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第32話 海パン選ぶのも一苦労

「ん〜と、まずはこれだな。あとそっちも・・・・・」


刹那は、1人でビーチボールやらレジャーシートやらを選んでいた。ビーチボールは所々に星gプリントされているもので、レジャーシートは何の変哲もない普通のものだ。どっかの誰かさんみたいに、悪趣味なものではない。・・・・・はずだ。

玲菜と里奈は水着を選びに行っている。男の刹那がその場にいるのも何だか気まずかったので、適当に物を買ってくるよ、と言って逃げ出し、現在に至るというわけだ。・・・・・玲菜たちがどんな水着を選んだのか、という楽しみを当日まで取っておく、という意図もあったが。

2つの商品をレジに持って行き、会計を済ませる。が、そこからどうしようかわからない。たぶんまだ玲菜と里奈も選び終わっていないだろうし、遊ぶものも揃った。・・・・・あとは何がいるのだろうか? ん〜・・・・・。


「お、刹那じゃんか」


「刹那君、お買い物ですか?」


悩んでいると、後ろから声をかけられた。振り向いてみると、手を繋いでいる博人と恵利の姿が見えた。博人の私服姿は見慣れているが、恵利の私服は滅多に見ないから、結構ラッキーなのかもしれない。恵利は白の帽子に白いワンピースという格好で、見ているだけで涼しくなりそうな服装だった。・・・・・いいなぁ、こんな彼女が居て・・・・・。ため息をつかなきゃやってられないってもんだ、はぁ・・・・・。

1つため息をついてから、刹那はさっき買った商品が入ったレジ袋を博人たちに見えるように持ち上げてみせた。


「そうだよ。ビーチボールとレジャーシートと・・・・・あと何買えばいいのかわからないんだよな」


「お前、海パンは?」


「あ・・・・・」


それを聞くと、博人は深いため息をつき、可哀想なものを見るような目で刹那を見た。・・・・・なんだ、何でだろうか。なぜかは知らないが、すっごくむかつく。無計画主義のお前に言われたかねぇよ!! って言ってやりたいほどである。


「せ、刹那君。そんな怖い顔しなくても・・・・・」


「ははは、そうだそうだ。そんなに睨むなって。よし、そんじゃ俺がお前のやつ選んでやるよ」


言うなり、博人は刹那の腕を掴み、様々な種類の海パンが売ってある店へと刹那をずるずると引っ張って行った。・・・って、待て! ちょっと待てぃ!!


「ちょっと待てって!! それじゃお前、恵利はどうするんだよ?!」


「大丈夫大丈夫。すぐ選んでやるから」


「え、恵利はそれでいいのかよ?!」


「いいですよ。その代わり、早く帰ってきてくださいね」


「マジかよ!!」


「つぅわけだ。ほら、とっとと行くぞ」


楽しそうに刹那を引っ張る博人をよそに、悲鳴とも呼べる、あ〜れ〜・・・・・という刹那の声がデパート内に木霊したのだった。




+++++




「何でこんなことになったんだ・・・・・」


店の中のベンチに腰をかけ、刹那はどよ〜ん、とした空気を出していた。そりゃそうだ。何ていったって、『あの』博人がたった今自分の海パンを選んでいるのだ。絶対と言っていいくらい、まともな海パンは選んでこない気がする。確実にネタっぽい海パンを選んでくる。これは長年一緒に過ごしてきた経験だ。まず間違いない。

そう思うと、やはり気が重くなってくる。・・・一体、あいつはどんな奇天烈なものを選んでくるのだろうか、と。


「おぉ〜い。こんな感じでどうだ?」


・・・来た。一体、どんなものを選んできたのだろうか?

博人は両手に海パンを持っている。その数は片手に3つだから、全部で6つ。まずは右手のほうから・・・。手の先から、ブーメランパンツ、天狗の葉団扇っぽい葉っぱ、志村さんがよく着てる白鳥の首付きハイレグ。

次は左のほうを見てみる。手の先から、ノーマルのハイレグ、スクール水着、ビキニ・・・・・。


「なぁ、いっぺんぶん殴っていいか?」


「駄目に決まってんだろ」


「何だよこれは!? まともなの1つもないし!! 左手の3つは女子用じゃないかよ!!」


「いや、似合うかなぁと」


「似合ってたまるか!!」


案の定、ものすごく変なものを選んできた。ってか、何でこんな変なもんが売っているのだろうか? 店長を呼べ! 店長を! 絶対一言文句言ってやる!

