第三話 残酷な現実
前回のあらすじ
俺は戦うことを迷っていた。俺は、全力を出せそうになかった。俺は、俺を、見失いそうになった。俺は、俺自身の、戦ってきたわけを見つけた。
この世に生まれた償いをするために俺は戦っている。俺のせいで何人も死ぬはめになったのだから。
戦う理由がわかった以上、迷いはなかった。
「いきなり動きが鋭くなった⁉︎」
「甘い……!」
剣を仰け反らせ、蹴る。その勢いは絶と滅に当たる。
「お前……!」
「本気を出せ、と言ったのはそっちだ……」
「だったら! こうしてやる!」
リーファンが闇魔術を出そうとしてきた。人間は魔術を扱うことができない。リーファンは人間をやめてしまったのか。これもまた俺のせいなのか。だというのであれば、俺は尚更止めないといけない。
「どっちが化け物だ……!」
天地刀を突きたて、突進する。何としてでも魔術を発動させるわけにはいかない。腕を切ったとしても。リーファンが人間であることをやめさせるわけにはいかない!
「「リーファン様!」」
絶と滅が動き出す。俺は止まることができなかった。
そして。
「ガハッ!」
「……」
俺は、二人を貫いていた。
「あ……あぁ……ぁあああああ!!!」
天地刀の、その圧倒的な長さにより、簡単に二人を貫通してしまった。
「リーファン様……お役に立てましたか……?」
「やめろ……死ぬな……」
俺は剣を引いた。聞きたくもない音がする。俺はまた殺してしまった。何故殺した。何故止まれなかった。
「……レイン……レィイイイイイインンン‼︎‼︎」
リーファンは血涙を流す。その涙は血でありながらもドス黒かった。同時に闇魔術が発動された。
無抵抗の俺はただ吹き飛ばされた。俺の心は二人を殺してしまった後悔だけだった。
前が見えない。生きているのか。リーファンはどこへ行った。声もしない。何も聞こえない。
やがて視覚が回復すると、リーファンは二人を埋めていた。
「リーファ……」
「来るなぁあ!!!」
「っ!」
「次にお前と会ったら殺す……今度こそ殺してやる!!! この血も涙もない化け物め!!」
そう言い残し、リーファンは消えた。
本当に二人を殺したのか。地面に這いつくばり、現実を噛みしめる。そうだ、死んだのだと。残酷な現実を、受け止めないと。
「絶……滅……」
そのまま意識を失った。




