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第40話 帰りの電車の中で

楽しい時間はあっという間に過ぎる、とはよく言ったもので、スイカ割りをしているうちにだんだんと日が暮れてき、このままもう帰ろう、ということになった。

女性陣が更衣室で着替えを済ませたあと、荷物を持って駅のほうへと歩いていった。来たときは近く感じたのだが、体に溜まった心地よい疲労のせいか、少しだけ距離が遠く感じた。


「楽しかったですね、みなさん」


駅に向かう途中で、恵利が口を開いた。


「そうね。ちょっとだけ疲れちゃったけど、久しぶりに楽しい時間を過ごさせてもらったわ」


「そうだよね。海に来たのなんて何年ぶりだっけ?」


玲奈は腕を組んでう〜ん・・・・・と考え始めた。よほど小さいときに来たのか、なかなか思い出せないようだった。


「里奈さんと玲奈ちゃんって、海に来たときないの? アタシ達、年に1回くらいは来てるけど」


刹那たちが毎年海に行くのはもう年間行事のようなものになっている。もちろん発案者は博人。少し前に刹那が理由を尋ねてみたところ、恵利の水着が見たいから、らしい。そこら辺は博人らしいというか何というか・・・・・。


「そうなの? 羨ましいわね。あたしは仕事のときくらいしか来ないものね」


「そういえば、里奈さんってどんなお仕事をしてるんですか?」


どくん、と刹那の心臓が大きく跳ねた。理由はもちろん、博人が聞いてはいけない質問を里奈にしたからだ。いや、里奈がうっかり自分は殺し屋だということを喋ってしまうほど抜けてはいない、ということはわかっている。でも心配だ。万が一という言葉があるように、里奈が絶対ばらさない保障はどこにもないのだ。


「教えてほしい?」


「ぜひ! すっごく気になります!」


「ふふふ、あたしはね・・・・・」


緊張の瞬間だ。あるわけない、と思いつつも、あったらどうしようか、という心配をどうしてもしてしまう。果たして・・・・・。


「売れないモデルやってるのよ。それで、たまに海に行くのよね」


うまく・・・・・誤魔化せたのか? いや、でもモデルって答えてしまうと・・・・・。


「へぇ〜!! じゃあ写真とかあるんですよね? 見てみたいな〜!!」


・・・・・当然、こう返されるに決まっている。博人が里奈のような美人の写真を見てみたい、と言うことなんて至極当然で当たり前。でも、実際里奈はモデルではないから見せる写真など当然ない。・・・どうするのだろうか?


「ふふふ、今度機会があったらね」


「絶対ですよ? 楽しみだな〜!」


・・・・・何とか誤魔化したようだった。嘘をつくのがとても上手いからこの場は何とかなったが、写真のことはちゃんと考えているのだろうか?

まぁなんにせよ、ばれないでよかった。刹那はほっと胸をなでおろした。


「失礼なやつね〜。そんなヘマしないわよ」


「え? 里奈さん何のことですか?」


「ううん、なんでもない。こっちの話だから」


・・・・・この人は本当にお構いなしに心を読むな。何も知らない博人たちにちょっとは気をつかってくれたら嬉しいのだが・・・・・。


「・・・・・ねぇ、博人君」


「っは!! いや、安心しろ恵利! お前が一番だから!!」


「うぅん、そうじゃなくて・・・・・私が乗るのってあの電車ですよね?」


そう言って恵利が指を指した方向には、駅に着いている電車があった。普通、電車は1つの駅にあまり時間をかけて停車はしない。停車するとしたら、せいぜい1分くらいだ。2分も3分も長い間停車したりはしない。

つまり、早く行かないと電車に乗り遅れてしまうということだ。ちなみに、この電車を乗り過ごしてしまえば、9時を過ぎる最終電に乗らなければ帰られない。


「・・・・・恵利、あの電車いつから停車してた?」


「今着いたとこだよ」


「そうか、じゃあ・・・・・・走るっきゃねぇ!!!!!」


そう言うと、博人は荷物を抱えているのにも関わらずものすごい速さで走り出した。


「お、俺たちも走らないと!!」


「うぅ・・・・・走るの苦手なんですけど・・・・・」


「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!」


「お姉ちゃん! 私たちも早く行かないと!」


「あはは、最後まで楽しくさせてくれるわね。この子たちは」


博人のあとに、5人は一斉に停車している電車へと走り出したのだった。





+++++





一生懸命走った甲斐があり、刹那たちは何とか電車に乗り込むことができた。・・・・・電車の運転手が笛を吹いたときは冷や汗ものだったが。

電車の中は意外にも空いていて、刹那たち全員分座るスペースはあった。博人が適当に席順を決めた結果、左から博人、恵利、理恵、刹那、玲奈、里奈、という席順になった。・・・席順が決まったとき、理恵が顔を真っ赤にしながら博人を睨んでいたのは一体何だったのだろうか?

