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第108話 命の重さ、本当の気持ち

「話、終わったみたいね」


居間に入ってきたのは、何やら満足そうな顔をした里奈。・・・この表情からして、たぶん全部聞いていたのだろう。


「あなたたち2人に話があるわ。・・・さすがに抱きつかれままだと話しづらいわね。離れてちょうだい」


「あ、はい」


「う、うん」


里奈に言われ、刹那は腕の中の玲菜を解放し、玲菜もそそくさと恥ずかしそうに刹那から離れた。

里奈がイスに座り、そして話は始まった。


「わかってるとは思うけど・・・さっきのは聞かせてもらったわ。ちょっと悪いかなっては思ったけどね」


「はぁ・・・それで、話っていうのは」


「2人のこと、よ」


満足そうな表情から一変、真剣な表情をして里奈は話し始めた。


「本当言うとね、この結果は予想してなかった。悪くてケンカ別れ、良くて仲直りしてさようならって思ってたから、2人がくっついちゃったのはちょっと意外。

 確認するけど刹那、あなたは玲菜のことが好きなのよね?」


「はい、好きです」


「それは、玲菜の『殺し』も受け入れる、ってことね?」


つまり、里奈の言っていることはこうだ。


玲菜のこと全て・・・今まで生活してきた玲菜はもちろん、人の人の命を奪っているという事実も、全部好きになれるのかと、里奈は聞いているのだ。


「受け入れます、全部」


迷いなんてなかった。訊かれてすぐ、刹那は答えていた。


「本当に受け入れるのね? 玲菜が奪ってきた命を、何も関係のないあんたも一緒になって背負うことになるのよ? それでいいの?」


「・・・・・」


「命っていうのは、あんたが考えてるほど軽いものじゃない。それを、玲菜は数えきれないくらい奪ってきてるの。もう1人じゃ背負いきれないくらいのね。


 でも、玲菜がここまでやってきたのはあたしたちがいたから。同じように命を奪ってる人間が互いに支え合ってるからここまできた。


 でも、あんたはそれを受け入れるって言っている。命を奪うことの重みを知らないあんたが、玲菜を支えるって言ってる。・・・あたしらから言わせてもらえば、口先だけ綺麗なことを言ってる風にしか聞こえないの。悪いけどね」


口先だけ。命を奪うことの重みを、刹那は知らない。






・・・本当にそうなのだろうか。






いや、もちろん刹那は人を殺すなどということはしてなどいない。それどころか、人に暴力を振るう真似だってしていない。人を傷つけるなどという記憶は、刹那の中に存在していないのだ。


そうなると、命を奪う重さを刹那は理解できていない。・・・ことになるはずなのだ。






それなのに、なぜだろうか。






遠い遠い昔に、人の命を奪ったような気がする。






それは本当に記憶に残っていない昔のことで、そのことを断定できる要素は1つもないのだが・・・わかる。確かに、刹那は人を殺した。






そんなことわかるわけがないのに、わかっている。






・・・なぜだろうか。






「? 刹那、聞いてんの?」


「・・・あ、すみません。ボーっとしてました・・・」


「・・・まぁいいわ。結構深刻そうな顔してたし」


「すいません。それで・・・里奈さんは結局何が言いたいんですか?」


「言いたいっていうか、聞きたいのね。はっきり言って、玲菜はあたしたちの宝物、自分たちの命より大切なの。どんなことをしても守るし、この子の笑顔を奪うようなやつはためらいなく殺す。それくらい大切な子なの。


 それを取っていくんだから、それ相応の言葉をもらいたいわけよ。あたしもお父さんもシリスさんも、みんながあげてもいいって思える言葉をね」


「お姉ちゃん、それだとあまりにも―――」


「『不公平』って言いたいんでしょ? そりゃ、どんなこと言っても『納得できない』って言っちゃえば不公平だけど、あたしだってそこまでひどいやつじゃないわよ。ちゃんと納得できれば、味方になるわ。心から納得できればね」


「で、でも・・・!!」


「いや、大丈夫だ玲菜」


ぎゅっと手を握り、玲菜を見る。・・・玲菜を不安がらせるわけにはいかない。なるべく胸を張れ、安心できるって思えるように振る舞え、そうすれば大丈夫。


刹那の態度を信じることにしたのか、玲菜はそれ以上里奈の提案に抗議しようとはしなかった。


・・・落ち着いて、考える。


簡単だ、玲菜を好きになった理由。それをうまく話せばいいだけだ。納得させようと思って考えるな、逆に納得させられない。本心をぶつければいい。


理由・・・玲菜を好きなった理由・・・。


なぜ玲菜を好きなったのか、どこを好きになったのか、それを考える。考える。考える―――。





・・・そして、里奈に話すことが決まった。理由がわかった。





考える時間は短かった。でも、長い時間をかけて考えても意味がないような気がした。・・・好きになった理由など1つしかないからだ。だから、思いついた理由がどんなに短い時間の中で生まれたとしても、それがただ1つの真実。紛れもない、本当の理由なのだ。

その理由を、里奈に伝える。




里奈の目を見つめ・・・口に出して言う。





あと2話で一区切り・・・です。

これからも「殺し屋」よろしくお願いします!

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