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第101話 さようなら・・・?

瞬間、銃口から紙テープやら紙吹雪やらが飛び出た。・・・誕生会とか、何かのパーティで使われるクラッカーを連想させる仕組みだった。


「・・・・・え?」


突然の出来事に、刹那はもちろん玲菜も里奈も目を丸くしていた。今起こったことが理解できない、といった感じだった。・・・今まさに人が死ぬと思っていたのだから当然だ。


「えっと・・・その・・・申し訳、ありません。その・・・冗談のつもり、だったのですが・・・」


申し訳なさそうに、シリスがぽつりぽつりと言葉を漏らす。・・・銃から飛び出た紙テープと紙吹雪。そしてシリスの言葉。・・・一同がその意味を理解するのに、そう時間はかからなかった。


「えっと、シリスさん。一応確認したいんですけど・・・」


「はい・・・」


「俺は・・・助かったんですか?」


「はい・・・。ほんの冗談のつもりでやったのですが・・・まさかこんなこんなことになるなんて思わず・・・申し訳ございませんでした・・・」


一瞬ぽかんとなる。・・・あの真面目なシリスがこんな冗談を言うとは思わなかった。すっかり騙されてしまった。


「あ、あはは、あはははははは」


突然、里奈が腹を抱えて笑いだす。その意味を知らない3人は、呆気に取られてしまう。


「あはははは、なぁ〜んだ。やっぱり無実だったのか、あははははは」


ぽいっと、里奈は手に持っていた小さな黒い物体をテーブルに投げ、そしてまた笑いだした。

よく見るとその黒い物体は・・・小型の銃だった。おもちゃと言われれば本当にそうだと信じてしまうくらい小さなものだった。


「お姉ちゃん、それ・・・」


「あぁこれ? シリスさんが撃ったらこれで弾撃ち落とそうと思ったんだけど・・・余計な心配だったわよ。まさか紙テープ出るなんて思わなかったもの。あはははは」


「それじゃ、やっぱりお姉ちゃんも信じてたの?」


「まぁね。こいつがそんな大それたことできるわけないでしょ」


「・・・・・」


ぺたり、と玲菜はその場に座り込んだ。そしてそのまま刹那を見て・・・泣き出した。


「う・・・うぇ・・・」


「お、おい玲菜、どうして泣くんだよ?」


「よ、よかった・・・本当によかった・・・ひっく・・・」


「玲菜・・・」


「もし死んじゃったらどうしようって・・・ひく、思って・・・そんなの、ぐす、絶対嫌で・・・うぅ・・・」


言いきった玲菜は、涙をぽろぽろと流して思いきり泣いた。

心配してくれたのだろう。こうやって刹那のために泣いてくれるくらい。


こんなこと思ってはいけないのかもしれないが・・・嬉しかった。自分なんかのために、こうやって泣いてしまうくらい心配してくれて、無事だとわかったら助かった刹那自身よりも安堵している。嬉しくないはずがなかった。


「えっと・・・それでは詳細のほうをお話したいと思います」


ごほん、と咳払いをし、シリスは取り繕うように話し始めた。


「情報収集班を呼び戻したABK社は、すぐさま私たちが頼りにしている情報屋に探りをいれました。かなり時間はかかったものの、確実な証拠を掴むことができました」


「それで、その確実な証拠って何よ? シリスさん」


腕組みをしたまま、シリスに尋ねる里奈。・・・こんな真面目な表情の里奈は初めて見た。それだけ、今回の事件は重要だということなのだろうか?


「書類です。複雑で半分恐喝のようなものでしたが、簡単に申し上げますと、刹那様の情報だけを改ざんし、それをABK社に渡せ、というものでした」


「恐喝? それってどういうことなんですか?」


「情報屋の最大の売りは情報の確実さです。それがなければ客は離れ、悪意を持って行った情報屋は、誤った情報を流した『けじめ』として私たちのような殺し屋に消されます。それを防ぐために、情報屋は手に入れた情報をありとあらゆる方法を使って確実性を上げるわけです。

そしてその書類の内容は、この書類の通りに従わなければ・・・・・消す、というものでした」


「そりゃずいぶん古典的な脅し文句ね。で、犯人の目星はついてるんですか?」


「『まだ』ついておりません。ただし、情報収集班が活躍してくれておりますので、わかるのは時間の問題かと」 


「な、なるほど。・・・えっと、シリスさん。ちなみに間違った情報を流した情報屋ってどうなったんですか?」


「本来ならば消すところですが、今回は恐喝という事実がありましたので不問にいたしました。刹那様が言ってくだされば今からでも消しますが・・・いかがなさいますか?」


「い、いいえ! 結構です!」


慌てて手を振り、必死になって刹那は断った。


「そうですか、わかりました」


「まぁなんにせよ、助かってよかったじゃないの。うちの会社に感謝しなさいよ?」


「しますよ、当然」


里奈が笑う。・・・なんだかんだ言っていても、やはり刹那が助かったことが嬉しいのだ。いざとなったら助けてくれたらしいし・・・。


「刹那様、実はもう1つお話があります」


「はい」


「玲菜お嬢様も、里奈お嬢様も聞いておいてください。お2人にも関係のあることですので」


先ほどよりは少しは柔らかくなった表情のシリスが、再び口を開いた。


「刹那様は晴れて無実となりました。まずは疑ってしまったこと、殺しかけてしまったこと、その他色々な迷惑をかけてしまったことを謝罪させてください。本当に申し訳ありませんでした」


「あ、いえ。それよりもお話というのは」


「はい、玲菜お嬢様と里奈お嬢様は、本来刹那様を監視するためにわが社から派遣された、ということになっています。しかし刹那様の容疑が晴れた今、お2人がここにいる意味はない、ということになります」




「それはつまり・・・・・」




シリスは、メガネを指ですっと直してから、たった一言だけ言った。




「お2人をこの家から撤収させていただきたいと思います。もはや、この家にいても仕方ないのですから」





これからも「殺し屋」よろしくお願いします!

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