みんな遊び疲れているということもあって、電車が発車するなり眠り始めてしまった。疲れを知らないと思っていた里奈でさえ、すやすやと眠りこけていた。

そんな中、ただ1人刹那は眠れないでいた。全員眠ってしまったら、自分たちが降りるはずの駅を通り過ぎてしまうかもしれない。そのため、最低でも1人起きていなければならないのだが、刹那はそんな理由で眠らないのではない。むしろ眠りたいのだ。刹那だって当然のことながら疲れている。眠くて眠くて、電車の振動が心地よくて今にも眠りたい。だが寝れない。矛盾しているのはわかっている。でも、しょうがないのだ。


「く〜・・・・。す〜・・・・」


「ん・・・・。んぅ・・・・・」


「・・・・・・」


先ほどの席順を思い出してもらいたい。刹那は玲奈と理恵、眠っている2人の間に挟まれているという席だ。

普通、電車で眠るとなれば右か左、どちらかに体を預ける形になる。どこかに体を預けないと体が安定せず、眠れないためだ。それは玲奈と理恵も例外ではない。2人とも体を預けて眠っているのだが、2人とも体を預けているのが真ん中の刹那になっているというわけで、何というか・・・・・2人の可愛らしい寝顔が身近にあって、吐息が、その・・・首筋にかかってしまう、というわけで・・・。


{眠れない・・・・・}


刹那は男である。それも、あまり女性との経験がない男である。そんな経験値0の刹那の両脇に女の子が無防備のまま体を預けていてすやすやと眠っているのだ。これは興奮する、これは興奮するに決まっている。


「・・・・・ん」


体勢がつらくなったのか、理恵が微妙に体を動かした。そのせいで、刹那とますます密着してしまって・・・・・その、胸が・・・。


{当たってる!!! 当たってますから!!!}


「・・・・・・(もぞもぞ)」


あたふたしている刹那を尻目に、玲奈もまた体勢がつらくなったのか、体を微妙に動かして刹那と密着する。もちろんその際に・・・。


{うわぁあああああ!!! やばい!! これはやばいってば!!!}


体験したことのない柔らかさと、恥ずかしさのあまりじたばたしたくなったが、そんなことをすれば気持ちよく寝ている2人を起こしてしまうことになる。2人ともはしゃいで疲れているのだから、せめて駅に着くまでは眠らせてあげたい。

でも!! でもこれは耐え難い柔らかさだ!! 逃げ出したい!! 今すぐこの柔らかい膨らみから逃れたい!! 刺激的過ぎるここから逃げたい!! でも逃げれない!! このままずっと駅に着くまでこのままなんて・・・・・あまりにもきつすぎる!!


「・・・・・すぅ・・・・・ん」


「んん・・・・・く〜・・・・」


{うぁあああああ!!!!!}


・・・・・・・


・・・・・・


・・・・・


・・・・


・・・


・・



「・・・ん? お! ちょうど着いたみたいだな。ほら恵利、起きろ。着いたぞ」


「む〜・・・・・。まだ眠いよ、博人君」


「着いたの? あたしとしたことが、すっかり寝入っちゃったわ。玲奈ちゃん、起きて。着いたわよ」


「ん・・・・・」


「姉さん、起きて。着いたよ」


「ふぁ・・・。よく寝た・・・・」


「・・・・・」


「ん? 刹那、お前どうした? ぼーっとして」


「・・・いや、何て言うか・・・。桃色の拷問を味わったというか・・・」


「? まぁいいや、みんな降りるぞ」


こうして、長い一日は終わりを告げたのだった。

これは余談だが、しばらく刹那は玲奈と理恵の顔をまともに見れなくなったとか何とか。




これにて海編終了です。お疲れ様でした!

と言っても、まだまだ夏は始まったばかりです。次はアレをやろうかなぁと考えています。

それと、とうとう総合アクセス10万を超えました! これも皆様のおかげです!

当初はここまで伸びるとは思っていなかっただけ、余計に嬉しいです!

これからも「殺し屋」よろしくお願いします!


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