表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/155

第47話 玲奈の気持ち

校舎内へと入り、2人きりになったところを見計らい、博人は玲奈に話しかけた。


「なぁ玲奈ちゃん、ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」


「? 何でしょうか?」


いつもおどけている博人だったが、今は何だか真剣な顔をしている。・・・一体何を聞かれるというのだろうか? もしかして、殺し屋のことがばれてしまったとか?

・・・心臓がどくんどくん、と胸を叩いているのがわかった。理由は至極簡単、正体が一般人にばれてしまったら殺すのが基本だからだ。刹那の友人である博人だって例外ではない。知ってしまったものは誰であろうと始末しなければならない。

始末しなければならない理由も簡単なことだ。殺し屋だということがばれてしまい、その人物を放置しておけばA・B・K社の実態が明らかになってしまう可能性がある。情報の漏洩だけは絶対避けなければならない。日本トップクラスのおもちゃ会社が、実は殺し屋稼業を営んでいたなんて知られ渡ったら会社は破滅し、玲奈たちは国に追われることになってしまう。それを避けるため、知ってしまったものは殺すというのが、暗黙のルールだった。

でも、万が一殺し屋のことがばれてしまったとしても、うまく会話で誤魔化し、そのことを間違いだったと博人の中で認識させれば殺さなくてもすむ。玲奈だってなるべく人なんて殺したくない。殺さないですむのだったらそれに越したことはない。

でも・・・・・確信に迫りすぎていたらやはり殺さなければならない。殺すか、否か、それがわかるのは、博人の口から出てくる言葉にかかっている。

博人はしばらく話さず、口を閉ざしていたが、玲奈にとってその時間はとてつもなく長いものに感じられた。命を奪うか奪わないかの瀬戸際なのだ。身近な人の命が、今揺れ動いている。それなのに、緊張するな、落ち着け、というほうが無理というものだ。

博人は決心したのか、ゆっくりと口を開いた。


「玲奈ちゃんって・・・・・刹那のことどう思ってる?」


「・・・・・は?」


「だから刹那のことだよ。あいつのこと、どう思ってるかなって、ちょっと聞きたいな」


何を言い出すかと思えば・・・・・刹那のこと? 何で? どうして?

ともかく、博人の口から殺し屋関連の言葉が出てこなかったので、玲奈はほっと胸を撫で下ろした。・・・よかった。本当に。


「刹那のことですか? それがまた、どうして?」


「理由は、玲奈ちゃんが話してくれたら話すよ。先にどう思ってるか、聞かせてもらえないかな?」


う〜ん・・・と唸って玲奈は考えた。いきなり刹那のことをどう思うなんて聞かれても、はっきり言って困ってしまう。

自分は、刹那のことをどう思っているのだろうか? いや、別に刹那のことをなんとも思っていないわけではない。今自分が刹那に持ち合わせている感情を表す言葉が上手く浮かんでこないだけで、刹那に対する感情がまるっきりないということはない。

しばらく悩んでも、今自分が抱いているこの気持ちを言葉にすることはできなかった。・・・何といえばいいのだろうか? この、気持ちは?


「・・・上手く言えないかもしれないけど、いいですか?」


「もちろん、今思ってることを素直に言ってくれればいいよ」


「一緒にいると、すごく落ち着くんです。ずっと居たいなって思うくらい、落ち着くんです。あと、その、刹那の横顔を見るのも好きなんです。いつもじゃないけど、たまに大人っぽい感じがする横顔を見るのが、何ていうか、好きで・・・・・。それと、刹那と顔が近くなったりするとドキドキしたりするんです。何ていうか、恥ずかしいとはちょっと違うっていうか、こそばゆいっていうか・・・」


「・・・・・そっか。ありがとう玲奈ちゃん」


玲奈の話を聞いた博人は、少しだけ困ったような顔をしていた。・・・なんでだろうか? 何か悪いことでも言ってしまったのだろうか?


