第六説 仲間
前回のあらすじ
滅街龍はクロスを傷つけた。俺はまた仲間を失ってしまうかもしれないと迷い始める。危機的状況に立った俺は失ってしまった力を再び身につけ、倒すことに成功する。そんな時、彼らは現れた。
「本当にリーファン、なのか……?」
かつての仲間。失ったはずの仲間。その名はリーファン。俺よりも実力は劣っているものの、努力は誰にも負けることはなかった。それは俺を凌いでいた。きっと俺を超えるために。俺が住んでいた世界の二年前、俺と行動していたリーファンは俺の目の前で突然姿を消した。だから俺は彼らが死んだと思っていた。
「生きていたのか……良かった」
「ああ、ずっとな。そして復讐の時がきた」
「復讐だと……?」
一体何を言っている。復讐、誰にするというのだ。
「ああ。お前へのな。まずはこの龍を使役してお前を殺そうとしたが……とんだ雑魚だったな」
俺に、だと。何故俺に復讐をする。俺はお前に恨まれた覚えはない。いや、まさかあの時に。
「お前が……二十五年前にそいつを使ってこの街を滅ぼしたのか?」
「二十五年前? なんの話だ、レイン」
何の話をしているんだという顔をしているリベルト。すまない、今は説明している場合ではない。
「悪い、リベルト。説明は後にする」
「その件か。そいつは間違いだな。その時の滅街龍は単体で行動していた。歴史は確かに矛盾が生じてきている。結果は変わってしまった。とはいえ過程は予定通りだった。まあ、問題はない。主の望んだ展開なのだからな」
「主? 勿体ぶらずに言え……」
この二年間で一体彼に何が起きたというのだ。俺にはわからない。俺はずっと山に篭っていた。
「ふん……どうせここで死ぬお前に説明など無意味だ。さて、今まで俺をよくコケにしてくれたな。だが、今の俺は違う。俺はお前を超えた! 俺だけじゃない。この二人もだ」
コケにした覚えはない。俺はお前の実力を認めていた。そうなると、逆恨みなのか。
残り二つの影がフードを取る。そこにもかつての仲間がいた。
「絶、滅……」
リーファンと共に消えた絶と滅。二人は姉弟で双子だ。
「絶? 滅? 変な名前だな」
話についてこれないなら少し黙っていてほしいところもある。
「あいつらは人間じゃない。鬼だ。鬼特有の名前だ」
「へー」
頼む、もう少し緊張感というのを持ってくれ、リベルト。
「まずはこの二人がお前の相手になる。この二人を倒せない程度では、俺にすら勝てんからなあ」
二人同時に相手、か。勝てないわけではないが、彼らに力を使うわけにはいかない。それにリーファンのあの台詞は何なんだ。何故二人を見下す。お前ら三人は親友だっただろうが。
「なあ、レイン。状況よくわかんねえけど、あいつらと戦うってことだよな。だったらあの大剣使いさ、俺とやらせてくれないかな。同じ大剣使いとして戦いたいんだ。負けるかもしれない。けど、レインの役に立ちたいんだ」
「リベルト……」
俺のために戦ってくれるというのか。何故俺に……。俺はただ疑問しか浮かばなかった。リーファンらも、リベルトにも。
「はん……今はその三人で仲良しこよしってか? 友達ごっこも大概にしろよ、レイン。そうやってお前は他人と関わると他人が傷つく。そして死に追いやられる。お前は孤独なんだよ」
それは、そうかもしれない。過去に俺は二度もやってしまった。そして今こうして対決しようとなってしまっている。今度はリベルトまで失ってしまう。それは避けなければいけない。
「ごちゃごちゃうっせえんだよ、リーファンとやら! いいか、俺は望まずにレインと関わったわけじゃねえ。俺が望んで今こうしてるんだよ!」
リベルトは、いやリベルトだけではない、クロス、ハースもまた、迷える俺を救い出してくれる存在だ。俺はもう一人なんかじゃない。
「……バカと言って悪かったな。お前は立派だ」
「バカ? よくわからんけど立派だろ俺?」
俺はまた迷うかもしれない。その度に彼らに頼るかもしれない。だが今は、今はもう迷いはしない。
「ああ……。リーファン! お前がどれだけ強くなったかは知らない……たとえ俺を超えたというのであれば、俺は再びお前を、お前らを超えて行くだけだ!」
殺さないようにギリギリの力を使う。そして目を覚ましてやる。
「ならば来い……! 絶! 滅!」
「「ハッ!」」
「レイン、あの時の恨み、ここでお返しするぜ」
絶は鎌のようなものを二つ持っている。確か、あいつの特技は。
「絶……行くぞ」
連戦のおかげで全力が出せない。好都合だった。
「汝、我の相手」
「お前、女なのか。ま、いいや。女だろうと容赦しないぜ」
滅の声で女性だと認識するリベルト。まあ、わかりづらいからな。
「参る!」
「ハース、クロスをよろしく頼む……」
リーファンは高みの見物をしている。今の状況は最高であり、最低だ。リベルトには感謝している。
「まっかせろー!」
「レイン、準備は良いかぁ? 泣いて謝っても絶対に許さないからな!」
「来い……! 絶!」
次回予告
レインは絶、リベルトは滅と戦うことになった。様々な思いが交差する戦場。迷いを断ち切り彼は立つ。何度も立ち止まるかもしれない。だがその度に彼は壁を乗り越えようとするのだ。
次回、LIVING LEGEND 第七説 力
その力は傷つけるものではない。
メモ:俺はお前を超えていく、というとワンピースのルフィの台詞を思い出す人もいると思います。
これを書いていくうえでどこかにそんな名言あったなあって思いながら。そしたらワンピースだったわけですね。別に台詞をパクるつもりなんてこれっぽっちもないしむしろこの台詞は主人公の決め台詞みたいなものです。昔から決めていたもので。今後頻出しますよ。いわば「さあ、お前の罪を数えろ」みたいな感じで。