第三話 戦争
前回のあらすじ
部隊編成を終えた俺たちは遂に帝国に乗り込むのであった。
数日後、部隊を整えたデグラストル軍はいよいよユディナ帝国に侵攻することを決定した。
「ようやくこの時が来たんだ。絶対故郷の因縁を晴らしてやる。見ててください師匠!」
意気込むレン。だが俺はこう言った。
「復讐か……お前が望むなら思う存分にやるといい。だがな、レン。復讐なんてものは無意味だ。終わったら空っぽになる。自分の存在価値がわからなくなる。それでもやるか?」
これは俺への戒めでもあった。
「え……? でも師匠もこの国の因縁が」
「俺はいいのさ。もう覚悟はとっくに決めている。散々復讐もした」
「……。なら、俺も……覚悟決めます」
「ふっ、そうか。なら思う存分満足行くように戦い切ればいい」
時は経過。部隊を集め、作戦を説明する。
「俺たちの方が早く侵攻できる。……まずは水上を六、七部隊に任せ、他の部隊は待機。水上を制圧したら、全軍突撃だ。なお、俺とレンは先に城に突撃し、皇帝の首をはねる」
会議を終えたあと、倉庫に向かった。
「おはよう、ロロ。大丈夫か?」
そこにはロロ・リーズフルがいる。
「おはようございます、ご主人様」
「早速だが、俺と共に行動してもらう。いいな?」
「もちろんです」
ロロを愛でていると、クロス達がやってきた。
「……いよいよだね」
レイドはクロスに抱きかかえられていた。
「ああ……いってくる」
「いざとなったら我も応戦する」
魔王が飛び出して来た。
「魔王はここで待機しておいてくれ。二人を守ってほしい」
帝国軍に、デグラストルの地を踏ませるわけにはいかないがな。
「……さて、行くとする」
「死なないでね」
「当たり前だ。……行くぞ、ロロ。レンを拾って帝国に出撃だ」
ロロに飛び乗り、そして出発した。
帝国側。帝国もまた、本日侵略を考えていた。
「いよいよ今日をもってデグラストルを陥落させる」
「伝令! デグラストル軍が我が国に向けて出撃した模様です!」
「何……?」
皇帝にとってこの事態は予測できていなかったようだ。
「レイグランと言ったか……やはり面白い。そうではなくてはならない。まずはそのものどもを一掃せよ。それからで十分だ」
ロロ、俺とレンは先行して帝国近くに来ていた。
「よし、ロロ、全力で暴れてこい。危なくなったら一度離脱すること」
「了解です、ご主人様」
「行くぞ!」
「よっしゃ! 暴れてやる!」
合図と共にロロから離れる。ロロは帝国の軍事関係の建物を狙いに行った。俺達は城に突撃する。
部隊の方も、もうすぐ到着するはずだ。
「敵襲!」
窓を破ったので、簡単に気付かれる。別に気にしてはいない。前の戦いで帝国軍はそれほど強くないと知っている。
襲い来る兵士を次々と薙ぎ倒していく。
「しつこい奴らだ」
少し眠ってもらおう。夢と幻の宝玉を使い、彼らに幻覚を起こした。目の前数人が倒れこむ。
その間に玉座を目指す。
行く途中、目の前に一人の兵士が現れた。
「お前は……」
「やあやあ王様。……よくも俺に恥かかせてくれたなぁ!」
あの時の辞めさせた兵士か。やはり帝国側についていたか。
「ていうことで、死んでもら……がはぁ……!」
何がしたいのだ、こいつは。喋っている間に時空間転移術を使い、 柄で殴った。そして首をはねた。
「こうやって処刑するのも悪くないな」
こういうこと言っている場合ではないな。
もうすぐ玉座だ。しかし俺の目の前に五十人ほど立ち塞がった。
「レン、突破するぞ」
「任せてください!」
斜め十字にレーヴァテインを振り、その残像が炎となり、それが敵に向け放たれる。半分焼き尽くした。
「次は俺だ」
無属性魔術アルティメットを発動し、玉座までの敵を一掃した。この魔術はかなり精神を使うため、ある程度抑えて発動しているようにした。だがこれで十分だ。
玉座にいよいよ着いた。大きな扉を蹴破り、中に入った。
「貴様が皇帝、バイス・ユディナ……!」
「レイグラン・ダグラス・デグラストル……そして、誰だ」
「レイバテイン・ユグドラシル。俺の故郷を襲ったお前を許さない!」
「なるほど、ユグドラシルの死に損ないか……」
バイスは巨人族だ。十五メートルはあるのではないのか。
「噂にはきいていたが、ここまで大きい種族とはな……」
巨人族は色んな地方に存在している。基本的に三メートルを超える人間が巨人族だ。巨人族は知性が低く、動きも鈍い。だがこのバイスは、巨人族の中でもかなりの大きさであり、一国の王であることからかなり頭がきれるのであろう。巨人族もまた長生きをする。こいつが帝国とデグラストルの因縁を繋いでいるに違いない。今日をもってその終止符を打つ。
「長年デグラストルと戦ってきたが……お前が一番強そうだ。神龍も倒したみたいだしな。面白いことになりそうだ」
「……そんなことはどうでもいい。俺は、デグラストルと帝国の因縁を断ち切りにきた」
「そしてユグドラシルとの因縁も!」
「そうか……余興にもならないということか……ならば死ね」
「それはこっちの台詞だ。……行くぞ!」




