第七話 余興
前回のあらすじ
今やるべきことは全て終わらせた。即効でな!
あの日から一週間後、俺が待ち望んでいた日だ。
「ロロ、あいつは強くなったか?」
時空間転移術を使わない時の移動手段であるロロの元に来た。こいつは俺の相棒でもあると言っていい。ロロ--ロロ・リーズフルは錬金種というもので、かつて父が開発しようとしていたらしい。様々な種類の動物を混ぜ、究極的なフォルムと攻撃性、そして知性を兼ね備えた、万能の生物が錬金種である。それを俺は父の開発を引き継ぎ完成させたわけだ。ロロは様々な龍の個体を混ぜ合わせられている。
「どうですかね。干からびてないといいですが」
こうして俺たちの言語を使うことができるのだ。
「俺はあいつが特別だと見込んだ。間違いない」
「それほどの確信をもってして、何故私に質疑を? もはや愚問では」
「お前の意見を聞きたかっただけさ。……さて、見てくるとしよう」
「はあ、ご主人は最近よくわかりませんな」
訓練所に着くと、今まさに訓練中であった。剣術の訓練をしているみたいだ。掛け声が響いてくる。
レンを見つける、彼はわざと重装備にし、動きを制限させ最小限の動きで相手についていく。どうやら順調のようだな。
休憩しているリベラルに話しかけてみることにした。
「どうだ、調子は」
「おいでなすったな。あいつは見ての通りだ。中々筋がいい」
「基本的な動作は教えていたからな。……それにしてもあの装備であの動き。やはり特別だな」
「コツさえ掴めばいい。だが、そのコツを掴むのが一般より早かったな。そこが特別か」
「ああ……。ところで、この訓練はいつ終わる」
「あと十分だ。なんならその間俺と手合わせ願おうか」
「そうだな、いい余興になりそうだ。本気で来い。お前ならわかっているだろう」
「接待はしないさ。俺とレインの仲だ」
訓練用の木剣を持つ。型はない。リベラルは名の通り自由に動く。あまり戦闘に向いているとは思えないが、逆にやり辛いとも言える。その柔らかい体を捻らせ、切り上げてくる。当然、防御するが、リベラルは止められた反動でその場で一回転し、裏拳を使うような感覚で斬ってきた。俺はしゃがみ込み、回避する。そのままリベラルの胴に叩き込もうとするが、彼は飛び跳ね、振り切った俺の木剣の上に乗る。何という身の軽さ。そこから彼は勢いよく跳び、思い切り切り落としてきた。バックステップで避け、一度態勢を整える。
「ふっ、やるじゃないか」
「さすがは我らが王様ってところだな!」
彼は突進してきた。俺も真正面に受け止める。鍔迫り合い、俺の重々しい一撃と彼の軽い身のこなし。鍔迫り合いとなればこちらが有利だ。いや、俺は誤った判断をした。彼は、はなから鍔迫り合いをしようという気はなかったのだ。俺の木剣を往なし、切りかかってきた。咄嗟の判断で避けることができたが、あと少し見誤っていれば顔面に直撃だっただろう。
「ほう、今のを避けたか」
「やり辛いな……」
この手の相手は初めてだ。
「それが俺のやり方だ」
「……ふっ、なら、俺も俺のやり方でやろう」
小細工はしない。正面衝突、これが俺のやり方だ。武器破壊を狙う。また往なされる前に破壊する、それしかない。安直すぎる攻め方だが、逆にどう行動してくるかがわからないはずだ。
「馬鹿正直に突っ込んできただと……!」
剣を振り上げる、そしてそのまま下ろす。当然、避けられるが、次が勝負所。下ろした勢いを殺さず、彼の木剣目掛けて振り切る。
「っ……!」
再び往なされるが、俺もそれを返し、もう一度木剣を狙って振り下ろした。彼から木剣が落ちる。そして彼に木剣を向け、勝負の終わりを告げる。
「なるほど、武器破壊……レインらしい」
「中々の手応えだった。お前のような相手とはやったことがないからな」
「俺も良い経験になったよ」
「……もう十分経つのか。かなり集中していたみたいだな」
「ふっ、体感時間とは恐ろしいもの。……では、召集してくる」
「ああ、頼んだ」
今日の特別部隊の訓練はこれで終わりとなった。レンは見事なまでに鍛え上げられていた。さすが、と言ったところか。
「これでレーヴァテインが……!」
「まあ、落ち着けレン。レーヴァテインは逃げやしない」
やれやれ、せっかちな奴だな。
「そ、そうだな。焦ってしまったぜ」
「今日はもう休め」
「うっす! 師匠!」
まだ師匠と言われるくらいのことはしてはいないがそれはこれからやっていけばいいな。
「また明日から頑張れよ」
次の日、国境周りを見張っていた一般兵が帝国軍の兵を捕虜にした。その捕虜は地下監獄へと連れられていった。俺はその者に対し、拷問を行うことにした。




