第15話 やってきたダブルパパ!! その1
学校が終わってから、里奈さんの家具を選ぶために博人の家に少しお邪魔した後、刹那は真っ直ぐ自分の家に帰った。寄り道だってしなかったし、変な男の人から声もかけられなかった。何かあったかといえば、野良猫にじぃ〜っと見つめられたくらいだ。そこまではいい。
でも・・・何で玄関にある靴の数が一足余計にあるんだろう? それも、大人用の革靴が。
自分のじゃないことは確かだ。サイズが違うし、革靴なんて履いたことなんてない。そもそも、この家に革靴なんてない。
玲菜と里奈さんのでもないことはわかる。これは男の革靴だ。男物の革靴を、女の2人が履くわけがない。
自分のでもない、玲菜のでもない、里奈さんのでもない。ということは他の人の靴ということになる。
家には玲菜と里奈さんしかいない。つまり、玲菜か里奈さんの知り合いが来ているということなのだろう。それがどんな人物なのか? 少しだけ興味があって居間に向かう足を速めた。
「へぇ〜、結構いい人なんだね。情報屋から貰った書類と全然違うみたいだね」
「・・・でも、まだ様子は見ないといけないわ。早とちりはしちゃいけないし、ね」
「うん、里奈ちゃんわかってるじゃない。お父さん嬉しいぞ!」
「ところで、会社のほうは大丈夫なの? あたしが抜けちゃったから、仕事追いついてないんじゃないの?」
「その点は心配しなくて大丈夫。シリスちゃんも頑張ってくれてるからね。それに、里奈ちゃんには玲菜ちゃんのことを守ってもらいたいしね」
「それは頼まれなくてもやるわ。あたしのたった1人の妹だからね。傷つけるような奴がいたら容赦しないわ」
「うん、お願いするよ」
・・・ん〜と、何だか話し込んでるみたいで非常に入りづらいんですけど・・・。
まぁ無理して入る必要はないか。自分の部屋に篭ってれば問題ないだろう。あ、そういえばこの間買ったマンガがあったな。あれ読んじゃうか。
・・・そう思って2階に上がろうとした矢先だった。
「それと、刹那君。君からも話しは聞きたいから、こっちに来てくれないかな?」
「そうよ。あんた、何そんなとこで突っ立ってんのよ。ほら、いらっしゃい」
・・・あのね? 今俺がいるところって、壁が邪魔になってて見えない場所なんですよ? なんで見えちゃったりしてるんですか?
まぁ、ばれてしまったものは仕方がない。刹那はドアを開けて居間に入っていった。
里奈さんと、里奈さんの知り合いであろう30代そこらの男は、テーブルで向き合うようにして座っていた。・・・あれ? この男の人、どこかで見たような気がする。どこでだっけ?
「紹介するわ。あたしと玲菜のお父さんで、おもちゃ会社A・B・K社の現社長、ならびにその裏の顔である殺し屋業の総統率者、佐藤 幸一」
「あ! テレビによく出てた!」
「うん、よろしくね刹那君。・・・うん、やっぱり似ているね。目元がお父さんにそっくりだ。眉毛はお母さん譲りだね。・・・本当に立派になった」
「? お父さん、刹那のこと知ってるの?」
それは刹那も聞きたかった。刹那は幸一と会うのは初めてだ。いつ会ったのだろうか? と、すごく気になった。
「あぁ、刹那君はわからないと思うよ。赤ちゃんのときに僕が一目見たっきりだからね」
「・・・ということは、親父がお袋の友達ですか?」
「うん、明とは小さいときからの付き合いでね。アイツのおかげかな、今の僕があるのは」
明・・・刹那の父親の名前だった。あんなだらしのない人間が、幸一のような人物と友達同士だったとは。それに、今の自分があるのは親父のおかげだとも言っている。・・・世の中わからないものだなぁ、と刹那は思った。
あ、そうだ。と里奈が思い出したかのように刹那に言った。
「そういえば、あんたが帰ってくる前に電話があったわよ」
「え? 誰からです?」
「あんたのお父さん。今日帰ってくるってさ」
「・・・・・は?」
一瞬、里奈の言っていることがわからなかった。え・・・? あの親父が、帰ってくるだ?
「だから、あんたのお父さんが帰ってくるの。もう少しで着くって言ってたわよ。それと、玲菜ちゃんは買い物に行ったわ。そりゃもう張り切ってね」
そうかぁ、今日は玲菜が張り切ってるのかぁ。こりゃ夕飯が楽しみだなぁ。玲菜の料理はおいしいからなぁ・・・。っておい!! 問題はそこじゃない!!
何で親父が帰ってくるんだ?! いや、別に帰ってくるのが悪いって言っているわけじゃない。ただ、1年のうちに1回帰ってくるか来ないかの頻度だったはずだ。今年はもう元旦の日に顔を出している。だから今年はもう帰ってこないはずなのに・・・!!
しかもだ!! よりによってなんで玲菜と里奈さんがいるこの期間に来るんだ?! 絶対見計らって来てるよ!! くっそ〜!! なんて言い訳しようか!! 本当のこと話すわけにもいかないし・・・!!
「ただいま〜」
玲菜の声が玄関のほうからした。どうやら買い物から戻ったらしかった。どれくらいの量を買ったのかはカサカサ言うレジ袋の音でわかる。・・・これは、本当に夕飯期待できそうだぞ。
「お、玲菜ちゃんのおかえりだ。玲菜ちゃ〜ん!! おかえり〜!! お姉ちゃん寂しかったよ〜!!」
「おぉ〜!! 玲菜ちゃ〜〜ん!! お父さんも寂しかったぞ〜!!」
「あ〜!! もう!! 2人ともくっつかないの!!」
「「は〜い・・・」」
・・・まぁ、仲のいい親子だな。ははは・・・。
玄関のほうから聞こえてくる3人の声を聞いて、刹那はそんなことを思ったのだった。
・・・でも、本当にどうしようか? 何て言い訳すればいいだろう。親父の部屋も玲菜の部屋にしちゃったし。ん〜・・・。
っということで、次回は刹那のパパが登場します。
これからも「殺し屋」よろしくお願いします!!