第四話 誰も救えやしないのだから
前回のあらすじ
絶と滅を……俺の仲間だと思っていた二人を、この手で殺してしまった。
二人を救えず、かつ殺してしまった。その現実を受け止めてもなお、俺は苛まれる。また償いする数を増やした。
何とかデグラストルに帰ったが、意識はあっても何もすることができなかった。
「何かあったの?」
彼女が問いかけてくる。だが、それに俺は答えなかった。
「悩みがあるなら言ってね」
それだけ彼女は言って、去って行った。
「父上、おかえりなさ……」
「……どうやら廃人化してしまったようだな」
レイドと魔王が来た。失望しただろうか。そして、俺の顔色はそこまで悪いのか。
「魔王……行こう」
「あ、あぁ、そうだな。レイン、俺はまだまだ幼いからよくわからんけどさ、そういう時は何かきっかけで治るもんだ。今はそうしてな」
二人とも外へ出て行った。
「俺は……」
俺は今までに誰かを守るために戦ったことはあるのか。いいや、ない。全て己の保守のために戦った。それが償いのための戦いだと言えるのか。ランタを守るために戦ったわけじゃない。デグラストルを守るために帝国と戦ったわけじゃない。全て自らの強さを確かめるための、自分本位で戦っていただけにすぎなかったのだ。そうやって償いだの何だの言っておいて、結局言い訳にしかならない。戦いをおいて意味を見出す必要なんて、本当はないのではないのか。ただ戦えばいい。勝って相手を殺す。それだけでいいじゃないか。
「この力を行使しても……」
この力は俺だけのためにしかない。
「誰も救えやしないのだから……」
俺はまた、ただの戦闘狂に戻ってしまうのか。
「貴方が誰も救えなくても、私は貴方を救える。ううん、もうとっくに、貴方は私を救ってくれたよ」
声の方向を見る。そこにはさっき出ていったクロスがいた。
「なんで……さっき出ていったんじゃ……」
「ずっと見ていたよ」
彼女は笑顔だった。




