第100話 答えは・・・
シリスを中に入れ、一同は居間へと集められた。
いつもなら喜んで話しかける玲菜も、嫌な表情をする里奈も、今回はシリスの真剣な表情と雰囲気に気押され、いつものように気軽に話しかけることができなくなっていた。
そして刹那は・・・手をぎゅっと握ってっただただシリスの言葉を待っていた。・・・これからシリスの口から出る言葉は、刹那にとって死刑宣告と言っても過言ではないのだ。たった一言で殺されるか、延命されるか決定される。それを待つ者が緊張しないわけがない。
シリスはなかなか喋らなかった。喋ったのは、玲菜と里奈に言った、「お話があります」の一言だけ。
無言で重い空気を、最初に破ったのは里奈だった。
「シリスさん・・・刹那のこと決まったんですか?」
「知っていらしたのですか」
少し驚いたように、シリスは言った。
「知ってたってわけじゃないですよ。シリスさん、いつもより真剣な顔してるし、刹那も怯えちゃってますから、そうじゃないかなって」
「・・・なるほど」
「シリスさん、それで・・・刹那はどうなるの?」
玲菜が心底心配そうな表情でシリスにそう聞いた。
シリスは一度だけ頷いて、刹那に話しかけた。
「刹那様」
「は、はい」
「これからお話しいたしますが・・・よろしいですか? それとも、もう少し時間があったほうがいいですか?」
さっきから一言も喋らなかったのは、刹那に心の準備をさせるためだったのだと、そこで刹那は理解した。・・・もっとも、その時間はとても緊迫したものであって、心の準備をする余裕などなかったのだが。
「・・・・・」
心の準備・・・できるわけがない。はい、と答えたのならば、その瞬間自分の周りの殺し屋によって物言わぬ死体となってしまうかもしれないのだ。いつまで経っても、心の準備などできない。できることならば、このまま逃げてしまいたいくらいだ。
・・・だが、そんなことをしても意味がない。逃げるだけでは解決しない。
「・・・できました。お願いします」
そうだ。ここで一時逃げたとしても、いずれは向わなければならない。それに、ここで逃げたら刹那がさも悪いことをして死ぬのを恐れている、という風に取られてしまうかもしれない。・・・刹那は何もしていないのだ。逃げる必要はない。
「それでは、発表いたします」
居間に緊張が走る。
「これが・・・答えです」
そう言うとシリスは・・・・
懐から銃を取り出し、それを刹那に向けた。
「え・・・!!」
向けられた意味は・・・・・ただ1つ。
「そんな! 刹那はそんなことしない!! しないよシリスさん!」
半狂乱になりながら、叫ぶようにして玲菜が言う。
「玲菜、もう決まったことなの」
「でも! お姉ちゃんもそう思うでしょ?! 刹那は悪い人じゃないよ!」
「・・・・・」
玲菜が答えを求めても、里奈は答えない。下を向いたまま、口を開こうとしない。
「ねぇ! 何とか言ってよ!! ねぇ!!」
「静かにしなさいッ!!」
里奈の激昂に、玲菜は思わず身を縮こまらせた。
「・・・いいから黙りなさい。あたしたちは、上の言うことを信じるしかないの」
「そんな・・・そんなことって」
「・・・シリスさん、どうぞ」
必死になっている玲菜を無視して、里奈はそうシリスに促した。
「わかりました。それでは刹那様、お覚悟を」
たった一言そう言って、シリスは引き金に指をかけた。
・・・刹那は、今死ぬのだというのにもかかわらず、自分でも驚くくらい冷静だった。あぁ死ぬんだな、とパニックになることもなく、素直にその結果を受け止めていた。
やっていないのにも関わらず、理不尽に殺されることに対する怒りも湧かなかった。こうなるのが運命だったのだと、そう思った。・・・この人になら、別に殺されてもいいかな、とも。
「・・・何か言い残すことはありませんか?」
シリスがそう言う。・・・ある。言いたいことならたくさんある。ただ、ありすぎて何を口にすればいいのかわからなかった。どれを優先すべきか、判断できなかった。
「ない、です」
「そうですか。それでは・・・」
シリスが、引き金を引いた。
「刹那ッ!!」
玲菜の悲痛な叫び声のあと・・・
パァン!!
乾いた音が、部屋の中に響き渡った。
いつの間にか100話切ってしまいました^^;
本当にあれ? いつの間に? という感じなので・・・
これといって特別な企画等は用意していないんですよね・・・申し訳ないです。
思えば・・・長いようで短かったです。アクセス数が増えて喜び、ご感想がくれば喜び、etc・・・
そんなこんなでここまで来ました。・・・でもまだまだ先は長いんだなこれが・・・。
これからも「殺し屋」よろしくお願いします!