第二部 エピローグ 結末への鍵
前回のあらすじ
帝国は崩壊した。
戦争の犠牲者は約三百人だった。三部隊が失われたということになる。だが、その代わり得たことは大きい。帝国によって植民地であった小国群の解放、帝国軍による捕虜の解放、ユグドラシルの魂の解放、そして何よりもデグラストルとの因縁の決着。帝国は解体し、新たな国になろうとしていた。
レンは俺の元から離れ、もう一度ユグドラシルで祖母と暮らし、再建を試みると言った。もちろんその時彼らの家をユグドラシルに持って行った。
あれから二年と少しが過ぎた。俺は二十一歳となり、いよいよ過去の俺が試練を受ける頃だと感じた。頑張れよ、過去の俺。同じことをやるだけだと思うが。デグラストルで修行していたジョウを光の国に帰す。そしてジョウに改めてその試練に関しての言伝を預けた。
そして聖都に向かい、絶乱戦無一家を訪れる。師匠との対決だ。
「覚悟はいいな」
「いつでも……!」
木刀で勝負する。死ぬことはないが、下手すれば骨折はするだろうな。当然、魔術等も使えない。
師匠は俺の力を知っているが故に鍔迫り合いをせずにただ避ける。俺が疲れるのを狙っているのか。いや、元々師匠はこういう戦闘スタイルだ。敵の攻撃を受け流しつつ、自分のペースに持ち込む。そのペースに入ると、鬼のように(実際に鬼だが)攻撃をしてくる。
「中々隙ができないな」
「師匠もです」
お互いに牽制し合う。まずいな、この硬直状態が続けば、師匠のペースに入ってしまう。打開せねば。たとえ隙がなくても、攻撃しなければならない。たとえ受け流されても、だ。
「師匠は強い。……だが、師匠すらも俺は超えてやる!」
とにかく打ち込んだ。隙がなければ作ればいい。避ける師匠に必死で食らいついていく。その内段々と師匠の動きに慣れる。
「やるな……!」
遂に、師匠が木刀で応戦し始めた。
「まだ……まだこれから!」
更に速さを上げる。まだ、足りない。もっと、もっと速く動かなければ。師匠はまだまだ余裕そうだった。
「な……!」
「焦ったな」
逆に俺が隙を作ってしまった。木刀を振り切った状態、俺は硬直し、師匠は木刀を振り下ろした。
カァン!
「な……に……」
気付くと、あり得ない動きで振り下ろされた木刀を払っていた。そして、師匠に木刀を向ける。
「強く……なったな」
「今のは……一体どういうことだ? 師匠、これは一体」
「俺にもわからん……ただ、お前が人間でないことはよくわかった」
「そうですか……」
まだ何か俺にあるというのか。
『我が力……我が闘争本能』
「ぐっ……」
また、あの声だ。五年前のあの声。
「どうした、レイン」
「『我は絶対の力を有し、絶対の力を持って、全てを制する』」
「お前、レインじゃないな……!」
「『我が名は絶対神。覚えておけ』」
「絶対神……おい、レイン!」
「父上!」
「蒼鬼、大丈夫だ。彼は気絶しただけだ。部屋に運ぼう」
目が覚める。どうやら俺は気を失って、かつて使っていた部屋に運ばれたみたいだ。
「起きたか」
「……師匠、俺は気絶したのですね」
「ああ……だが、気絶する前にお前ではなく、お前の中にいる何者かがこう言っていた」
師匠から説明される。あの時の現象みたいだ。俺は、俺自身の全てが明らかになったのではないのか。まだ、足りない部分があるというのか。
「とりあえず休んでおけ」
「はい……」
絶対神、今まで俺が勝ててきたのも、こいつのおかげなのか。歴代最強と言われてしまったこの俺は、俺ではなく絶対神がそうさせたのか。
「少し、悔しいな……」
彼はまだ、己の力を知り尽くしていない。知り尽くした時、彼は本当の力を得る。
そして、リーファン達も動き出す。彼らは一体何をしているのか。これから先の彼らの行方はどうなるのか。
結末への鍵は、全てレインが握っている。
お疲れ様でした。これにて第二部終了です。いよいよ最終部となる第三部です。第二部ではリーファン達がほとんど(というか絶と滅が一度だけ)出てきませんでしたが、第三部は彼らが中心となります。
第二部はレイン個人の復讐と一族の復讐の話。
では第三部はどうなるのでしょうか。まだ全ての謎は解き明かされてはいません。彼の呪いは解けていませんからね。一体誰が呪いをかけたのでしょうか。その話こそが第三部です。よろしくお願いします。




