第36話 ビーチバレーだ!!
「お待たせしました」
刹那と博人が、仲良く同時にバッと声のほうを振り向く。そこには・・・・・天国に咲いているどんな花よりも綺麗で、可愛いな女の子たちが立っていた。いや、女の子の可愛さだけではない。それを引き立たせている水着も、これまたいい!!
「ど、どうかな? 博人君」
「恵利、お前は今最高に可愛いぜ!」
恵利は黄緑色のワンピース型の水着で、スカートみたいなヒラヒラが可愛いデザインだ。少し幼い顔立ちの恵利と、水着の相性が抜群だ。博人ではないが・・・・・確かにこれは可愛い。
「い、いちゃつくなら見えないとこでやりなさいっていつも言ってるでしょ!!」
理恵は、上がビキニ型で、下は短パンのような水着だ。全体的にボーイッシュな感じで、ショートヘアーの理恵にぴったり合っている。
「ふふふ。青春っていいわね」
猫をかぶっている里奈は、黒いビキニ型の水着だった。これは色っぽい。出るところは出て、締まっているところは締まっている、俗に言うナイスバディーな里奈の体型を、より一層引き立たせる水着だ。・・・・・それにしてもすごい。いや、その・・・胸が。
「その・・・・・刹那。私、似合ってるかな?」
「え、あ、すげぇ、似合ってるよ・・・・・うん」
玲菜は、里奈と同じビキニ型の水着だった。違うのは、色が白というだけだが、それだけでも里奈と雰囲気が全然違う。すらっとしている玲菜の体型に、清潔感溢れる白い水着。まるで、どこかのお嬢様みたいな雰囲気だった。
「よ〜しよしよし!! じゃ!! みんな揃ったところで、まずはビーチバレーでもやりますかぁ!!」
手にビーチボールを高々と掲げ、博人が言った。って、ちょっと待て。
「おい、俺たちまだ海パン着てないんだけど・・・・・」
「ん? まぁ、あとでいいだろ。今はビーチバレーが最優先だ!!」
「・・・まぁ、泳ぐわけじゃないからいいか」
まぁビーチバレーでずぶ濡れになるわけじゃないし、大丈夫かな、と思って、刹那は自分を納得させた。
「よ〜し! それじゃチーム分けから! バランスがいいように、俺と刹那は別に決めてくるよ!」
「うん、わかった。こっちはこっちで決めさせてもらうわね」
「ってわけで、刹那。お前はこっち来い」
「わかったわかった。そんなに急ぐなって・・・・・」
と、こんな感じでチームを決め、メンバーは以下の通りとなった。
1組目、里奈、恵利、博人。
2組目、玲菜、理恵、刹那。
見事に戦力が均等になった。これならば、ちゃんとした試合になるだろう。
博人が砂浜に木の棒で線を掘ってコートを作り、各チームがコートの中に入った。ネットがないが仕方ない。そんな大きくて重いものはさすがに持ってこれない。
全員が位置についたところで、博人はみんなに聞こえるように大きめの声で言った。
「それじゃ、ルールってことで! 基本的には普通のバレーと同じ! ただ、ネットがないから弾道が低すぎるものはアウト! 10点を先に取ったほうが勝ち! 以上! じゃあこっちからのサーブから行くぞ!!」
そう言って、博人は下手でサーブを打った。最初だから、肩慣らしのつもりでわざと弱く打ったのだろう。・・・・・甘いな。甘いぞ、博人。そんなことをしたら・・・・・簡単に先取点を取られるぞ!!
