第106話 想いを
心を落ち着かせ、何度か深呼吸をする刹那。
今か今かと待ちわびる中、そのときはついにやってきた。
「刹那、あたしらもう行くから」
「・・・・・」
身支度を終えた2人が、開ききったドアの前に立っていた。・・・準備はもうすでにできており、あとは本当に出て行くだけ、という感じだった。やってくる時も帰って行く時も、いきなりだったな、とふと思ってしまった。
「はい、ごくろうさまでした。これからもお仕事、がんばってくださいね」
「ありがと。・・・ほら、玲菜。あんたも何か言いなさい」
肘を使い、里奈は玲菜を促す。
「・・・・・」
だが、玲菜は俯いたまま何も言おうとしない。唇を噛んで、ただ何かに耐えていた。
何度か里奈が肘でつつくが、時間の無駄だと思ったのか、溜息をついて言った。
「・・・何も言わなくていいみたいね。それじゃ玲菜行きましょ」
「・・・・・」
無言のまま玲菜は頷き、2人とも居間を後にしようとする。
だが、
そうはさせない。
このまま何も言わず行かせてしまうなんて、
冗談ではない。
「玲菜」
刹那が名前を呼ぶ。
驚いたように玲菜は刹那のほうを見る。
「話があるから、ちょっとだけ時間をくれないか?」
「・・・・・」
玲菜は何も答えず、どうしたらいいものか、と里奈に視線を送る。
里奈は少し笑って言った。
「いいんじゃない、ちょっとくらい。あたし外で待ってるから、終わったら来なさい。いいわね?」
「うん」
玲菜の言葉を聞くと、里奈は満足そうに外へと出て行った。
・・・舞台は整った。玲菜と2人きり。自分が望んだ状況。あとは、自分さえちゃんとすればいい。ここでしぐじらなければ、大丈夫。
「・・・話って、何?」
「うん、今から話す」
玲菜は立っている。立ってこちらを見つめてきている。
それならば自分も立たなければならない。玲菜と同じ高さで、同じ目線で、このことを言わなければならない。
テレビを消して、いすから立ち上がる。・・・いよいよだ。心臓が踊る。緊張するが、言うしかない。いや、言いたい。『それ』しかないんじゃなくて、『そう』したい。
落ち着いて息を吸って、言いだす。
「一晩さ、っていっても夜中ずっとじゃないけど、考えたんだ」
初めの言葉はこうだと決めていた。だって考え込んだのだから。理恵とけんかしたときよりも、もっと一生懸命悩んだのだから。
「何、を?」
「玲菜のこと」
たった一言。それだけなのに、玲菜の表情に変化が見られた。
「玲菜といると、落ち着いたり、姿を見ると何だかにやけたり、笑顔を見るとどきどきしたり・・・最初から会った時からずっとそうだった。会って間もなくて、大した時間もなかったのに、そうなってたんだ」
「・・・うん」
「それで、どうしたこんな気持ちになったか考えた。一生懸命。一晩中考えてもよかった。それで答えが出るんだったら。でも、答えはあっさり出たんだ。笑えるくらい、単純だった」
「・・・うん」
一瞬間を置いて、言った。
「・・・好きなんだ」
「・・・え?」
「俺、玲菜のことが好きなんだって、やっと気がついたんだ。だから、伝えたかった」
言った。伝えた。やっと気がついたこの気持ちを、玲菜に伝えることができた。・・・胸の鼓動がもう大変なことになっていた。想いを伝える・・・告白することが、こんなにも緊張するとは思わなかった。
「・・・・・」
玲菜は何も言わなかった。ただ目を見開き、本当に驚いた表情で刹那の顔を見ているだけだった。
何か喋ってくれるとありがたかったが、口を開こうとしない。全て言ってしまった手前、これ以上話すこともためらわれた。・・・玲菜が口を開かなければ先へは進めない、ということだ。
無言のまま、玲菜の答えを待つ。永劫とも感じられる数秒のあと、玲菜はようやく口を開いた。
「・・・どうして、今さらそんなことを言うの。私、もう行かなくちゃいけないのに、帰らなくちゃいけないのに・・・どうして、別れ際にそんなこと言うの」
問いかけではなかった。訊いているのではなく、そう呟いただけだった。
「今さらじゃなくて、今だからなんだ。気がついたのは本当に昨日だったから。もっと早い段階で気がつけばその時点でこのことを言ってた。そのことは・・・謝る。気がつくのが遅くて、ごめん」
「違う・・・そんなことを聞いてるんじゃない。そんなことを言って、今さらどうしたいのって聞いてるの」
どうしたい? ・・・簡単だ。
それを今から言う。・・・さっきまでのは単なる前振り。本当に言いたいことではない。昨日刹那が導き出した答え・・・・それは、
「居てほしい」
「居て、ほしい・・・って、どこに? この家?」
間違い・・・ではない。だが、正解でもない。本当に居てほしいところはたった1つしかない。
「俺のとなりに居てほしい。ずっと居てほしい」
「え・・・・・」
戸惑っている玲菜。
今言われたことを完全に理解する間もなく、刹那は続ける。
「もう1度言う。俺は玲菜が好きだ。だからここに居てほしい。残ってほしい。俺が出した結論が・・・これだ」
・・・全て言った。自分の気持ちをすべて伝えた。あとは玲菜がどう返事をしてくれるか、それだけだ。
・・・何といいますか、
このサイトで書いておられる方ならわかるかもしれませんが、
執筆中小説一覧 の中が大変なことになってますね。
・・・書きすぎました(笑) 夢中になるとすごいですね。
もう1ヵ月以上先の分まで書きあげちゃいました。
うぁ〜・・・
早くお見せしたいなぁ〜・・・
・・・でも規則は規則ですからね。ちゃんと5日ごと更新です。
私も守らなければ!!
・・・早く出したいなぁ。
これからも「殺し屋」よろしくお願いします!