第三話 堕天人
前回のあらすじ
…………。
一方、クロスの方では。光の国から招集がかかり宮殿に来ていた。そこではかつて孤児院に過ごしていた者たちがほとんどと言ってもいいくらい居たのだ。
「リベルト達も来ていたんだ」
「なんなんだろうなぁ、いきなり呼びつけて」
「パーティーでも開くのかな? 美味いもん食べられそう」
「お前なぁ……ところでレインはどうした」
「今は……その……」
きっと今、神龍と闘っている、そう思う彼女は不安な気持ちになっていた。
「まあ、いいか。集められたのは孤児院の連中だしな」
そして奥から光の女王、ライトが姿を現す。
「ようこそおいでくださいました。今日は貴方達に教えなければならないことがあります。齢十八を超えた今だからこそ。……率直に言います。貴方達は人間ではありません」
「え……?」
周囲がざわめく。
「何故貴方達が今まで孤児院で過ごしたのかわかりませんか?」
「それは確かに……」
「考えたことなかったよ」
「人間ではないから。しかしそれだけの理由ではありません。……人と天空人との子は世界の法則からギリギリのラインです。神龍はその子を殺さない代わりに親元から引き離し孤児院を作り、そこに入れた。その子ども達を堕天人と呼びました。堕天人は世界から迫害されるものです」
「意味わかんねえよ!」
怒号が飛び交う。
「ならば背中に力を込めてみなさい」
「……。……!」
彼女らに黒い翼が生えてきた。
「それこそが堕天人である証明です。今まで貴方達を支えてきたのはあの三人……あの三人は天空人です。見かけが変わらないのはそういうことです。……堕天人であることを教えたことにより貴方達は何か変わったことがありますか? いつも通り過ごせるはずです。その姿さえ見せなければ」
「はぁ……」
「堕天人は異常な回復力と力がある故に多少の傷だと直ぐに治せます。ただの人間よりずっと強い」
「! だからあの時俺の足が直ぐに治ったのか。レインの力じゃなくて」
未来の世界のことだ。あの火山の岩石に潰れた足が簡単に治ったのもそういうことだったのだ。
「えぇ……それで隔離した神龍をどう思いますか? 恨めしい気持ちがあるでしょう。それを代理執行する者がいます」
「それってまさか……」
「天地の勇者たる者が今闘っています。世界の法則を壊すために。これ以上の犠牲が出ないために」
「レインがいないのはそれか……」
「やるべきことは終えました。私から以上です。如何せん私は説明が下手なので上手く伝えられないと思うのですが、貴方達はこれからも普段通り過ごしてください。その普段通りに過ごせる日々を、堕天人が堕天人のまま過ごせる日々を、彼がもぎ取ってくれるでしょう」
「……私、天空に行く」
解散した後、三人が帰路の準備をきていたときにクロスが言い出した。
「おいおいそれってまさか」
「レインの手助けをしたい。……足手まといになるかもしれない。けど、力になりたいんだ!」
「別に俺たちは止めやしねえよ」
「あいつのことめっちゃ好きなんだねー」
「じゃあ行ってくるから!」
翼を生やし飛んで行った。
戻って天空の聖域。
ある一つ一つ残ったものは天地人のコアと呼ぶべき心臓だった。綺麗な丸い物体で硬い。破壊するにはかなりの力がいる。神龍はその存在に気付いていなかった。
「汚らしい。おい、誰かここを掃除しろ。聖域に血と肉はあってはならんのだ」
従者を呼ぼうとした。が、その血と肉が動き出したのに気付いた。
「なんだ……何が起きている」
それはコアに段々近付いていき、固まっていく。
「まさか……いやそんなはずはない!」
それを振り払い可能な限り握りつぶす。血が蠢きさすがの神龍でさえも身震いをした。
「なんだ……なんなんだこれは!」
突如動くスピードが上がり、コアを中心に体を形成していく。脳、血管、細胞、肉体、そして天地の衣。
「こいつは不死身……!」
顔が形成され、裂かれる直前の状態に戻ったそれは口を開いた。
「お前は俺を殺すことができない」
「ぐっ……」
「所詮、お前は世界を支配できる力を持っているが、その実行には移せないな。貴様が何年生きて来たか知らないが、俺を殺そうとも殺せない限り支配などできない。……どれだけ強くとも、俺には関係ない。何故ならば、俺は貴様を超えるだけだからだ!」
もう、俺は恐れない。




