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第31話 蟻地獄なお姉ちゃん

朝食の後に、玲菜のお茶を啜って一服する。うん、やっぱり日本人はお茶に限るな。とても気分が落ち着く。ずずず〜。

テーブルに突っ伏していた里奈も、さすがにいつまでののへ〜っとしていられないのか、自分の部屋に戻っていった。玲菜も全員分の朝食の後片付けをしたあと、里奈と同様、部屋に戻っていった。つまり、居間にいるのは刹那1人だけ、ということになる。


「・・・・・何だか寂しいな」


ずずず〜っとお茶を啜り、そう呟いてみる。・・・・・まぁ、そんなことを呟いたところで何の意味もないのだが。


「ごちそうさまっと」


「お粗末様。じゃあ刹那、出かけるよ」


「うぉ!! びっくりした!!」


エプロンを外した玲菜が後ろに立っていた。手にはバッグを持ち、手首には腕時計をしている。どこからどう見たって他所行きの格好だ。・・・・・うん、やっぱり可愛い。もちろん服装もだが、それを着ている玲菜がその倍以上可愛い。って、朝っぱらから何考えてんだ俺!!

平静を装って、刹那は玲菜に尋ねた。


「出かけるって、どこに?」


「デパートだよ。明日の準備しないといけないからね。刹那も行くでしょ?」


あ、そうか。と刹那は思った。明日はみんなで海に行くのだから準備をしなければならない。何の準備をしないまま海に行ったってしょうがない。ビーチボールとか、何か遊ぶものとかも買っておかないといけない。


「行くよ。里奈さんはどうするんだ?」


「連れて行こうと思ってるけど、今寝てるから起こしにいかないと」


「里奈さん・・・・・寝てるのか?」


今は・・・・・9時半だ。普通だったら夜に寝て、朝は起きているというものなのだが、こんな時間帯に寝るのだろうか、あの人は・・・・・?


「うん。お姉ちゃん、寝るの大好きだから。普通に寝るのじゃ足りないんだって」


「まぁ、気持ちはわかるな。でも、里奈さん起きるかな?」


「起きると思うよ。起きてくれないと困るし・・・・。ほら、刹那も来て!」


「え?! 俺も?! 何で?!」


「いいから!」


反論する刹那の腕を玲菜が引っ張り、そのまま廊下へ出た。・・・ってか何で俺まで? 里奈さんの部屋に入ったら殺されるんじゃないのか? と、少し不安になった刹那だが、よくよく考えてみれば里奈の部屋に入る機会など滅多にない。この機会を利用し、いつも自分をいじめてくる里奈への仕返しとして、無防備な寝顔を拝んでやるのも悪くないかもしれない、と思い直し、玲菜と一緒に里奈の部屋へと向かった。

廊下を進み、里奈の部屋の前までやってきた。・・・・・あぁ、緊張する。今自分はあの里奈さんの部屋の前にいる。いつも自分をいじめている、あの里奈さんの部屋だ。だが、今日は今までとは一味違う。いつもいじめられるだけだと思っちゃいけない。俺だって、たまには反撃する。些細なものだが、それくらいしないとやってられない。今日は、その反撃を実行する! 実行してやる! 里奈さんの寝顔をばっちり見てやる!

刹那が意気込んでいるのに気付く様子もなく、玲菜はドアを2回ノックした。


「お姉ちゃ〜ん。起きてる〜?」


中からは返事がない。と、すればやっぱり眠っているのだろう。・・・これは期待できそうだ。はたしてどんな寝顔だろうか。


「入るよ〜?」


ドアノブを回し、ゆっくり開いて中に入る。中はタンスも何もない質素な部屋だった。私服は畳んで壁際に置いてあり、里奈が寝ているだろう膨らんでいる布団の枕元にはいつでも手が届くようにと、初日に刹那を叩っ切ろうとした黒い日本刀が置いてある。

そして、刹那の目的である肝心の里奈は、こちら側に背を向けて寝ている。そのため、こちら側では寝顔を見ることはできない。見るためには、刹那が逆側に移動しなければならないのだが・・・・・そんなことをしたら、まず間違いなく斬られる。両断される。ミンチにされる。がばっと起き、枕元の刀でグシャグシャにされる。・・・・・想像しただけで恐ろしい。ぶるぶる・・・。


