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第46話 猫はどうする?

猫を抱えたまま校門前へと戻ってきた刹那と理恵だが、博人たちに腕の中の猫を見せると、みんなポカンと口を開けて見ていた。


「・・・・・これは何だ? ってか、何で閉め切ってる学校の中に猫がいるんだ?」


真っ先に博人は頭に疑問符を浮かべて刹那の腕の中でくつろいでいる猫のことをたずねた。

博人が聞きたくなるのも無理はない。学校は閉め切っているのだ。猫が入りこむことなんてできるわけがない。それなのに、どうして学校の中に行った刹那が抱えて連れてきたのか? いくら考えてもさっぱり見当もつかない。

刹那は片手で猫を抱いて、片手で猫の頭を撫でながら博人に説明した。


「別に校内の中にいたわけじゃないよ。3階の窓にへばりついてたんだ」


「にゃ〜ん♪」


「へばりついてただぁ?」


「へばりついてたっていうか、木から降りられなくなってたって言うか、とにかく可愛そうだったんだよ」


「まぁ・・・・・お前の言うことだから信じるけどな。そんなら仕方ない、刹那と理恵さんは猫を取ってきたから良しってことにするか」


「にゃん♪」


「・・・・・ところで刹那、その猫どうするのよ?」


一緒に校内を歩いた理恵が刹那に尋ねた。猫を抱きながら、う〜んと唸って刹那は考えた。

さっきから刹那の腕で大人しくゴロゴロと喉を鳴らしている様子からして、多分この猫は野良ではない。どこかの家猫のはずだ。でも、首輪をつけていない。普通だったらつけてあるはずの首輪がどこにもない。これはおかしい。

逃げ出した、ということも考えられるが、こんなに汚れているのだからそれはない。どういうことかと言うと、この汚れは1週間そこらでつくような汚れではない。軽く1ヶ月以上は経っている感じの汚れだ。土や泥、葉っぱや埃に綿ごみ。本当に色んなごみが体や毛についているところを見ると、様々なところを歩いていたということがわかる。

それなのに、町には猫が行方不明になったという話がない。掲示板にもそんな張り紙はないし、近所の人からもそんな話は聞かされていない。

以上のことから、この猫は捨てられてしまった猫だということがわかる。近頃は平気でペットを捨てる人間が増えているとニュースでやっていたが、こんなに身近にそういう人間がいるとは思わなかった。

となれば、誰かが飼うしかないということになる。このままこの猫を放してしまえば、餌もまともに取れず、のたれ死んでしまうのは目に見えているからだ。

一番この猫が懐いているのは刹那なのだから、刹那が飼えばいいではないか、と思うかもしれないがそれは間違っている。

はっきり言おう。刹那の家には動物が住めるスペースなど全くない。ない、というより、そのスペースを里奈と玲奈の2人に取られてしまったというべきか。まぁ、とりあえずない。ないものはないのである。

それに、猫の飼い方だってさっぱりわからない。まぁ、猫に限ったことではないが、刹那の頭の中には動物の飼い方などというものは欠片ほども存在しない。いや、欠片どころか、キャットフードと間違えてドッグフードをあげてしまうとか、マタタビと間違えて普通の木の枝をあげるとか、などなど、逆に間違った知識が盛りだくさんだ。

そんな刹那に、猫を飼わせるというのは少し無謀というものだ。それならば、この猫は一体どうなるのだろうか? ということになる。


「ん〜・・・・・」


「刹那、あの・・・その、ア、アタシが貰ってあげてもいいわよ」


「・・・・・え? 本当ですか?」


パッと顔を輝かせて、刹那は赤くなってもじもじしている理恵を見た。・・・・・それにしても、何で赤くなっているのだろう? 猫を貰うのが恥ずかしい・・・とかだろうか?


「ア、アタシん家の家族は、その、動物とか好きだし、猫くらい別にいいわよ」


「お願いしたいところですけど・・・・・本当にいいんですか?」


「べ、別にいいって言ってるでしょ! ねぇ恵利!?」


話を振られた恵利は、にっこりと笑って返した。


「いいですよ刹那さん。私たち、本当に動物が好きですし、お姉ちゃんと2人で頼めばお父さんもお母さんも了解してくれると思いますから」


「にゃ〜おぅ♪」


「きゃ!」


恵利が了承した途端、猫は刹那の腕からぴょんと離れ、恵利の腕へと飛び移った。さっきまでずっと刹那の腕に甘えていたというのに、実にあっさりと。・・・・・何だかちょっと悔しい。


「にゃんにゃん♪」


「くす、可愛いなぁ。ね? 姉さん」


「え?! あ、まぁ、その、可愛いんじゃないの!」


「うにゃ〜ん♪」


猫はゴロゴロと喉を鳴らしながら恵利の腕でくつろいでいた。・・・・・雄だ、絶対あの猫は雄だ。間違いない。うん。


「さてっと、次は俺たちの番だな。刹那たちの分のとってこなくちゃならなくなったから・・・・・2つか。そんじゃ行こうか玲奈ちゃん」


「はい、行きましょう」


博人が玲奈と一緒に校舎へ向かおうとしたとき、恵利が少しむっとした顔で博人に言った。


「・・・博人君、浮気しちゃだめですよ」


「しないって。恵利こそ、猫に浮気すんなよ? そいつ、雄みたいだしよ」


「うにゃ!?」


博人が言った瞬間、猫は体をびくぅッとさせた。・・・・・あの猫、やっぱり雄だったのか。

そんなこんなで、博人と玲奈は校舎へと向かっていったのだった。




と、まぁ猫は理恵さんと恵利の家に貰われることになりましたとさ。

さて、おそらく次か、その次あたりで肝試し編は終了します。次は・・・・・お楽しみということで。

これからも「殺し屋」よろしくお願いします!

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