「あの・・・・・それで、どうしてそんなことを?」


玲奈が博人にたずねるが、博人は言うか言うまいか迷っているようだった。よほど大切な秘密なのだろうか? だったら無理して話してくれなくてもいいのだが・・・。


「あの、博人さん。別に言いたくなかったら言わなくても・・・・・」


「いや、言うよ約束だからね」


ははは、と笑いながら頭を2,3回ぽりぽりと掻いた後、博人はやっぱり言いにくそうに話し出した。


「・・・・・理恵さんって、刹那のこと好きなんだよ。知ってたかな?」




博人の言葉が耳に入った瞬間、ドクン、と玲奈の心臓がはねた。




理由は、たぶん理恵が刹那のことが好きだ、ということを聞かされたからだ。

玲奈はそのことに気がつかなかったわけではない。理恵が刹那に関わってるときだけ顔を真っ赤にさせるのを見てしまえば、そんなこと一発でわかる。あぁ、この人は刹那のことが好きなんだなあ、と。

でも、それだけでは自分の心臓がはねた理由がわからない。

理恵は刹那のことが好き。それは紛れもない事実。でも・・・




だから?



それで?



どうしたの?




ということになってしまう。つまりは、心臓が高鳴った根本的な理由はわからないということだ。

だから、その事実を聞いた玲奈の心臓がどうしてはねたのか、玲奈自身にはさっぱりわからない。



どうして?



なぜ?



自分自身に問いかけてみるものの、答えは一方に返ってこない。


「玲奈ちゃん? 聞いてる?」


「え? あ、ごめんなさい」


「いや、いいよ。刹那に一番近い女の子である玲奈ちゃんの気持ちを聞いてみたんだ。玲奈ちゃんが今のところ一番の強敵だからさ。・・・聞いたあとで悪いんだけど、ちょっとデリカシーがなかった。ごめんね」


「いえ、別にいいですよ」


「参ったなぁ。確認が裏目に出ちゃったか。こりゃ理恵さん、厳しいぞ〜?」


「? 何でですか?」


玲奈の言葉に、え? という表情をする博人。


「何でって、玲奈ちゃんさっき言ったじゃないか。好きだって」


「? そんなこと言ってませんよ?伝わりにくかったかもしれないけど、気持ちを言葉で表現しただけで、別に刹那のことは・・・・・」


そこまで言って、玲奈は口篭ってしまった。そのあとの言葉が、なぜか知らないが出てこなかった。「好きではありません」のたった一言だけなのに、どうしても出てこなかった。出したくなかった。理由はわからない。ただ、その言葉を言ってしまうと、自分が刹那に抱いている感情を自分自身で否定してしまうような気がしてならなかった。だから、言えなかった。

博人はぽかんとした顔をしていたが、やがてふっと笑って玲奈に言った。


「玲奈ちゃん。君が自分の気持ちを教えてくれたお礼に、良いこと教えてあげるよ」


「? いいことですか?」


博人はにっこりと笑ったまま、言った。


「玲奈ちゃんが話してくれた気持ちはね、世間一般で言う『好き』に該当するものなんだよ」


博人の言葉は、一瞬だけ玲奈の時間を止めた。その止まっている時の間に、自身に対する疑問が、まるでシャボン玉のように次々と浮かんでくる。





え?




好き?




私が?




刹那のことを?





博人は表情を崩さずそのまま続けた。


「ゆっくり考えてみるといいよ。自分の気持ちはどういうものなんだろうって。さて、無駄話はこれくらいにして、ゴムボールを回収しにいこうか」


そう言って博人は歩き出した。玲奈もはっと我に返り先を行く博人の後を追った。





ちなみに、博人と校舎を歩いている間、玲奈はずっと考え込んでいたとか何とか。

何について考え込んでいたのかは、ご想像にお任せする。


というわけで、物語が少しですが動きましたね。

次回は新キャラを登場させようかなぁと思っておりますゆえ・・・・・


そういえば、話別のアクセス数を見て思ったんですが・・・・・実は里奈さんって一番の人気者? らしいです。

里奈さんが登場した話が一番アクセスが多いし、里奈さん中心の話もやっぱりアクセスが多いんですよね。

・・・おそるべし、お姉ちゃんパワー!?

これからも「殺し屋」よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネット小説ランキング>恋愛コミカル部門>「殺し屋はターゲットに恋をする」に投票 ネット小説の人気投票です。投票していただけると励みになります。(月1回)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