「お姉ちゃん? 起きてよ! 出かけるんだから!」


玲菜が起こそうと布団に近寄ったそのときだった。がばっと布団から細い手が伸び、玲菜の足首を掴んだ。・・・・・言うまでもない、犯人は里奈だ。


「きゃ?!」


「つ〜か〜ま〜え〜た〜♪」


「え?! や!? ちょ!? きゃあ!」


叫び声も空しく、玲菜はそのまま里奈のいる布団の中へと引きずり込まれていった。・・・・・蟻地獄に喰われる蟻は、こんな感じなのだろうか? と刹那は思わずにいられなかった。


「うふふ〜♪ 玲菜ちゃ〜ん♪」


もごもごと動いている布団の中から、里奈の楽しそうな声がしてきた。今、この狭い布団の中で何が行われているのだろうか? 気になる、すっごく気になる。できることなら布団を剥がして中の様子を見てみたいところだが、そんなことをしたら本当に斬り殺されてしまう。よくもあたしの楽しみを邪魔したな〜とか言いながら、ズバンッ!! と。




ッゴ!!




と、鈍い音が布団の中から聞こえ、涙目の玲菜が顔を真っ赤にしながら、乱れた服や少し下がったズボンを手で直しながら出てきた。・・・うわぁ〜、やべぇって。すげぇ色っぽいって。布団の中で何されたんだろ? すっげぇ気になる!!


「うぅぅ〜、痛い・・・・・」


里奈は布団の中で、頭を両手で押さえて悶絶していた。おそらく、玲菜にグーで殴られたのだろう。目に涙目を浮かべてうぅ〜、と唸っていた。


「もうッ!! お姉ちゃんったら何するのよ!!」


「姉と妹のスキンシップよぉ〜。いいでしょ、これくらい〜」


「服を脱ぐスキンシップなんてあるわけないでしょ!! 刹那もいるのに何考えてるのよ!!」


「ぶぅ〜。あってもいいのに・・・・・」


「よくないの!!」


頬を膨らませて、里奈は文句を言った。・・・・・まぁ、男の刹那としてはあっても問題はない。いや、むしろあってくれたほうが嬉しい。

っと、こんなことを考えてる場合じゃなかった、また里奈さんに心を読まれちまう! そう思った刹那は、慌てて話しを切り出した。


「あ、あのさ玲菜! そろそろ切り出さないとさ! な?」


「え? あ! そうだった! お姉ちゃん、起きて起きて」


「えぇ〜・・・・・。眠いよぅ・・・・・」


「明日に海に行く準備するから、ほら起きるの!」


「むにゅ〜・・・・・」


玲菜は、布団に包まっている里奈の肩を掴んで上半身を起こした。・・・さっきの出来事で目が覚めたと思ったのに、里奈は目を線にして眠そうな顔をしている。玲菜の拳骨も大して痛くなかったらしかった。


「ほら! 水着とか色々買いに行かないと!」


「・・・・・水着?」


水着という単語が耳には言った途端、里奈の目がかっ! と開き、掛け布団を蹴っ飛ばして撥ねるように起き上がった。


「水着! 玲菜ちゃんの水着! とっても過激なの選んだげる!! うふふふふ〜♪」


中年親父のような下品な笑い声を発しながら、里奈は玄関へと向かっていった。・・・・・里奈のことだ。ものすごく過激な水着を選ぶに違いない!! 男の刹那としては、とっても興味をそそられる!!


「もう! お姉ちゃんったら! ・・・刹那、どうしたの?」


「え?! あ!? 何でもないよ! うん!」


「? 行こ、刹那。早くしないとお姉ちゃん行っちゃう!」


「うん、わかった。行こう」


玲菜の水着姿を想像して興奮している里奈を、刹那と玲菜は走って追いかけた。はたして、玲菜の水着やいかに・・・。











2月って、30日がなかったんだった・・・・・忘れてた・・・。

次の更新日は3月5日になります。見に来てやってください!

これからも「殺し屋」よろしくお願いします!

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