第三話 北極
前回のあらすじ
クロスとの喧嘩、そして和解。挨拶も無事済ませることができ、いよいよ北極へと出発したのであった。
二日ほどして北極に辿り着いた。道中は何事もなく済んだ。寒さも天地の衣で緩和されている。ロロは別段寒そうにしていないので大丈夫だろう。錬金する際にあらゆる環境に対応できるようにしてあるからな。呼吸をする時に、空気が寒いためそこだけが問題だ。これに慣れるため三日間野営をする。食料は無くても問題はない。が、ロロが魚やらを取ってきてくれる。
「ご主人は強いな。体は人間とあまり大差ないと言うのに」
「強くはないさ。天地の衣のおかげだ」
「それを差し引いても。普通ならもう少し重装備でいいぐらいだ」
「これ以上重くすると戦闘に支障が出てしまう」
「それもそうか」
一日目が終わり、俺はテントで寝ようとする。まだ、体が慣れない。次に起きたら上手く動くだろうか。少し心配だな。
しかし、その心配は杞憂に終わり、いつも通りの時間に起きた。デグラストルとの時差には慣れた。ただ、いくら寒さに強くても初めは衣自体が凍っていたためにバリバリと氷を落としたがな。手袋も固まって少しヒビが入ってしまっているな。
「あと二日だ……」
鈍らせないように今日の鍛錬を開始する。昔からずっとやっていることだ。怠ることはない。
「精が出るな」
「ああ。これでいつもの動きになれば行動を開始する」
「飯を取っておいた。好きな時に食べておいてくれ」
「助かる」
ロロはどことなく俺の話し方に似ているな。俺が作ったというのもあるかもしれないが。
「ところでお前はどこまで付いてこられる?」
ふと問いかけてみた。何も最後まで共に戦ってほしいとは考えてはいない。
「ご主人の行き着く先まで」
しかし、こいつはこう答えた。ま、俺の作ったものだしな。
「俺の行き先は遠いぞ」
「それでも、付いていくだけさ」
「……ふっ」
思わず笑いがこぼれた。
「それじゃ、俺は鍛錬の続きでもする」
「ああ」
そして、刻が来た。いよいよ彼のいるところに突入する。
露骨に氷で出来た牙城。どうやって作ったかは知らないが、ここにあいつはいる。
「準備はいいか?」
「無論だ。……ところで、俺はこの中に入れそうにないが」
「それなら、お前は小さくなれるようにしてあるから、念じてみろ。自身が小さくなった姿を想像すればいい」
「……」
言った通り、ロロは手の平に乗るくらいの小ささになった。
「小さすぎではないか?」
小さくなったにつれて声が少し高くなる。
「いや、これでいい。フードの中に入っててくれ」
「了承した」
すっぽりフードにはまる。丁度いい大きさだ。重くもないので首を締め付けられることもない。
「さて、行くか。最後の戦いへ」




