第十一話 闇
前回のあらすじ
絶と滅の実家、奏銉門家を訪れる。そこで二人に出会い、闘いを交えようとしたが……どうやら彼らは何か急ぎのようで闘うことなくその場から去った。
そして俺は、いよいよ魔界に突入する、はずだったのだが……。
聖都から魔界に向かう途中、不意に声を掛けられる。辺りを見渡しても誰もいなかった。また幻聴なのか。
『力がほしいか』
ああ、今、俺は力がほしい。魔王を倒す力を。とてもとても。
『こっちだ』
何があるというのだ。
『これは……まさかな』
オルレインが何か反応をしていた。
声に釣られて辿り着いたのは、廃墟だった。そしてその奥に影が見える。俺だ。いや、俺より少し髪が長く、ツンツンと張っている。
『ようこそ、我……クックックッ』
口調が変わる。いや、これがこいつの性格だ。
「お前が、もう一つの俺の人格か」
オルレインが光の人格ならば、こいつは闇の人格といったところか。
『如何にもぉ! 力がほしいんだろぅ⁉︎』
「ああ……俺は……力がほしい」
『だったらよぅ、我を超えてみせろやぁあああ!』
「っ! 言われなくても!」
もう一つの俺に突撃する。そして奴はあっさりと斬られた。
『ぁああああ! いだぁああい! ……なんて、ねぇ!』
「⁉︎」
俺もまた、斬られていた。いや、奴に斬られたわけではない。俺が奴に斬ったのと、全く同じ斬り口だ。
『貴様よぅ、貴様は我自身だぁ……クックックッ‼︎』
「何をほざいている……!」
隙ができてしまった。奴に両手首を斬られる。だが、わざと切り落とそうとはしてこなかった。あえて皮一枚残したのだ。痛みに耐えきれず天地の剣を落としてしまう。
「こんなもの……」
すぐに治癒できる。
「……?」
何故、治癒ができない。
『あぁ……我が止めちゃってるんですねぇ、ざんねえぇぇええん!!!』
両足首も斬られた。
「ぐぁぁああああああ!!!」
そしてそのまま蹴飛ばされる。そこで両手両足が消し飛んだ。
『まだまだぁ!』
闇のエネルギーの塊が二の腕、太もも、腹に突き刺さる。俺は壁に磔られたのだ。
「ごふぁっ……」
『呆気ないな、我よ。つまらない、つまらない、つまらなぁぁあああああい!!!』
こいつに太刀打ちできないのか。攻撃すれば俺もまた傷を負う。だが、こいつは一方的に攻撃ができる。
もう、ここでダメなのか。ここで終わるのか。魔王も、神龍も殺せずに俺自身によって殺されるのか。
『死ぃぃいいいねぇえええええ!!!』
絶望回。お約束回とも。まあ、主人公だから死なないってのは既にお分かりでしょう。しかしここからどうやって解決に持ち込んでいくのでしょうか。現在、壁に磔、両手両足なしの状況で。
バトル回になりました。久々ですね。かなりのテンポアップで書きました。まだ本番ではないのでダラダラと戦闘を書くつもりはありません。
次話は来週です。そしてこの回で宝玉編は終わりとなります。




