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第29話 夏休み前の相談

玲菜たちが家に来てから1ヶ月ちょっとが経っていた。玲菜の料理は以前に増してどんどん上達していったし、里奈さんのいじめもどんどんエスカレートしていった。

博人たちとも仲良くやっているが、たまに理恵さんが顔を真っ赤にしていることがある。原因はよくわからないが、病気ではないらしい。

・・・・・とまぁ、あんなことやこんなこと色々あったわけだが、ついにあの日が来たのだ。




そう、夏休みだ。




「つぅことで、海行くぞ、海」


「・・・・・お前本当にいきなりな」


博人が案を出したのは、みんなと昼食を食べているときだった。暑くなっているせいか、みんなが食べている弁当も、痛まないようにと色々工夫がされていた。

制服も冬服から夏服になり、涼しい格好で各自の弁当をつつきあっていた矢先の話だった。


「海だぞ海!! 真夏の太陽! 青い海! 白い砂浜! そして極めつけは・・・・メガネをかけた水着姿の美人さんだ!!」


「やっぱりお前変態だろ」


「博人君・・・・・私がいるのに・・・・・」


博人の話を聞いて、よよよと、恵利が泣き崩れた。あ〜あ、彼女がいるのにそんなこと言うから・・・。

だが、当の本人である博人はふっと笑うと、恵利の肩に手を乗せてこう呟いた。


「ば〜か。メガネをかけた美人さんと言えば・・・・・お前しかいないだろ。ん?」


「博人君・・・・・」


・・・・・何だ、何だこいつらは。ノロケか? ノロケなのか? アツアツですよ〜って、俺と理恵さんに自慢してんのかこいつらは。


「・・・結局何がしたいんだお前は」


「おぉっと、恵利の可愛さに我を失っていたぜ。まぁつまりはみんなで海に行こうってことだ。理恵さんは今年しかいないからな、思い出作り思い出作り」


「そうね。アタシもあんた達と遊びたいし、ちょうどいいんじゃない?」


そうだった。理恵さんは3年生だから今年しかいないんだった。そうなってくれば思い出作りも大切になってくるな。あと1年ある俺たちとは違うんだから。・・・・・よし。


「わかった。行くよ。それで、いつにする?」


「明日」


「・・・・・お前ちょっとは計画性ってのを持とうな?」


「そうですよ博人君。いくらなんでも、もう少し決めてから行かないと。私も姉さんも水着買いたいし・・・・・」


「それに、何時にどこ集合で、どうゆう経路で行くのか、そういうのも決まってるのか?」


「・・・・・うんにゃ、決まってない」


はぁ〜〜〜〜、と長いため息をついて、顔に手を当てる。・・・・・こいつは、本当に計画性ってものがないのな。ちょっとは決めてから行動に移さないと後々困るぞ。


「とりあえず明日は準備するとして、行くとしたら明後日以降ってことになるな」


「そんじゃ明後日で」


こいつは・・・・・本当に何を考えているんだ? いや、何も考えてないのか。ははは・・・・・はぁ。

刹那は頭をがりがり掻き、ため息をついて言った。


「俺以上に何も考えてないんだな、お前」


「うるさいっての。そんじゃ、とりあえず明後日で決まりだな」


・・・・・マジかよ。決められちまったぞ。ってか俺たちに意見も聞かないで決めるってのもどうかと思うんだが・・・・・。

あ〜そうだそうだ、と博人は手を打ち、思い出したかのように刹那に言った。


「玲菜ちゃんと里奈さんも誘ってくれよ。たくさんいたほうが楽しいだろ?」


確かに、人数は多いことに越したことはないだろう。あの2人がいれば楽しくなるのは間違いないし、何よりもいつも家事をこなしてくれている玲菜にちょっと休んでもらいたい。日頃の感謝の意味もあるし、玲菜にはみんなと一緒に楽しんでもらいたかった。


「あぁ、そうだな。玲菜と里奈さんにも声をかけておくよ」


それを聞くと、恵利はにこっと笑顔で言った。


「楽しみですね、みんなで行く海。今年はいい休みになりそうです」


「そうだな、たくさんいい思い出作ろうな。恵利・・・・・」


「博人君・・・・・」


2人はそのままいい雰囲気になりお互いを熱のこもった目で見詰め合う。・・・・・っておい。


「目の前でいちゃつかれても困るんですが・・・・・」


「そ、そうよ! 何もこんなところでいちゃつかなくてもいいじゃないの!」


自分達の世界に行ってしまっているためか、刹那と理恵がぶーぶー言っているのが耳に入っていないらしい。2人の顔と顔の距離がどんどん近づいて行く・・・・・。

刹那と理恵は、止めろ止めろと口では言っているものの、2人の行為を顔を赤くしながらもじぃっと見ていた。ドラマとかでよく見るシーンだが、実際生で見るのは初めてだ。実際に自分らがしているというわけじゃないのに、心臓がバクバクして仕方がなかった。

