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第19話 遊びに行こう!

「寄り道? 珍しいな。いっつも恵利と行ってるのに」


「もちろん恵利とは一緒だ。理恵さんも一緒だぞ」


「つまり、4人で遊ぼうってことだよな」


「ま、そゆことだ」


めんどくさい授業がやっと終わって放課後になり、鞄に教科書やら筆記用具やら授業中の暇つぶしようのマンガやらをしまいながら、刹那は博人に言った。


「まぁ、俺はいいけどさ。理恵さんって部活じゃなかったっけ?」


「本日、部休でございます。オーケー?」


それを聞いた刹那はなるほど、と思った。

この学校のソフトボール部はレベルが高い。全国大会の出場はもちろん、全国制覇も珍しいことではない。その高いレベルのため、ソフトボール部の部員は多く、入部の際にテストをするほどだ。・・・それもそのはず。ここの学校のソフトボール部に入部すれば、全国制覇は約束されたも同然なのだから。

部員が多いと何が困るかというと、補充が利く、ということだ。チーム全体としてはいいことかもしれないが、個人にとっては困ることだ。自分が風邪をこじらせて休んでいる間に、自分の守っていたポジションを奪われてしまう、という可能性もある。・・・早い話、うかうかしてると自分の居場所がなくなってしまうから、部活は休めない、ということだ。

そんな激しいポジション争いを勝ち抜き、4番でエースというポジションをゲットした理恵が、自分達と遊ぶために部活を休むなんておかしいとは思ったが・・・・・なるほど、部休か。納得した。


「それで、どこに行くんだ?」


「ん〜・・・ま、みんなと話し合って決めようぜ。とりあえず行くぞ、校門で待ち合わせしてるんだ!」


「あ! 待てって!」


走って教室を飛び出した博人の後を、刹那が追いかける。まだ教室や廊下には、帰り支度をしている人や友達と喋っている人が、まだちらほらと残っている。そんな中、廊下を走っていく2人の男。・・・何だか周りの視線が痛いのは気のせいだろうか? ほら、何だあいつら、とか言われてるし・・・。

でも、今更走るのを止めて歩くのも気が引ける。仕方ない、このまま追いかけよう・・・。心の中でため息をつきながら、刹那は周りの目を気にせず、はしゃぎながら走っている博人を追いかけた。

階段を駆け下り、再び走って玄関までたどり着く。博人は靴を履き替えると、先ほどまでの走りはどこへ行ったのか、と言いたくなるほどゆっくりと歩き出した。・・・いや、本当にさっきまでの走りはなんだったんだ? いきなりゆっくりになりやがって・・・。

文句の1つでも言ってやろうと思い、刹那は博人の隣まで早足で駆け寄った。


「おい、博人。お前なぁ・・・・」


「・・・・・」


「?」


博人は、さっきの笑顔とは全然違う表情をしていた。どこか寂しい目をしていて、悲しそうに空を見つめているのだ。・・・それはまるで、この空の向こうに何か大切なものがあって、でも決して届かないことがわかってるような、そんな感じ。・・・こんな表情の博人、初めて見た。何かよほどのことがあるに違いない。


「どうしたんだよ? そんな顔して」


刹那が心配そうに博人に尋ねると、博人は、はぁ、とため息をついて刹那のほうを向いた。そして、ゆっくりと、その重い口を開き、話し始めた。


「・・・実はな・・・」


「うん」


「恵利と2人きりでデートに行けないのが残念で残念で仕方ないんだ」


「・・・・・」


・・・この野郎いっぺん引っ叩いてやろうか!? 何が2人きりでデートに行けないのが残念だ、だ!! 心配して損したよ!!

何だか拍子抜けしてしまった。刹那は、博人のため息よりもさらに大きなため息をついた。博人はそれを狙っていたのか、にっしっし、とか笑いながら刹那の手を引っ張った。


「ほら、とっとと行こうぜ! 恵利と理恵さんが待ってる!」


「引っ張んな!! 伸びる!!」


「ははは、ブレザーがそう簡単に伸びるかよぉ!!」


刹那の言うことを無視し、博人はブレザーの袖を引っ張りながら校門まで走り出す。刹那本人も強制的に走ることになってしまう。・・・ってか、何でこいつこんなにはしゃいでるんだ?いつもより浮ついてるというか、何と言うか・・・。

そんなこんなで、校門が見えるところまで2人はたどり着いた。それを見計らっていたかのように、恵利と理恵が校門の影から現れた。・・・少し待ちくたびれたのか、2人の顔が少し不機嫌そうだ。よし、ここは先手を打って先に謝っておこう。


「あの・・・2人と―――」


「おっそいわよ!! どれだけ待ったと思ってるのよ!! もう!!」


「まぁまぁ、姉さん。刹那は帰りの準備をするので忙しかったんだよ」


・・・謝ってる暇もなかった。ってか、謝ろうとしたのに怒られた。・・・悪いのは博人もなのに、理恵の怒りの矛先は刹那にしか向いていなかった。うぅ、何で最近俺ってこうなんだろ・・・。玲菜たちが来て環境が変わったからか? ・・・・・関係ないか。


(姉さん、もっと素直にならないと駄目だよ。刹那君落ち込んでるよ?)


(だ、だって・・・その・・・、恥ずかしいんだもん・・・)


「?」


2人が何かひそひそと話し合っているが、声が小さくてよく聞こえない。ん〜・・・やっぱり、怒ってるから2人で文句を言ってるのかな・・・? 何で俺ばっかりこんな目に・・・。

刹那の落ち込んだ空気を吹き飛ばすかのように、博人は妖気に笑って言った。


「さ、4人揃ったことだし、遊びに行きますか!」


「でも博人君、どこに行くの?」


「ん〜・・・そうだな。とりあえず・・・」




ぐぅ〜。




言葉を続けようとしたとき、刹那の腹が鳴った。・・・恥ずかしい。これはすっごく恥ずかしい。うわ〜・・・みんな俺を見て笑ってるよ・・・。恥ずかしいなぁ〜おい。・・・やべ、何か顔が火照ってきた・・・。

刹那の顔は見る見るうちに赤く染まり、それを見た博人が言った。


「・・・とりあえず飯食いに行くか・・・」


「そうだね、そうしようか。刹那君、おなか空いてるみたいだし」


「・・・っぷ、あはははは」


「みんな笑うなよぉ!! 仕方ないだろ〜!!」


3人と笑い声と、1人の恥ずかしさを誤魔化す声が、人の少ない校門に響き渡った。

しばらく笑いあったあと、4人は町のほうへと歩き出した。


今年度最後の更新となります。

さて、何気なく更新してきた『殺し屋』ですが・・・いかがでしたでしょうか? 楽しんでいただけたでしょうか?

思いのほか、たくさんの人が見にいらしてくれたので、とても嬉しいです。

正直なところ、あまり来てくれないのではないか、と思っていましたが、更新日はアクセス数が1000を越える(何だ、そんな数か。と思うかもしれませんが、自分にとってはとても多いアクセス数です)日もありました。自分が思っていた以上に好感を持っていただき、とても感謝しています。本当にありがとうございました。


・・・何だか最終話みたいな感じになってしまいました。まだまだ続く予定ですので、どうか温かく見守ってくださいね!

来年も『殺し屋』よろしくお願いします!

よいお年を!

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