第二話 部隊編成
前回のあらすじ
拷問をした結果、皇帝のいるところ、どのような部隊なのか、軍部の場所を話した。
そしていよいよ戦争に臨むため、俺たちもまた部隊の編成を行うことにした。
日にちは遡る。レインが帝国軍十万人を皆殺しにした日である。
「閣下、我が軍が全滅しました」
「そうか」
皇帝陛下、バイス・ユディナはその犠牲にも関わらず、至って冷静であった。彼は人の死を何とも思わない。
「どうやら、敵国は王が帰還したようです。恐れていた事態が起きました。かの王は天地の勇者である、と」
「ふむ……天空界の命令により、このような行動を取ったが、どうやら間に合わなかったようだな。仕方あるまい。しばしこちらの動きは止める。その間、軍の整備をしておけ。たかが十万が無くなったとはいえ万全の体制を取る」
「ハッ!」
「天地の勇者、か……。面白い。そうでなくてはな」
バイスは不敵な笑みをする。
日は戻る。拷問してから少し経過した日だ。場所はデグラストル宮殿。
兵士の一人が玉座にやってきた。
「王様、部隊の再編成を行いたいと思います。戦いに関して一流のあなたに編成してもらえれば、我が軍も強くなることでしょう……」
「いちいち畏るな……まあいい、今すぐ行く」
「いってらっしゃい」
「すぐに終わらせるさ」
「整列!」
かなりの数の部隊が揃っているようだ。訓練を指揮する者が指揮をとっていた。
「王様直々に編成を下される。感謝しろ!」
いや、別に感謝とかはいらないがな。
「……特殊部隊15名、一番部隊から十番部隊があり各部隊約百名か」
「はっ! そうであります!」
「特殊部隊は一体何をしているんだ?」
別に知っているが敢えて聞く。
「主に王様が出張なさられた時に国を護衛する部隊でございます! 数々の訓練において、特に優秀な者のみが入れる部隊でございます!」
「他の番号部隊は?」
「一番部隊から順に強いものが揃っております!」
「要するに十番部隊は一番弱いと言う訳か」
「そうであります!」
「……一番から三番までは体力がある者を集中させろ。歩兵部隊とする。四番五番は馬術に突飛した者、騎馬隊だ。六番七番は水中戦において使える者、また海上戦における水兵部隊。八番から十番は地底人の力、地下においてその威力を発揮する者、地底部隊を編成する」
「ハッ!」
「平均的な技術、能力で全てが決まるわけではない。特に、強いものの順番で決めつけては堕落が起きる。即ち敗北を意味する。……これを編成したのは誰だ」
一番部隊にいる一番前の者が名乗りを出た。
「私であります!」
「貴様か……」
「この者は一番部隊において一番強い者であります」
先ほど説明していた者が紹介した。
「そうか、貴様、何故にこのような編成を行った」
「下の者達が我らが一番部隊を目指して訓練に励むと思い、このような編成にしました!」
「本当に励むと思っているのか? そして、その意見は本当なのか?」
「うっ……」
「どうやら違うようだな。さしずめ、劣等な輩とはやりたくないと思っているのだろう」
「うぐっ」
「図星のようだな。……貴様は今をもって軍から抜けてもらう。いいな?」
「っ……は、はい……」
その者は退出した。
「いいのですか? もし叛逆とか起こせば……」
「仮に帝国側についたとしても、その時は俺が斬る」
「はっ……はあ……」
しばらくした後。
「これで編成は終わりだ。解散」
病室に戻ろうとすると、かつての十番部隊に所属していた者がきた。
「あ、あの、ありがとうございました。あの人、威圧がすごくて、とても訓練ができるような状況ではなかったのです」
「そうか、それはよかった。俺も良い判断ができたと思っている」
その兵士は深いお辞儀をしていた。何もそこまでしなくてもいいと思う。
