第一話 悪夢
前回のあらすじ
クロスの孤児院にいた頃の話を聞く。それは重いものではあったが、今では幸せそうだ。
それは突然やってきた。数日後、世界は暗転する。空は黒く、海は紅い。そして、何よりも、世界の人々は眠りから覚めなくなった。様々な呻き声、悲鳴、だが決して起きる事はない。皆それぞれ悪夢を見ている。その悪夢から目を覚ます事はないのだ。俺は天地の勇者だという都合のいい力で悪夢を見る事はなかった。そしてレンもレーヴァテインに選ばれし存在であり、彼もまた悪夢に魘される事がなかった。魔王はまだ力が完全に持っているわけではなかったので、彼は悪夢にやられてしまっている。
「師匠、もうこの状況が起きて三日です。良い加減に対策を立てないと」
「ああ……わかっている」
クロスも息子も悪夢に苛まされているのだ。どうあってもこの状況を打破しなければならない。
「レン、お前はここにいろ。皆の様子を見ていてくれ。俺はこれの原因を探す」
不幸中の幸い、リベルト達もまたここに来ていた。皆同じところに集め、レンがそれの様子を見るようにした。
「悲鳴を聞くのが辛くなったらこれをつけろ」
耳栓と呼ばれるものをレンに託した。
「師匠、……気をつけてください。何かあったら俺も駆けつけますから」
「ああ、その時は頼む」
レンは既にレーヴァテインを完全に扱えるようになっていた。
外に飛び出し、センサーの魔術をかける。この異常事態を引き起こした張本人の居場所を突き止めるために。
いまいち反応はない。だが、微弱ではあるが奴の居所を突き止められたようだ。地図上南西の洞窟か。あそこは洞窟とは言ってもやたら明るかったな。
そこに降り立つと、様々な宝石がある。これらが光を反射して洞窟を明るくしているのか。ただの宝石ではなさそうに見える。特殊な結晶体だ。
「禍々しい……」
空は閉じているのに何故ここだけは光っているのだ。光源はどこからだ。
「そんなこと、気にしても無駄か」
まずはこの先にいる者を倒さなくては。
今回の話は書き溜めなのでいきなり変なところからスタートです。