「玲菜!!」
遅いサーブをレシーブして、玲菜の方へ上げる。
「理恵さん!!」
刹那のレシーブを玲菜がトスし、理恵の上へ上げる。
「ッは!!」
理恵がボールに合わせてジャンプし、鋭く腕を振り下ろす。バシィッ!! という音が鳴り、ビーチボールは博人目掛けて飛んでいった。・・・・・ってかこれは早い。いくらなんでも速過ぎだ。バレー部もびっくりのスパイクだ。
「!? うぉ!!」
あまりの速さに驚いた博人だったが、自分の顔面に当たるギリギリのところで手を出し、何とかボールを防いだ。・・・大したものだ。普通だったら防ごうとする前に、顔面にぶつかってしまうのに。
それでも、ボールは下に落ちてしまい、刹那チームの得点となった。
「博人君、大丈夫?」
「あぁ、大丈夫だけど・・・・・ボール落としちまった。ごめんな」
「うぅん、博人君が無事だったらいいの。それが、一番だよ」
「恵利・・・・・」
「い、いちゃいちゃするなって言ってるでしょ!!」
顔を真っ赤にした理恵が、ズビシィ!! とサーブを繰り出した。博人の打ったサーブとは違い、かなり速い。その上回転がかかっている。弧を描くように綺麗に曲がったボールは、恵利に向かって飛んでいった。
姉の理恵とは反対に、恵利は運動神経があまり良くない。その恵利が、こんなに曲がるサーブを捉えられるわけがない!! 万が一捉えたとしても、ボールを上げることなどできない!!
「恵利は俺が守る!!」
と、博人が素早く恵利の前に立ち、代わりにボールをレシーブする。さっきの理恵が放ったスパイクを下に防いだ時とは違い、今度はうまく里奈のほうに上げてみせた。・・・・・男の刹那から見ても、今のは結構格好よかった。
「よい・・・・・しょ!!!」
里奈はジャンプし、理恵と同じくらい・・・いや、それ以上の威力があるスパイクを放ってきた。じゃ、ジャンプしたときに、その・・・大きな胸ゆ、ゆ、揺れて・・・・って、今はそんなこと考えてる場合じゃないだろ!!
あ、あんなスパイクレシーブできるわけない!! 当たったら怪我するぞ!! だ、誰だ!! 誰に向かって飛んでいるんだ?!
ボールの軌道を見て即時に判断する。スパイクの先にいた人物は・・・・・
「って俺かよ!!」
里奈の高速スパイクを、刹那がレシーブできるわけもなく、ボールは刹那の腹にぶつかった。
バッチィィ!!! と、いかにも痛そうな音が響き、刹那はボールの当たった箇所を両手で押さえて悶絶した。
「ぬぐぅぉぉおおおおおおおお!!!!!」
ゴロゴロゴロ、とそのまま左右に転がる。痛い!! これはすっごく痛い!! なんとも言い表せないほど痛い!! あえて言うとすれば、こうやって転がるくらい痛い!!
「せ、刹那、大丈夫?」
「ちょ、ちょっとちょっと! だ、大丈夫なの?!」
「うぅぅ、痛い。でも大丈夫」
悶絶している刹那を心配してくれる玲菜と理恵。だがその一方で・・・
「ぶっはっはっはっは!! 格好わりぃなぁ刹那〜〜!!!」
「ごめんね〜! ちょっと力入れすぎちゃったぁ〜!」
腹を抱えている博人に、全然反省している素振りを見せない里奈。・・・・・くっそ〜!! 何だ、すげぇ悔しいぞ!!
「むがぁ〜!! 今度は絶対上げてやるぞ!!」
「せ、刹那。あまり無理しなくても・・・・・」
「いいや、玲菜! ここは止めないでくれ! 目に物を見せてやる!」
そうだ、ここまでこけにされて黙っているほど刹那は出来ちゃいない。今にスーパープレーを炸裂させて、自分を笑った博人と里奈を見返してやる!
「・・・いいわね、その顔。そのやる気・・・・・どこまで持つかしらね・・・・・」
ボールを片手に、里奈が笑顔で刹那を見てくる。いや、笑顔といっても玲菜の笑顔みたいに太陽みたいな可愛らしい笑顔じゃない。何かを企んでいる悪役のような怖い笑顔だ。・・・・・やばい、すごく怖い。で、でも今更引き下がるわけにはいかない! 男として引き下がるわけにはいかない!
「い、いつでも来てくださいよ!!」
「それじゃ遠慮なく・・・・・えい♪」
可愛らしい声とは裏腹に、里奈は刹那目掛けて殺人的な速度のサーブを繰り出した。・・・・・この速度は、さっきのスパイクより速い!! って、おかしいだろ!! 下手打ちのサーブでスパイクより速いって絶対ありえないっての!!