「レイン、中々面白かったぞ今のは」
「リベラル……お前性格悪いぞ」
「そいつは失礼したな。さて、俺も忙しいしこの辺で退散するよ」
今度こそ、病室に戻ることにした。
「戻ったぞ」
「おかえり、あなた」
「レイドは……眠ったか。これから帝国との全面戦争を行う。これは、古くからの因縁を断ち切るためだ」
彼女に手帳を見せる。
「こんなことがあったのね……」
「そうだ。だから決着をつける」
「レインはあとどれだけ戦うことで、安息が得られるの?」
「わからないさ。まだ、裏で手を引いているやつがいる可能性がある。リーファンも操られているように見受けられる」
「あれからリーファンとは会ったの?」
「いや、絶と滅だけだ。会っただけで、戦闘は行っていない」
「因果関係……一体どれだけレインは背負っているの? 帝国は天空界の差し金、魔族は天空界の尻拭い、天空界もまた、神龍によって洗脳されていた。……天空界は今どうなっているの?」
「さあな……うまくいっているんじゃないか?」
「うーん、そっかあ。気になるところだけど、仕方ないわね。んで、その神龍すら操られていた可能性が出てきた、というわけね」
「そうだ。かつて初代、八代目が戦ったとされる四大邪神というのがある。初代はアトモスフィア、八代目はアシッドと戦った。その邪神が、神龍を操っていたかもしれないという情報が入ってきた」
俺の神龍への怒りは何だったのか。全て無駄に終わるのか。いや、間違っていない。
「もう何だか無茶苦茶ね。上には上があるのね……」
「とりあえず今は帝国との決着をつける。……しばらくは休む。こいつと、あと新しい魔王の育成をしなくてはならない」
「少しでも一緒にいられるだけで嬉しいよ」
「全てが終わったらずっと一緒にいられるだろう。それまでは待っていてくれ」
「うん、私待ってるよ」
彼女の頭を撫でようとすると、
「ひゅー! 見せてくれちゃってますね!」
横槍が入った。
「……リベルトか。いつ来た」
「はじめからだぜ!」
「こいつ……!」
「まあ、そうカッカすんなって。俺たちの国も協力するよ。友好関係を築いた証としてさ!」
「その気持ちはありがたいが、帝国との争いはデグラストルだけでやる。意味があるのだ」
「ちぇー! 俺の活躍はなしかよ!」
「まあまあ、いつか来るよ。それに、今はデグラストルだけじゃなくて他の国の関係も見直さなきゃいけないんだから」
ハースが現れた。
「だぁー! こんなことなら革命一派につくんじゃなかった! 王様なんて俺には合わねえ!」
「でも、有意義には暮らせていると思うけどね……」
「おい、クロス! お前はどうなんだ⁉︎」
「私は幸せだよ?」
「くぁー! いや、それでいい! レイン、お前は本当によくやってる!」
そういえば、あの時の温泉で幸せにしろだの何だの言われたな。しかしこいつ久々に会ったが五月蝿いな。
「……たまにはお前の国にも行くよ」
「首脳会談ってやつか⁉︎ 面白そうだな!」
現時点でも行っているようなものだがな。
「王様同士が気軽に国飛ぶのもどうかと思うけどねー」
「やっぱり王様になるんじゃなかったあああ!」
「いつもあんな雰囲気なのか……」
少し呆れてしまった。
「まあ、ともかくリベルトとハースよ。席を外してくれ」
「おっ? なになに、ニヤニヤさせてくれるの?」
「黙れ……」
「ひぃ! 何か前より怖くなってるな! まあいいや! また今度な!」
二人はようやく去った。
「レイン、話あるの?」
「……」
俺は無言で彼女にキスをした。
「⁉︎」
「その……すまん、俺も男ということだ……」
「いいよ、いくらでもしていいんだからね」
「ひとまず安心した。今日はここで寝るよ。お前とレイドと共にな……」




