第一話 エレメンタル
前回のあらすじ
夢に、皆で勝利した。皆、強くなった。こいつらがいることを俺は誇りに思う。俺だけが戦っているわけじゃないということを心に刻んでくれる。
夢の件から数日後、世界は再び危機状態に陥る。海は溶岩となり、雨は石となり、あらゆる国は滅び、全ての生物が、今息絶えようとしている。
やはり俺はその中で健在である。しかし今度に限りレンは死にかけている。他の皆も同じだ。
「確実に終焉へと向かっている……何故俺は休息を得ることができない」
俺は、今まで以上に怒りを覚えていた。なにせ大切な家族が死ぬ直前である。まともに話すことなどできない。話せないまま死にゆくことなど俺はさせない。ここで終わらせるわけにはいかない。そう思った俺はすぐさま原因の場所へと向かう。その前に。
「クロス……」
彼女に接吻をする。冷たい、感触も硬い。
「……」
息子を抱きしめ、二人をベッドで寝かせた。
「行ってくる」
天地の勇者というのは、本当に都合のいいものだな。
装備を整え、窓から飛び出した。落ちながらセンサーを展開、魔力を察知するとその付近に以前行ったことがあるため、そこに転移術を発動し、降り立つ。
その場所は光の国付近の火山だった。あの滅国龍と戦った火山。その麓から魔力を感知した。俺が降り立ったのは頂上だ。
「まずはこの天変地異をどうにかする必要があるな」
俺が近付いたと相手がわかれば噴火を容赦無くしてくるだろう。それをさせる前にあることをする。
火、水、風、土。所謂四大元素の宝玉を使う。ここでの土は地であるが。これらを駆使して世界を元に戻す。
「地水風火・リバースエレメンタル」
瞬く間に世界は元に戻った。だが、生物は元には戻らなかった。近くにいる死にかけの虎は相変わらずそのままである。あくまで無機質なものだけか。
「さて……行くか」
宝玉を取り外し、万全の態勢で麓に行った。
穴がある。そこから魔力が発せられている。中に入ると魔法陣が沢山散りばめられており、恐らく罠だと考えた。が、何も発動せず、ただの光源だとすぐにわかった。
「そこにいるんだろう? 貴様のどす黒い魔力がはっきりと伝わってくる」
人型の真っ黒なそれは口を開いた。
「ほぅ……まだ動くものがいたか……つまり、天地の勇者。我の最大にして最悪の敵。だが、我からすれば赤子のようなもの」
「なんだと……?」
いつの間にか広い場所に来ていた。魔法陣による光が差し込み、辺り一面が眩しい。
「無駄口を叩くつもりはない……さっさと汝を止め、世界に終止符を打たねばならぬ」
「何者だ、貴様は」
その問いに奴は応える。
「我は邪神、世界の原初の存在にして概念。形を持ち、形を持たぬもの。全ての始まり、全ての終わり」
今回の構成は前回の構成と全く同じです。理由はいずれまた。




