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第10話 慌しい朝の時間

「ん・・・・・」


目が覚めたら、いつの間にか朝になっていた。カーテンの隙間から明るい光が差し込んできて、刹那の目を眩ました。

数回目をパチパチさせ、枕元にある目覚まし時計を手に取る。時間は、


「7時20分・・・」


ちなみに、刹那の家と学校の距離は遠いほうだ。自転車で30分、徒歩で約1時間。それでもって、朝のミーティングは8時ちょうどに始まる。

つまりは、結構まずい時間だったりするわけで、いつまでも寝ているわけにはいかないということで、何が言いたいかというと、その、遅刻の可能性が非常に高いということで、


「・・・・うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」


意識がやっと覚醒した刹那は掛け布団を蹴っ飛ばし、すぐさま寝巻きを脱いで制服に着替える。こういうときにワイシャツの袖口のボタンがうまくつけれないのがもどかしい。・・・えぇい、こんなもんあとでいい。

ブレザーを着ると、ドアを開けて急いで階段を降りる。っと、階段を踏み外すところだった。危ない、危ない。

時間がやばいので朝食は抜くことにする。居間には玲菜と里奈がいるだろうが、今はいってきます、と言う時間も惜しい。ここは黙って出て行くことにする。

靴を履いて、ドアに手をかけて、よし行くぞ!!


「ちょっと待ち」


「ぐぇ!!」


里奈に襟を掴まれて、刹那は首を締め付けられる形になった。里奈は構わずそのまま刹那を自分のほうに向かせて言った。


「あんた、私の玲菜ちゃんが作った素晴らしい料理を食べないばかりか、いってきます、の言葉なしに家を出て行こうってどゆことよ?」


「は、離してくださいって!! 遅刻しちまう!!」


「? あなたね、まだ6時半よ?」


・・・・・・・え?


ちょっと襟を掴んでいた里奈に手を離してもらい、靴を脱いで自分の部屋に戻って時計を確認して見る。・・・・・・時刻は、先ほどと全然変わっていない7時20分。

この目覚まし時計はアナログである。電池が切れたら表示されなくなるデジタル時計とは違い、電池が切れたら切れたときの時刻のままストップしてしまう。つまり、この時計は昨日の7時20分に止まったということであり、刹那が慌てて支度したのは何というか・・・


「何ベタなミスしてんだ俺はぁぁああああああああああ!!!!!」


頭を抱えて自分のミスに悶絶する。


「・・・あのさ、いいから早く居間に行かない? ご飯できてるよ」


ドアのところで、遠慮がちに里奈が刹那に声をかけた。そうだ、こんなところで悶絶している場合じゃなかった。居間に行けば、玲菜が朝食を作ってくれている。早く行って食べなければ!


「よし、じゃあ行きましょうか」


「はいはい」


里奈と一緒に階段を降り、居間へと向かう。

さっきは気がつかなかったが、いつの間にか辺りは味噌汁のいい匂いが漂っている。その匂いは刹那の鼻から脳に伝わり、今自分は腹が減ってるんだなぁ、と感じさせてくれた。

居間に入ると、もうテーブルの上には朝食が並んでいた。今日はご飯、味噌汁に焼き魚。魚は鮭だ。いい具合に焼けていてとってもおいしそうだ。


「あ、やっと来た。2人とも、早く座って座って」


「は〜い! ・・・ほら、早く座りなさいよ」


「わかってますよ」


よくもまぁここまで態度が変わるものだ。それだけ玲菜が可愛いということなのだろうが、行き過ぎた愛情はかえって大変なことを引き起こしかねない。・・・昨日、何もなかったのだろか?ちょっと心配だ。


「みんな揃ったね。それじゃ、いただきま〜す」


「「いただきま〜す」」


一同は一斉に玲菜の作った朝食に箸を伸ばした。ご飯もうまく炊けており、味噌汁だってだしがおいしい。魚も旬のものを選んできたのか、脂がのっていてとてもおいしかった。この魚は、・・・えぇっと、何だっけ? 