博人と恵利の唇がもう少しでくっつくというところで・・・・・・





キーンコーンカーンコーン♪





お約束通り、予鈴が鳴り渡った。博人は、っち、と舌打ちをし、恵利は珍しく唇を尖らせて拗ね、お互い渋々と離れた。・・・・・ってか、学校でそんなことすんなよ。見られてるとか考えないのかこいつらは・・・・・。

予鈴が鳴る前には全員分の弁当箱も空になっていたから、そのまま流れ解散となり、刹那たちは2階へ、理恵は3階の自分達の教室へと帰っていった。


・・・・・それにしても、夏休みか。忙しすぎて全然気がつかなかったな・・・。


教室へ帰る際、刹那はふとそんなことを思ったのだった。





+++++





「ってことで、海行かない? 2人とも」


夕飯後のお茶を各自啜っているときに、刹那は明日から夏休みに入るということと、博人たちと一緒に海に行くから一緒に行かないか? ということを話した。2人は自分達にそんな誘いがくるとは思ってもみなかったようで、しばらく刹那の言葉にきょとんとしていた。


「でも・・・・・博人さん達に悪いよ」


「そうね。あの子たちの邪魔しちゃ悪いし、今回はパスね」


刹那の予想通り、やはり玲菜は遠慮するようだったが、意外だったのは里奈のほうだった。あの人が誘いを断るなんて思わなかった。てっきり、


『え! 海ですって! やった、玲菜ちゃんの水着が拝めるわ〜!!』


とか何とか言って、逆に乗ってくると思っていたのに・・・・・なぜだろう?


「あたしだって気くらい使うわよ。そりゃ、玲菜ちゃんの水着姿は見たいけど・・・・・友達同士の楽しい時間に部外者が入り込んだらどうしても遠慮しちゃうでしょ? どう考えてもあたしたちは迷惑な存在よ。だから遠慮しとく」


「・・・・・心は読まないでください。それと、玲菜と里奈さんを誘えって言ったのは博人たちのほうだから、迷惑だなんて思ってませんよ」


言われた2人は、最初に海に行こうと誘われたときと同じくらいきょとん、とした顔で刹那を見ていた。たぶん、誘ってくれたのは刹那が自分達に気を遣ったから、思っていたのだろう。だから、刹那以外の人が自分達を誘ってくれた、などということは完全な不意打ちであった。


「それ・・・・・ほんと? 刹那」


「ほんとだよ。だからさ、2人とも遠慮することないって。来てくれたほうがみんな喜ぶしさ」


「・・・・・どうする? お姉ちゃん」


里奈は、手に持っている湯飲みのお茶をずず〜っと啜り、ん〜・・・・・と考え込んでいた。

確かに自分達が行けば、自分達に遠慮してはしゃげなくなるかもしれない。友人たちの楽しみを邪魔してしまうかもしれない。しかし・・・・・


「・・・まぁ、あの子達が来ていいて言うんなら、行ってもいいかな。玲菜ちゃんは?」


「ねぇ刹那、本当に博人さん達、誘ってくれたの?」


「そうだよ。玲菜たちも誘ってくれってさ」


「・・・・・それじゃ、行こうかな」


最後は笑顔で行くと言ってくれた。よかった、これでちょっとは家事のことを忘れて、楽しんでもらえるかな。


「ちなみに、行くのは明後日だから、準備とかは明日に済ませたほうがいいよ」


「うん、わかった。楽しみだねお姉ちゃん」


「そうね。海なんて・・・・・何年ぶりかしら? まぁ玲菜ちゃんの水着姿を見れるからよし!!」


「もう! お姉ちゃん絶対変だよ!!」


・・・それは今更だと思うぞ、玲菜。

それにしても、この2人本当に仲がいい。さっきまで遠慮していたというのに、行くときまったら明日の準備はどうしようかと2人とも笑顔で話し合っていた。


{・・・こりゃ本当に楽しくなりそうだな}


刹那は自分の食器を下げ、玲菜たちの邪魔をしないようにと、自分の部屋へ退散していった。





と、いうわけで夏休み編が始まります。

その中で、とりあえず夏は海! というイメージが強いので、海にしました。

山だろ!! っていう人、ごめんなさい・・・・・。

これからも「殺し屋」よろしくお願いします!


追記:総アクセス55000を越えました。みなさん、本当にありがとうございます!

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