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第48話 シリス登場

「はぁ・・・・・・」


幸一は社長室の窓から青空に浮かぶ入道雲を見上げながら思いふけっていた。幸一の頭に次々と思い浮かんでくるのは、大切な大切な愛娘、里奈と玲奈。


今頃何をやっているだろうか?


ちゃんと暮らしているだろうか?


不便はしていないだろうか?


刹那とは上手くやっているだろうか?


心配で心配でたまらない。親馬鹿だなぁ、と実感しつつも、心配せずにはいられないというのが父親というものだ。今まで身近にいたはずの娘2人が突然遠くへ行ってしまったのだ。ショックで、と言うよりも寂しくてたまらない。・・・・・娘を嫁にやった父親というのはこんな気分なのだろうか? くそ、里奈か玲奈、2人とも結婚したらどっちか1人は絶対こっちに住んでもらうぞ。寂しくてたまらん。

そのとき、ドアがキィと音を立てて開き、黒いスーツを着こなした金髪の美女が入ってきた。


「・・・社長、書類のほうが片付いていないようですが」


そう言ってため息をついたのが、幸一の秘書の『シリス』である。ザマス口調の教育ママがよくしていそうな眼鏡をかけていて、長い金髪をゴムで束ねている。目は海のように青く、まるで宝石のようだ。

そして、何よりも目立つのが容姿だ。強気で、頼れて、美人という理想的な秘書のイメージをそのまま形にしたような顔、出ているところは出ていて、引っ込むところは引っ込んでいる、綺麗でいて理想的なボディ。シリスの美しさは、里奈とはまた別の魅力を醸し出していた。

幸一はそんなシリスの言葉にため息をつきながら言った。


「そんなこと言ったって・・・・・心配で心配で仕事なんてしていられないよ」


「・・・お嬢様方がいない時は普通の口調に戻っていただいても構いませんよ」


「・・・つまりはそういうこった。里奈と玲奈が心配で仕事に手がつかねぇ」


「そう言われましても、仕事はやってもらわなければ困ります。・・・そうですね、ではこういうのはどうでしょうか?」


「んぁ?」


「私が木下家に行って状況を偵察し、様子を確認して参ります。それならば、社長の心配事もなくなりますし、仕事も片付けられますし、一石二鳥です」


「い、いや待て!! それじゃ駄目だ!! 絶対駄目だ!!」


シリスの言葉に、幸一は慌てて反発した。当然だ、幸一は『自分の目』で娘たちの様子を確かめたいのだ。シリスのことだから嘘の報告はしないとは思うが、やはりそういうことは自分の目で確かめるに限る。

それにシリスが行くとなると、自分はこのめんどくさい書類の山に拘束されてしまうことになってしまう。そんなの嫌だ、こんな仕事ばっかりの生活なんてごめんだ! たまには俺だって外に出たい!

だが、そんな幸一の願いも届かず、シリスはビシッ! と書類の山に指をさしながら言った。


「では社長の居ない間、誰があの書類を片付けるのですか? あの山のような書類を、一体どこの誰がいかなる手段で片付けるというのですか?」


「そりゃお前が・・・・・」


「拒否します。私もやってやれないことはないですが、この書類はこの会社の存続に関わる重大なことばかり書かれています。私がやるには荷が重過ぎますし、社長がやったほうがどう考えても効率が良いです」


「ぐ・・・・・」


的確な言葉に何も言い返すことができない幸一を見て、シリスは満足げに言った。


「反論はありませんね? それでは行って参ります。夕方辺りには帰ってこれると思うので、それまでに書類は片付けておいてください。できなければ、今日も徹夜なのでそのつもりで」


そういい残すと、シリスは社長室から退室し、部屋には山盛りの書類とそれを嫌〜な目で見つめている幸一だけが残った。


「・・・・・。どちくしょぉおおおおおおおおお!!!!!! 書類の大馬鹿野郎ぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」


そんなことを言いながら、幸一は一番上の書類から手に取り、目を通していったのだった。





+++++





ぶぅぅーん、ぶぅぅーん。




「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」


「・・・・・」





ぶぅぅーん、ぶうぅーん。





「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」


「・・・・・」





ぶぅぅーん、ぶぅぅーん。





「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛―――――」


「扇風機が自分のとこに向くたびにそれ言うの止めません?」


「いいじゃないの、暑いんだから」


「関連性が理解さっぱりできません」


「ん〜・・・・・それじゃ楽しいからってことで」


「・・・・・お好きにどうぞ」


あの肝試しから1週間ほど過ぎた。8月も中盤に入り、いよいよ気温も高くなってきた、ということで、扇風機を出そうということになった。

ただ、刹那の家には扇風機が1つしかない。頻繁に使うわけじゃないし、刹那1人なのだから2台も3台も必要ないからだ。刹那の部屋に1台置いておけば事足りる。寝苦しい夜だって何とか過ごすことができた。

でも、今は刹那の他に里奈、玲奈がこの家に住んでいる。いくら暑いからといって、女の子2人のことを考えないで自分だけ扇風機を使うなんていうことは刹那にできない。

扇風機を買うことも考えたが、正直もったいない。明から送られてくる金は限られているのだ。ここで扇風機2台も買ってしまえば、あっという間になくなってしまう。そんなことになれば、食べていかれなくなってしまう。つまりは玲奈の作った料理が食べられなくなってしまうということになる。冗談じゃない、食事ははっきり言って刹那の密かな楽しみなのだ。それがなくなるなんていうことはあってはならない、絶対に。

色々考えてみたが、うまい手はいつまでたっても思い浮かばず、結局公平に居間に置くことに決めた。ここならみんなよく集まるから、という単純な理由から決めた扇風機の配置する位置だったが、結果的にこれが一番よかったのかもしれない。

そんな中、刹那と里奈は居間のテーブルに突っ伏しながら扇風機の風を浴びていた。玲奈はというと、昼食後の食器の洗いをしている。たまには代わろうか? 暑いだろ? と刹那が気を利かせて言ったのだが、私がやるほうが早いからいいよ、と言って断られてしまった。終わったら私も風浴びるから、場所空けておいてくれると助かるな、と言っていたので、食器洗いが終わりしだい、こっちにくるだろう。

そのときだった。




ピンポーン♪




「? 誰か来たみたいね」


「郵便かな?」


よっこいしょと声を出して椅子から立ち上がり、刹那は玄関の方へと歩いていった。がちゃっとドアを開け、外の人物を確認した。そこにいたのは、金髪の美女だった。涼しそうな水色のワンピースを着ており、博人好みの眼鏡をかけている。そして細い手にはケーキの箱の取ってが握られていた。・・・・誰だ? こんな美人、俺は知らないぞ?


「あ、あの〜、どちらさまで?」


刹那が戸惑いながらそう言うと、美女は一礼をし、誰もが魅了されるであろう営業スマイルをして言った。


「お初にお目にかかります。私、A・B・K社、社長である佐々木 幸一の秘書、ならびにA・B・K社殺し屋養成部最高責任者を任されております、シリスというものです。本日はお忙しいところの訪問、大変ご迷惑かと思われますが、社長の命令でお2人の様子をお伺いに参りました」


「は、はぁ。どうも」


・・・刹那はこのとき直感した。また一騒動くるな、と。


と、いうわけでシリス登場でございます。

シリスと里奈、玲奈との関係は?! そして、これからの展開やいかに?!

わくわくしてきません?! え? しない? ・・・さ、さいですか(泣)

これからも「殺し屋」よろしくお願いします!


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