あじ、だよ。ちゃんと焼けてる?」


「うん、ちゃんと焼けてる。おいしいよ」


「そっか。うまく焼けててよかった」


そう言うと、玲菜はにこっと笑顔を浮かべた。その顔はとても嬉しそうで、とても可愛らしい最高の笑顔だった。・・・やべぇ可愛い。


「玲菜ちゃん、その笑顔可愛い!!」


「ちょっ!! お姉ちゃん!! 食事中にそんなことしないの!!」


テーブルを越えて抱きつこうとした里奈に玲菜が注意をし、しょんぼりした里奈はむ〜、と唸って大人しくご飯を食べ始めた。

食事は賑やか、とまではいかないが、結構盛り上がったようだった。やはり、刹那と玲菜の会話が長続きし、それがどんどん展開していく。里奈も大半は会話に入るのだが、そのたび玲菜に抱きつこうとして本人に怒られていた。なんにせよ、平和な食卓だった。・・・殺し屋とそのターゲットが一緒だとは、とても信じられなかった。

朝食が終わって時計を見ると、ちょうど良い時間になっていた。今から家を出れば歩いてだって十分間に合うかもしれない。それどころか、ちょっと寄り道をしたって平気な感じがする。・・・今日はコンビニでゆっくり昼飯の弁当を決めれそうだ。


「あ、待って刹那」


鞄を持って玄関先に出ようとする刹那を呼び止め、玲菜は少し大きめの箱をハンカチで包んだものを持ってきた。・・・この形状、どこか遠い昔見たことがあるような気がする。


「お弁当作ったから持っていって」


「あ、作ってくれたのか?」


「うん。どうせ学食かパンのどっちかでしょ? ならいいじゃない。食費が浮くし、何よりも私のお弁当のほうが栄養あるし」


自信たっぷりに言うが、本当のことだ。食費が浮くし、玲菜の作ったものだから栄養もちゃんと考えてあるだろう。・・・たった2日程度過ごしただけでわかってしまう、というのが、何だか不思議だった。


「玲菜ちゃ〜ん、あたしの分はぁ〜?」


「お姉ちゃん・・・私と一緒なんだからお昼ご飯があるでしょ? お弁当なんてないよ」


「ひ、ひどい!! お姉ちゃんを差し置いてこんな男だけに弁当を!! ・・・ちょっと刹那、あんた弁当あたしに渡しなさいよ」


「お姉ちゃん!! 刹那を怖がらせないの!!」


「ははは・・・」


引きつった笑顔を浮かべながら、刹那は玲菜特製弁当をいそいそと鞄の中に入れた。

もう一度ちらっと時計を見る。・・・まだ大丈夫だ。コンビニで弁当を選ぶ手間が省けたからまだ余裕がある。

刹那は今度こそ学校に行くため、玄関のほうへ歩いていった。


「じゃあ行ってくるよ」


「うん、いってらっしゃい」


「寄り道するんだよ〜」


「ちょっと待って?! 普通「寄り道しちゃ駄目だよ」じゃないか?!」


「だって、そうすればあたしと玲菜ちゃん2人きりの時間が増えるし〜」


「あんた自分本位すぎだよ!!」


「うっさい! 早く行け!」


「逆ギレかよ!!」


文句を言いながら、刹那は玄関へと向かった。

・・・靴を履いているとき、玲菜と里奈のいる居間からこんな会話が聞こえてきた。


「・・・? あれ? 玲菜ちゃん、時計遅れてない?」


「あ、本当だ。テレビと時間が合ってないね。30分も遅れてるよ。ちゃんと治しておかなきゃ」


・・・・・遅刻は決定だった。


新キャラは次回からでした。すみません。次は刹那が学校へ行くお話です。

これからも「殺し屋」よろしくお願いします。

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