第110話 殺し屋はターゲットに恋をする
『そっか。そっちに居たいのか』
「うん、ごめんなさいお父さん」
『いいよいいよ、戻ってきてもらってもやってもらう仕事はもうないしね。そっちで刹那君とラブラブしてればいいよ〜』
「ちょ! お父さん!?」
『はははは』
あの後、玲菜は幸一へと電話をかけていた。
自分の気持ち。
刹那の気持ち。
里奈から教えてもらった本当のこと。
そして、これからもこの家に、刹那のとなりに居たいということ。
それらを全て父である幸一に伝えた。
「それより! シリスさんにと代わってほしいんだけど、いる?」
『あ〜・・・えっとね〜。いるんだけど、僕のほうから話しておくよ』
「? どうして?」
『絶対反対するから。年頃の女の子が男の子の家に住むなんて聞いたら、刹那君本当に殺されるかもしれないしね』
・・・本当にやりかねない。笑えない冗談だ。
「う、うん。それじゃお父さんお願い」
『お父さんに任せなさ〜い。それじゃ刹那君に代わって』
「うん。・・・刹那、お父さんから電話」
胸を叩く心臓の音を感じながら、玲菜から受話器を受取る。
「も、もしもし」
『やぁ刹那君、しばらく。うちの玲菜がそっちで暮らすことになるけど、よろしくお願いできるかな?』
「あ、はい。その、こちらこそよろしくお願いします」
『うわ〜、何だか夢みたいだよ。うちの子供と明の子供がくっついちゃうなんてさ。すごく嬉しいよ。このまま結婚しちゃったりしてね』
「け、結婚?!」
『驚かないでよ。里奈に啖呵切ったくらい好きなんでしょ? 半端な気持ちで玲菜を任せてください、だなんてことないんだったら、ちゃんとそういうのも視野に入れておいてね』
「は、はい。わかりました」
『うん。じゃあ明には・・・黙っておくか。面白いし。それじゃお願いね。生活費のほうは明に口座聞いて玲菜の分も振り込んでおくから』
「はい、わかりました」
ぷつっと音がして電話が切れた。
ふぅ〜とため息をつき、受話器を置く。
「終わった?」
「うん、終わった。・・・あ〜、緊張した」
「すごくあたふたしてたもんね。お疲れさま」
にっこりと笑顔の玲菜。先ほどの凄まじい緊張も、玲菜のこの顔を見れば別に大したことなどないように思えてくる。やはり・・・偉大だ。好きな人がいるっていうのは。
「全部終わったみたいね、2人とも」
里奈が、電話の前にいる2人に話しかける。
手には、荷物と黒い日本刀。
「お姉ちゃん、帰っちゃうの?」
「ま、結局あたしはいる意味ないしね。刹那の監視役も終わったし、あとは2人で仲良くやりなさい」
「・・・寂しくなりますね」
「な〜に言ってんのよ、玲菜ちゃんがいるでしょ? それじゃ、そろそろ行くわ。仕事もだいぶたまってるだろうしね」
ひらひらと手を振って、里奈はこの家から出て行―――
「・・・2人きりになるからって、あんた玲菜ちゃんに変なことすんじゃないわよ? たまに来るからね」
く前にこう言い残し、今度こそ本当に出て行った。
残された2人。最初から広かった家なのだが、里奈がいなくなったことでますます広くなったような気がした。
「・・・寂しくなるな」
「うん。毎日ひっついてきて嫌だったけど、いなくなってみれば寂しいものなんだね」
しみじみとした空気になり、しばらく沈黙する。
・・・が、そこで刹那は大切なことを思い出した。玲菜に、あのことを言うのをすっかり忘れていた。
「玲菜、忘れてたんだけどさ」
「うん?」
「大切なことがあったんだよ。すっごく大切なこと」
「え? な、何それ?」
大切なこと。好きですの次に言う、とてもとても大切なこと。
「玲菜」
玲菜の手を取り、目を見て、そして・・・言う。
「俺と、付き合ってください」
・・・かくして、殺し屋である玲菜は、
「・・・! うん!」
ターゲットである刹那に、
「よろこんで!」
・・・恋をしたのだった―――。
やっとこ終わりました。
これにて殺し屋、閉幕にございます!!
みなさん! 今までありがとう!
・・・嘘です! まだ続きます!
4月のエイプリールに何もしなかったので、これはちょっとしたどっきりということで(笑)
とは言ってもです。これでとりあえず一区切りついたことには間違いありません。
刹那と玲奈は結ばれ、これからもあの家で一緒に生活していきます。
それなら・・・これからどんな話をやるんだい? ということになります。
やっぱり刹那と玲奈の日常?
・・・いえ、違います。
じゃあ、何でしょうか・・・・・?
・・・とりあえず、10日後にわかります。
5日後の次の更新日は番外編ということで1話出しますので・・・。
とにかく、まだまだ続きますとだけ言わせてください。
応援していただけるとありがたいです。
これからも「殺し屋」よろしくお願いします!