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LIVING LEGEND  作者: 星月夜楓
第四章 魔
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第六話 真実

前回のあらすじ

あらゆる戦法で魔王を翻弄した俺。そして必殺技を繰り出し、見事魔王を討ったのだ。

 書庫に入ると、ある一つの手帳が机の上に一つだけ目立つように置かれていた。これを読めということか。手帳を開くと、こう書かれている。

『これを読むということは、既にお前に殺されているだろう。いや、お前とは言えない。大切な子孫なのだから』

「何を、言っているのだ……」

 俺が、魔王の、子孫だと。

『まずは、レイン、君の出生に関して書こう。君の両親を殺してしまったことは仕方のなかったことだ。許せとは言わない。だが、天空界の奴らに君を渡せば、君は始末されるところだったのだ。世界の法則は嘘をついている。法則によれば、両親を殺すだけだったが、神龍の狙いはその子どもにも値する。わざと法則に記していないのだ。天地の勇者を神龍は、忌み嫌っている。何故ならば天地の勇者は世界を支配できる力を持っている。同じ力を持つ神龍にとって、天地の勇者ほど危険な存在はいないのだ。……どの道、君の両親は殺されていただろう。そして君も。両親を殺した事を天空界に報告すると、天空界は身を引いた。これしか道はなかったのだ。これで君が大きくなるまで保護することができる、そう思っていた。だが、君の一部がどうやら育てていた魔族を殺してしまったらしい。問題が起きたと思ったが、幸い、君の行き先は天空界が干渉できない聖都だった。これで問題ないと確信した。それ以降、俺は行動を起こさなかった。君が大きくなり、そのうち君が俺に憎しみを持ってここに来るだろうと予見して』

「嘘だ……」

 俺の出生事情は全て解き明かしたはずだ!

『んん? どうやら嘘じゃねえなァ、これはよォ』

『さて、これが君の真実だ。これを見てどう思った? 嘘だと思っただろう。だが、違う。これは本当なのだ。嘘だと思えば、神龍に問い正せば良い。君は神龍をも殺しに行くだろう。だからその時に聞くと良い。……ここからは、俺自身の話をしよう。読まなくてもいい。だが、本当のことを知りたければ、読む必要もあるだろう。さっき俺は君が俺の子孫だと言った。その部分について話す。今から相当な昔の話だ。七代目レイラが魔族と停戦を求めてきたと同時に婚約も求めてきた。俺はそれを受領した。レイラは天地人だった。勇者ではなかったがな。そして、しばらくして息子が生まれる。その息子は天地の勇者だった。つまり八代目となる息子、レイビは俺の力を引継ぎ、闇の力をかなり要していた。その話は良い、問題はここからだ。年は忘れてしまったが、日付は覚えている。いや、忘れるはずもない。八月十六日。あの日、天空界が使役した帝国軍による全面戦争が起きた。俺たち魔族が準備をしている間、デグラストルは奮闘していた。だが、帝国軍のあまりの数の多さに段々追い詰められていた。俺たちの準備が終わり、戦地に駆け付けると、デグラストルの宮殿が占拠されかけていた。その中、たった一人戦っている者がいた。妻のレイラだ。もう少しで加勢できる。そう思った瞬間、彼女は複数の矢で貫かれた。俺は我を失い、気付いた時には帝国軍全てを抹殺していた。……俺は天空界が憎い。だが、俺では神龍を倒す術がない。息子のレイビもまた、闇の力が多すぎるため、神龍に太刀打ちできないのだ。神龍に太刀打ちできるのは光と闇を制した者のみだ。それはつまり、君だ、レイン。俺は息子を育て上げた後、この城で眠ることにした。君の存在が現れるまで。……十八代目も天地の勇者だったが、この者は浮浪しており、中々情報を掴むことができなかった。そして、二十五代目辺りに神龍はあの世界の法則を作り出す。いよいよ神龍が本格的な動きを始めた時だ。百年計画とも呼ばれるそれは、まず天敵である天地の勇者を消すこと、そして百年目に天空界以外の住民全てを殺すことだ。俺は裏のルートを使い、その情報を知った。ますます余裕がなくなったのだ。次の天地の勇者が現れた時に確実に保護しなければ、世界は神龍によって滅ぼされる。だからこそあのような事をしたのだ。この憎しみは、君もわかるだろう。あの報告したとき、俺は無念でいっぱいだった。自分の子孫を殺すことなのだから。先程も言ったが、そうすることしか道はなかったのだ。俺は奴に脅迫されていたからな』

「そんな……」

『だが、これだけはわかってほしい。天空界の住民が悪いわけではない。全て神龍がやったことだ。……俺は最後に君と戦えてよかった。老いたため、全力で挑めなかったのが心苦しいが、これを読んで、俺たちの無念を晴らすこと、全ての因果を断ち切ることを考えてくれたとしたら、この戦いはきっと無駄にはならない。全て終われば、神龍によって殺された全ての存在が、報われる』


「……言われなくても、するさ。元よりそのつもりなのだから」

 殺意、悲しみ、怒り、負の感情が俺に押し寄せてくる。

『……イイ感情だぜ』

『これを持っていくがいい。''神''の宝玉、''龍''の宝玉だ。神龍から盗み取った物だ。机の引き出しに入れてある。そもそもこれは天地の勇者の所有物である。……真の世界を統べる者が一体誰なのか、それを奴に知らしめよ。……ついでにだが、俺が死ぬことで魔族は一度滅ぶ。次の魔王はすぐ現れるが、幼いであろう。君が育ててくれないか』

「……わかったよ」

 ここで手帳は終わった。引き出しから二つの宝玉を取り出す。

『これが、全ての答えか』

『なるほどなぁ、ぜェェエエエんぶジンリュウの手のひらの上で踊らされていたってわけかぁ』

「……神龍、俺たちを弄んだ事を後悔するがいい」

 これが全ての真実であるならば、神龍さえ殺せば俺の戦い、俺自身との決着、俺たちの先祖の決着がつくわけなのだ。

「重いわけじゃない。誰かに命令されるわけでもない。これは、俺の意志だ」

『その通りだ』

『今こそ、って奴なァ』

 三つの精神は、やがて一つの精神となる。

「……これが、これこそが本当の俺」

 今すぐにでも天空界に向かいたがったが、疲労の為にその場に倒れこんだ。

今回の話はこのシリーズの根幹に当たる部分です。超重要です。改行をあえてしていないので非常に読みづらいですが。


さて、主人公が魔王の子孫なんていう物語はそうそうないでしょうね。それに主人公自体は勇者。

帝国側が執拗にデグラストルを狙うのも天空界による使役だからです。

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