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第17話 酒と思い出話

夕飯も食べ終わり、そのあと他愛のない話で盛り上がり、玲菜があくびをしたのをきっかけに各自部屋に戻り、深い眠りにつき夢を見ている頃、明と幸一は居間で2人きりで酒を飲んでいた。テレビは点いておらず、音と呼べる音は互いのコップに注がれた発泡酒の泡の音だけだった。

その泡の音が消えてなくなる前に、幸一は静かに話を切り出した。


「早苗ちゃんが死んでから・・・もう17年か。早いものだね」


「あぁ、そうなるよ。・・・それから、いい加減その口調止めてくれないか? 他人と話してるみたいで気味が悪いよ」


「・・・そうだな、里奈も玲菜も寝ちまったし、今だけは戻すか」


「そうしてくれると助かるよ」


ぐっと、明は手に持っていたコップを口に付け、中に入っている酒を一気に飲み干した。喉を通った酒のアルコールが、まるで内側から焼けているかのような錯覚を生み出す。

空になったコップを幸一のほうに差し出すと、幸一は手元にあったビール瓶を取り、明のコップになみなみと注いだ。


「それで、刹那に殺し屋が何の用なんだ? お前が動くくらいだ、よっぽどなんだろう?」


「よっぽど、って言えばよっぽどだし、そうでもねぇ、って言えばそうでもねぇんだ」


ちょうどいいところでビールを注ぐのを止め、幸一は少し減った自分のコップにもビールを注いだ。

明はくいっと少しだけビールを飲むと、幸一に聞いた。


「何だそれ? どういうことだ?」


「今まで間違いのない情報会社から貰った情報なんだけどよ、それに書いてあったんだ。木下 刹那は恐喝、強盗、殺しの疑いあり、ってな」


「それでお前の娘さん達が来てたのか」


「監視役としてな、うちのほうで派遣させた。まぁ、本当は殺しに行かせたんだけど、そんなことをするようには見えないって言うから様子を見てもらってるだけだ」


明の質問の答えを言い終わると、幸一はコップの中のビールを3口だけ飲むと、明に言った。


「あんま、驚かないんだな」


「驚く必要なんてないさ。お前んとこの会社は無実の人間は殺さないんだろ?」


「俺が決めた方針でな、そういうことになってる」


「だったら安心だ。俺と早苗の子だぜ? そんなくだらないこと、絶対しないさ」


ふ、と笑うと、明は再び口にビールを運んだ。コップが小さいのか、それとも明のペースが速いのか、すぐにコップは空になってしまった。それに幸一が気付くと、もう一度明のコップにビールを注いでやった。


「・・・早苗ちゃん、か。いい子だったのにな。ほんとに・・・残念だ」


「・・・仕方ないよ。いくら残念でも早苗が帰ってくるわけじゃないしさ。いい子って言えば、お前の娘たちもいい子だったじゃないか。気が利いて、可愛くて、明るい」


「まさかあんないい女になるなんてな。拾ったときには思わなかった。俺にはもったいないくらいよく出来た娘たちだよ」


「・・・そういえば、捨て子なんだっけ、あの子達」


「あぁ。公園で拾った」


「拾ったって・・・お前、猫じゃないんだから・・・」


「わかってるっての。実際、女の子のことなんてさっぱりわかんなかったからな、育てるのには苦労したぜ。あの時はそんなこと全然考えてなかったからな。それでも養子にした理由は・・・・ただ親のいないあいつらが可哀想だったんだ。それだけ」


言い終わると、幸一は一気にビールを飲み干した。空になったコップに、今度は明がビールを注いでやった。


「後先考えないところがお前らしいな。そういえば、お前の会社もだ。働き手のいない状態で会社なんか興すなっての」


「ま、それが今や日本トップの大会社だ。誰も文句は言えねぇよ。だいたい、後先考えないのは俺じゃなくてお前のほうだろ。高校に入学してから1ヶ月で辞めやがって」


「・・・確かにな。もっとよく考えてれば、高校を辞めなくてよかったかもしれない」


「だろ?」


「でも・・・・・」


「でも?」


「後悔はしてない。間違ったことはしたって自覚はしてるけど、それを後悔した日は一度もないよ」


「・・・そうだな、そうだよな。お前らのおかげで今の刹那君があるんだもんな。後悔なんてあるわけねぇか」


幸一は一瞬だけ遠い目をすると、不意ににこっと笑って明に言った。


「さ、暗い話はもう止めだ。今夜は飲もうぜ。まだたくさん酒はあるからよ!」


「そうだな・・・飲むか!」


久しぶりの親友同士で飲む酒は、いつも飲む1人ぼっちの酒よりもずっと美味しく、2人は時間を忘れて飲み明かしたのだった。








会話の途中で出てきた「早苗」は刹那の母親で、明の妻です。

昔、明と早苗に何があったのでしょうか? 後々に明らかになると思います。

これからも「殺し屋」よろしくお願いします!

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