいのか? 玲奈はともかく・・・里奈さんは何にも家事とかやってないし、俺をいじめるし、はっきり言って全然役に立っていない。でも、ここで里奈さんのことを正直にぶちまけちゃったら・・・・・あとで俺の中身がぶちまけられる。ぶるぶる。
「刹那様、正直に申していただいてよろしいのですよ?」
ど、どうする?! しょ、正直に言うべきか?! いや、それだと俺の命が!! でも嘘ついて誤魔化したとしてもシリスさんにばれる気がする!! で、でもでも!! それだとやっぱり俺の命が!! う〜〜!! どうすればいいんだ!!
「・・・・・刹那様、それでいかがなものなのでしょうか?」
「えっと、ふ、2人ともよく働いてくれてます・・・」
・・・やばい、こんな弱気になっちゃったらすぐばれるかも。
そう思って冷や汗をダラダラとかいていた刹那であったが、刹那の考えとは逆に、シリスはちらっと里奈のほうを見てため息をつきながら言った。
「・・・まぁ、刹那様がそうおっしゃるのならば特に問題はないのでしょう。お2人とも特に問題も起こさないように生活しておられるようですね。・・・里奈お嬢様」
「う・・・・・。はい」
「あまりおいたなさっては駄目ですよ?」
「き、肝に銘じておきます・・・・・」
・・・・・嘘をついていることなど、シリスさんには全部お見通しのようだった。里奈さんじゃないけど、やっぱり恐ろしいな。年季が違うっていうのか、何ていうか・・・・。
シリスさん、結構お気に入りだったりします。
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