第四話 修行
前回のあらすじ
赤色の短髪でバカのレンはどこかしらリベルトを思い出させるやつだった。これからの修行にこいつはついて来られるのだろうか。
「レンの両親も戦争でなくなったのですか?」
クロスはレンの祖母と話していた。一方、俺はレンに剣の持ち方を教えている。何よりもまずこれからだ。
「ええ……戦争の末期に。ユグドラシルと帝国の戦いもまた、デグラストルと帝国の因縁と同じようなものです」
帝国の魔の手はここまで来ていた。帝国を使役していたのは神龍。つまり、神龍は天地の勇者だけではなく、レーヴァテインも狙っていたというわけだ。
「戦争はユグドラシルの民の全滅で終結したのですか?」
「そうですね。私たち一家は特別な一族であるため、少し離れたところに住む事ができていたのですが、一人生き残ればいいということで、息子もまた戦争に駆り出されました」
「特別な一族……つまり、レーヴァテインを扱える唯一の一族というわけですか?」
「はい。ユグドラシルの民の祖先は私たちの一族だそうです。そこから広がりました。結局、今こうして滅んだわけなのですが……」
「……。特別な存在は皆苦労するんですね」
「私は老い先短いため、あまりそこまで感じられませんが、孫はこれから苦労すると思われます。両親を亡くした悲しみを抑えてますから。レイン様がいらっしゃって、とても感謝しております」
「まあ、来た動機はすごくしょうもないことですけどね。まあ、なんにしてもレインと同じような境遇の人がいて、レインも同情したのかもしれませんね」
「……おい、クロス。俺は同情などしないぞ」
一先ず剣の持ち方を教え終えた俺は二人の元に来た。レンは今基礎体力のために走っている。
「じゃあ、なんで弟子取ろうとしたの?」
「あいつを強くしたかった。……それだけだ」
「本当かなぁ……」
「……俺も久々に走って来る」
「あ、逃げた。ま、いっか。おばあちゃん、これからレンはデグラストルに来ると思いますけど、あなたはどうしますか?」
「私は……」
「よかったら来ていいんですよ」
「そんな畏れ多い」
「私も、元庶民ですし。でも、無理強いはしないです」
「本当はこの谷の行く末を見守ろうと思っていたけれど、孫が成長していくのも見たいし、……行く事にします」
「ほんと⁉︎ じゃあ、よろしくお願いしますね!」
「えぇ、こちらこそ」
「時々この谷にも来ましょう。レインを使えば一瞬で来れますし」
「人を物みたいに言うな」
「おわっ⁉︎ びっくりした。転移術使わないでよ」
そのような事を言われてもな。最近地獄耳になってきたようだ。
「さ、そろそろデグラストルに行こうか」
「ええ、行きましょう」
「レン、お前に面白いものを見せてやる」
「え、まだ準備できてないよ?」
「問題ない」
レンの住んでいた家を時空間転移術で飛ばす。
「え⁉︎ お、俺の家が……」
「次はお前たちだ」
三人をデグラストルに飛ばした。
残った俺は、谷を見渡す。ユグドラシルの木の元に立ち、目を閉じた。様々な思念を感じた。戦死した者たちの声が聞こえる。帝国を潰し、ユグドラシルの復興を、と。帝国は俺が潰す。だから心配するな。ユグドラシルの復興は、レンがやるさ。だから、おとなしくこの世から去れ。
そう応えるようにすると、声は聞こえなくなった。
木に入る事ができる。入ってみると、朽ち果てた本棚が出てきた。ここは図書館でもあったのか。本を漁るが、独特の言語で書かれていて読む事ができない。仕方なく、本棚に戻した。
「……帰るか」
俺もまた、時空間転移術でデグラストルに帰るのだ。




