第三話 魔界
前回のあらすじ
一度帰国した俺。妻であるクロスに子どもができたことが判明した。
そして、いよいよこの時がきた。魔界に、遂に飛び立つ。
魔界は、星の裏側にあると言っていい。この世界は、天空界、地上界、地底界、魔界に分かれている。地上界と魔界は半分ずつとなっている。これは、魔王と七代目デグラストル国王が不可侵として取り決めしたからだ。争いは取り決めした以降、全くない。だが、それは表面的でしかない。種の繁栄のためならば、人間も魔族も変わらない。小さな争いは必ず生じるものだ。そしてまた、この俺もその小さな争いを起こす。世界のために魔王を倒すわけじゃない。そのような大それた事は、俺にはできない。御伽話のような、勇者と魔王ではないのだ。俺にとっての魔王は、親の仇である。ただの私怨にしかすぎない。
「……待っていろ、必ず殺してやる」
魔界に着き、真っ先に魔王の居る城に向かった。
ただ、大きな争いには転じたくはない。なるべく忍び込めるようにする。幸い、表面上では魔族と人間はそれなりに友好関係であるので、魔界でも人間を見かける事は少なくない。不可侵は、武力を持って入り込むことであり、そうでなければ出入りは自由だ。
城の前。
「人間がこの城になんの用だ」
当然ながら、門番が来る。
「魔王に謁見したくてね」
「貴様、無礼だぞ」
「まあ、そんな硬くしなくていいんじゃねえの? 魔王様だって久々に人間を見れば喜ぶはずだ」
「お前ばかじゃねえの⁉︎ 魔王様はあの事件以来人間が……」
「え? そんなのあったっけ……」
何の話かは知らないが、二人が言い争っている内に入らせてもらおう。
「あ! さっきの人間勝手に入っていったぞ!」
今更気付いても遅い。もうすでに魔王の部屋の近くまで来ていた。かなり大きな扉だ。一目でわかる。
あまり大きな音を出したくはないが、仕方ない。
扉を蹴破り、中に侵入する。
「魔王! 姿を現せ!」
「人間……いや、天地の勇者か……」
玉座に座っている魔王がほんのり見える。
「貴様を殺しに来た」
「そうか……いよいよ刻が来たか」
奴の言う刻とは……。一体何のことだかわからないが、さっさと始末しなければならない。殺すためにここに来たのだから……!
『行くよ、私』
『殺戮の時間だなァ!』
「魔王……俺の両親の仇……今、ここで討つ!」
次回、対魔王。魔王戦は2話の予定です。予告通りのサクッと終わります。
その理由とは…?




