第30話 夏休み初日
ぴぴぴぴぴぴぴぴ・・・・・・
「ん・・・・・」
もぞもぞと ベッドの中で体を動かし、すっと手を伸ばして、やかましく鳴っている目覚まし時計の頭に付いているボタンを押した。目覚ましのベルは止まり、再び部屋に静寂が訪れた。
{・・・・・あぁ。すげぇ気持ちいい・・・・・}
2度寝の素晴らしさは、それはもう口では表現できない。温かで柔らかいベッドの中、カーテンの隙間から差し込んでくる温かい日差しを背に受け、もう一度眠る。これが最高の瞬間なのだ。ねぼすけの刹那にとっては、これ以上にない最高の瞬間。
朝なのだから起きろよ!! と言う方もいるかもしれないが、それは無理というものだ。だって、今日から夏休みなのだから。学校のある平日とは違い、いつまでもベッドの中で寝ていてもいいという素晴らしい長期連休だ。これだから学生はたまらない。社会人の忙しい人たちに、この幸せを分けてあげたい気分だ。
寝返りを打ち、もう一度眠りにつく。・・・・・と、
「刹那〜、朝だよ。起きて〜」
誰かが部屋に入ってきた。玲菜か、はたまた里奈かどちらかなのだが、今の刹那にはどちらでもよかった。もう少しで眠りにつける・・・・・
「起きてよ、刹那。朝だよ」
ゆっさ、ゆっさ、ゆっさ・・・・・。体が左右に揺り動かされる。
「ん〜・・・・・んぁ?」
「あ、起きた? ご飯できたよ。着替えて降りてきてね」
「玲菜・・・・・? ・・・・・おはよ」
「うん、おはよう」
・・・・・さっきまでの眠気が、嘘のようになくなっていた。エプロン姿の玲菜が、にっこり笑っておはようだ。自然と心拍数が上がって、顔が赤くなってくる。・・・・・くそ、めちゃくちゃドキドキしたよ!
「・・・っは!!」
がばっと起き上がって、辺りをくるくると見回す。そう・・・・・里奈の存在を確認するためだ。里奈は読心術が使えるから、こんなことを考えているということはいとも簡単に知られてしまう。そしたらあの里奈のことだ、修羅と化すに決まっている。両手に日本刀を持ち、般若のようなすごい形相で追いかけてくる姿が簡単に想像できる。・・・ぶるぶる。
「どうしたの、刹那。震えてるよ?」
「い、いや、なんでもないよ。・・・・・ん?」
・・・読心術で思い出したのだが、何で里奈はしょっちゅう心を読んでくるのに、玲菜はそうしないのだろうか? 今も、別に読まれても仕方がないと思うのだが・・・。
ひょっとしてできないとか・・・・・? それとも、人の心を読むなんてことは失礼だからしないだけとかか? ・・・たぶん後者のほうだろう。優しい玲菜のことだ、きっと相手のことを気遣って仕事のときくらいにしか使わないのだろう。
「? どうしたの刹那、黙り込んじゃって」
「あ、いや。なんでもないよ」
「? 変なの。それじゃ、早く来てね。準備しておくから」
「うん、わかったよ。すぐ行く」
玲菜が部屋から出て行くと、すぐ刹那は着替えを始めた。寝巻きを脱いで、私服に着替える。今日は・・・・・これとこれでいいか。
適当にタンスの中から服を取り出し、着替える。脱いだ寝巻きを持ってそのまま刹那は部屋を出た。
階段を降り、居間に向かう前に洗濯籠が置いてある洗面所に向かった。手に持っている寝巻きを籠に入れるためだ。まさか持ったまま食べるわけにはいかない。ってか食べたくない。嫌すぎるだろ・・・寝巻き持ったまま飯食うのって・・・。
寝巻きを洗濯籠に入れると、刹那は今度こそ居間に向かった。さっきから腹の虫が玲菜の作った朝食を要求している。うぅ、腹減った。楽しみだな、今日のメニューは何だろ?
うきうきしながら居間に行くと、テーブルにうつ伏せになってのへ〜っとしている里奈と、1人分の朝食が置かれてあった。今日は、焼き魚がメインの朝食だ。うん、いい匂いだ。
イスに座り、いただきますを言って朝食に箸をつける。・・・・・うん、うまい。いつもながらだが、やっぱりうまい。自然と箸を動かすスピードが早くなる。
「んへぇ〜・・・・・」
奇声をあげて、里奈が刹那のほうを向いた。いつもはビシッとしてそうなイメージがあるのだが、どうしてこの人は朝食後にこうなるのだろうか?
「おなか一杯になって眠くなってるからに決まってんでしょ〜? あんたも学生なんだから、5時間目に眠たくなる心理くらいわかるでしょ〜? それと同じよ〜」
「・・・・・・」
「ん? 文句言わなくなったじゃない。どしたのよ?」
「いや、さすがにもう慣れましたから」
「あ〜っそ」
それを言うと、里奈は再びテーブルに突っ伏し、再びのへ〜っとし始めた。・・・・・不覚にも、その行為が少し可愛いと思ったのは内緒でお願いします。
ふと思ったのですが、皆さんはどのキャラが好きなんでしょうか?
作者は個人的に里奈が気に入っているのですが、皆さんはどうでしょうか?
これからも「殺し屋」よろしくお願いします!
追記:総合アクセス60000を越えました。本当に感謝しています。ありがとうございました!