それに左手のほうは女性用だ。特に、スクール水着を着て海に行った日には、警察のお世話になってしまうこと間違いないだろう。もう何でもありじゃないか・・・・・。


「何だ、気に入らなかったのか」


「当たり前だっての! ちょっとはまともなの選べよ!」


「ふぅ〜・・・・・。弱ったな、このままじゃ恵利を待たせちまうな」


「あんたがちゃんと選ばないからでしょ?!」


「ちょ、ちょっとあんた達、店の中で何騒いでるのよ!!」


聞きなれた声が、後ろから聞こえてきた。振り向くと、そこには私服姿の理恵が立っていた。しっかりして大人っぽい制服姿とはまた違い、私服の理恵は少し子供っぽくて新鮮だった。

・・・そういえば、さっき博人たちと会ったときいなかったな。やっぱり気を遣ったのだろう。


「あぁ、これはこれはちょうどいいところに! 俺、恵利のところに行かなきゃならないですから、代わりに刹那のやつ選んでやってくださいよ!」


「お、おい博人。そりゃ理恵さんに迷惑になるっての!」


「べ、別にいいわよ! 選ぶくらい、そんなに迷惑じゃないし!」


理恵はそう言ってくれているが、さすがに迷惑だろう。ここは断っておくのが普通だろう。休みの日の自由な時間を、自分のために使わせるのは心苦しい。・・・そういえば、なぜかさっきから理恵の顔が赤い。どうしてだろうか?


「いや、でも・・・・・」


「いいの! アタシが選んであげるって言ってるんだから、素直に受け取っとけばいいの!」


「は、はい。よろしくお願いします」


「お〜け〜お〜け〜。それじゃ俺、恵利外で待たせてっから、後よろしくお願いしますね、理恵さん」


博人は、出口のほうに向かって歩いていく際に横切った理恵の耳元で、刹那には聞こえないくらいの小さな声で、そっと呟いた。


{後でゆっくり話しを聞かせてもらいますからね}


{わ、わかってるわよ!}


言い終えると、博人はピョンピョンと嬉しそうにスキップをしながら店から出て行った。何も知らない刹那の頭には、そんなに恵利に会えるのが嬉しいのか、ということしか思い浮かんでこなかった。・・・・・それに大して、理恵はしばらく顔を真っ赤にして動けなかったわけだが。


「あ、あの・・・・・理恵さん。顔、赤いですよ? 大丈夫ですか?」


「・・・・・」


刹那が理恵に呼びかけてみるが、理恵は顔を赤く染めたままボーっとしていて、刹那の呼びかけにちっとも反応しない。どうしたのだろうかと思って、刹那はもう一度理恵に声をかけてみた。


「り、理恵さん?」


「・・・ふへぇ?! え?! 何?!」


「い、いや! その! ボ、ボーっとしてたから、その、大丈夫かなって・・・・・」


「だ、大丈夫! うん、全然、大丈夫なんだから!」


手をぶんぶん振ってそう言っているが、本当に大丈夫だかちょっと疑わしかった。だって、顔が赤いままだったし、慌てている。・・・・・顔が赤いのはいつもだが、今日は何だか一段と赤いような気がする。

じと〜っとした目で刹那が理恵を見ると、むっとしたような顔をして理恵が言った。


「何よ、大丈夫って言ってるでしょ」


「・・・ホントですか?」


「本当だってば! ほら! とっとと行わよ!」


「は、はい!」


・・・・・そんなこんなで、刹那と理恵は2人きりになりましたとさ。







「ねぇ、博人君?」


「ん? 何だ?」


「姉さん、うまくやれるかな?」


「ん〜・・・・・ま、大丈夫だろ。何とかなるって」


「そうなるといいけど・・・・・」


「それにしても、刹那の鈍感さには呆れるな。まだ理恵さんの気持ちに気付いてないんだぜ?」


「そうだよね。・・・もう、刹那君ったら・・・」


「そこが刹那らしいけどな。あいつの鈍感さは見てて面白いからな」


「それに、玲菜ちゃんっていうライバルもできちゃったし・・・・・。姉さんも大変だね」


「まぁ、結局俺たちはちょっとした応援しかできないからな。最後は刹那自身が決めることになるだろうな」


「そうだね。決めるのって刹那君だもんね」


「ま、なるようになるだろ。そんじゃ、改めてデートするか!」


「うん!」




海までの道のりが長いです・・・。

話がもう1、2話くらい必要になります、申し訳ありません・・・。

これからも「殺し屋」よろしくお願いします!

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