第二話 敗北
前回のあらすじ
世界は暗転した。俺とレンだけが目を覚ましている。他の皆は目覚めることはない。原因を追及すべく、俺は怪しい光を放つ洞窟へ入る。
洞窟の奥に進むと空間が広がり、ドーム型になっていた。眩しく、ここが光源だとわかった。ここから反射して入口まで光らせているのだ。
そこに、大きな物体が見えた。黒く、醜い。こいつが今回の根源か。さっさと壊して終わらせよう。
しかし、殴った瞬間、オーラによって弾かれた。ならば、叩っ斬るだけだ。
「……?」
それもまた弾かれる。力の問題ではないようだ。そう思った瞬間、物体が動き出した。ここは一度引く。一体何が起きようとしているのだ。
物体はやがて太った人のような形となる。黒いマントを羽織り、顔は骸骨であった。こいつ、物体ではなく生命体か。
そいつは話し始めた。
「俺を目覚めさせたな……」
「お前、何者だ」
「名乗るつもりはない。それよりも貴様は俺の力に飲み込まれなかったか。そうか、貴様が天地の勇者。俺の相手に相応しい。暇つぶしに付き合え」
何を企んでいる。俺を暇つぶし相手だと?
「どの道、俺を倒さない限り世界は元には戻らない。お前の選択肢は一つしかない。さぁ、来い」
言われずとも、始めからそのつもりだ。だが待て、こいつに天地の剣は通用するのか? いや、宝玉を使って砕いてやる。
こいつは他人に悪夢を見せる能力がある。なら、同属性である夢と幻の宝玉は効かないだろう。まずは、マシーンブレイドで動きを撹乱し、そこでレイガリングと風の宝玉を入れた天地刀で斬る。これで様子見をする。
時空間転移術を多量に発現する。マシーンを展開し、様々な方向から攻撃を繰り出す。
「面白い……」
奴は動かず、ただじっと耐えていた。否、耐えてなどいない! 効いてすらいないのだ。
「この野郎……!」
すかさず剣を切り替え、天地刀の風の力を借り、勢いをつけ、力の限りレイガリングを振る。だがこれも効かない。
「ちっちっ、無駄だ」
振り切っているため、隙ができた。そこに奴は己の拳で俺の腹に当ててきた。
「がはっ……」
ここまで攻撃が効かない敵は初めてだ。
奴の動きは止まるつもりはなかった。咄嗟に腕を出して防御、連打攻撃に耐えようする。
終わりが見えない。奴の体力はどうなっている。遂に俺の腕は摩擦で擦り切れ、やがて消し飛んだ。三つの剣はあらぬ方向に飛んでいき、後は天地の剣しかない。
そして回し蹴りを顔に直撃される。回転しながら転げた。
「ぐぅ……!」
即座に腕を再生する。顔の傷も治す。
「面白い体だ。だが、弱点を見つけた。お前は終わりだ」
「俺に、弱点……だと」
今まで俺は単に弱点を察せられる前に敵を倒していただけ。こいつは冷静に俺を分析している。
「実に簡単だ。貴様のその如何にもな胸にある核。それを破壊すればいいだけのこと」
「っ……!」
「終わりだ」
黒い槍を創り出し、投げつけてきた。避けようとするがその槍は重力を持っているのか引き寄せられる。ならば、再び腕を犠牲にして止める。
ザクッ‼︎ と、痛々しい音が響く。腕を貫き、核に直撃していた。
俺は気づくべきだったのだ。ただ単に今まで核に攻撃が当たっていなかったことを。運でたまたま喰らわなかったことを。不死身を過信し、どれだけ攻撃を受けても死なないと考えていたことに。
「……」
体が動かない。傷は回復しない。これが、死。
「滑稽だな、ふっ、ふはははは‼︎‼︎」
目がぼやけてきた。視界は暗黒に包まれ、身体が腐り始めるのを感じた。
これが本当の敗北。本当の死。呆気ない終わりだったな。絶望はしなかったが、世界は終わりを迎えるのだろう。
一縷の希望もなし。
全ての終わり。