そんな速度のサーブを刹那がレシーブできるわけなく、ボールは再び刹那の腹へと命中した。
「ッ――――――――――――――――――――――――!!!!!!」
「あ、加減間違えちゃった・・・・・」
声にならない叫び声を上げ、刹那はさっきの倍のスピードでゴロゴロと転がる。痛い!! すげぇ痛い!! さっきと同じところに当たったから痛さが倍以上に膨れ上がる!! 痛い痛い痛い痛い痛・・・・・・。
「・・・・・・」
「せ、刹那? だ、大丈夫?」
背中をペチペチ叩いて意識の確認をしている玲菜。だが、返事は一向にない。
「ちょ、ちょっと刹那!! 返事しなさいよ!!」
理恵がちょっと強めの声で刹那を呼んでみる。やはり、返事はない。
「き、気絶してる!! 大変!!」
わたわたと、慌てる玲菜。
「え!? せ、刹那?! ちょ、ちょっと返事しなさいよ!!」
玲菜と同じく、少し涙目で慌てる理恵。
「げ、マジかよ・・・・・。おい刹那、大丈夫か?」
さすがにちょっと心配になったのか、刹那の近くに寄って大丈夫かどうかを確認する博人。
「せ、刹那君・・・・・。死んでないですよね?」
不安を顔一杯に出し、心の底から心配している恵利。
「・・・・・・」
そして、何も言わずぼーっと刹那を見ている里奈。
「って、何でやった本人は心配しないんですか?!」
ガバッと起き上がり、刹那は何も言わない里奈にツッコミを入れた。・・・・・あ、危なかった。気絶してるときに、綺麗な川と見たことのない綺麗なお花が咲いている野原が見えてしまった。
「いや・・・・その・・・・・。せ、刹那のことだから大丈夫かなって・・・・。あはは」
「あははじゃねぇやい!! あうやく死ぬとこでしたよ!!」
「ま、まぁ戻ってこれてよかったじゃないの。うん、めでたしめでたし♪」
「めでたかねぇよ!!!」
「お姉ちゃん!! 真面目に謝らないとだめだよ!! 今度はちょっと冗談じゃ済まされないよ!!」
「う・・・・・。ま、まぁ今回はあたしが悪かったわ。ごめんなさい・・・」
さすがにちょっとは反省したのか、里奈はちゃんと刹那に謝った。・・・・・珍しい。こんなに素直な里奈を見るのは初めてだ。かなりレアだ。こんなレア度の高い里奈を見ることができるのだったら、たまには気絶するのも悪くないかもしれない。
「・・・・・(ジロ)」
「う、嘘です。冗談です」
怖い・・・。目が怖い・・・。じゃあもう一回気絶させてやろうか? と目が言ってる。・・・・・2度とあんな目には遭いたくはない。今度は本当に昇天するかもしれない。ぶるぶる。
「まぁ死んでなくてよかったじゃないか。気を取り直して続きやろうぜ」
ははは、と、さっきの調子を取り戻した博人は笑いながら言った。・・・そうだな。まだちょっと痛いけど、やるか。
「刹那、大丈夫?」
「そうよ! 無理しないほうがいいわよ!」
玲菜と理恵が心配そうに刹那に言うが、刹那は笑って返した。
「大丈夫。まだちょっと痛いけど、濡れた体を思いっきり平手されたみたいな感じの痛みだから、そんなに心配しなくていいよ」
「そう? ま、まぁそれならいいんだけどね!」
「無理しちゃだめだよ? 気分悪くなったらすぐ言ってね?」
「大丈夫だってば。心配性だなぁ、玲菜は」
・・・・・まぁこんな感じで時間は過ぎていきましたとさ。
海のお話が終わったら、次はどんなお話がいいか検討中です。
・・・もう少しコメディやってるか。
・・・それともお話を進めちゃうべきか。
これからも「殺し屋」よろしくお願いします!