第十話 絶滅
前回のあらすじ
聖都に訪れた俺。絶乱戦無一族と久々に話すことができた。そしてやがて来るであろうあの未来のために、俺は師匠に言伝を置いたのだ。
念のため、絶と滅の生家を訪れる。奏銉門一家は、鬼の中でも上位にある一家である。
家は静まり帰っていた。何故だ、子どもがいなくとも、親はいるはずなのに。
無理やり扉を開け、中に入ったそこは荒れていた。
「どういうことだ。……異臭もする。まさか……」
そのまさかだった。玄関辺りに絶と滅の両親が死んでいたのだ。つい最近殺されたようである。
「この切り口……」
無惨にも切りざまれたその体。その切り方が見覚えがある。
「おんやぁ、誰かと思えばレインじゃねえか」
殺気を感じ、後ろに飛び退いた。既に左手は天地の剣の柄を掴んでいる。
家の中から絶が現れる。
「お前が……やったのか」
「そうだ。こいつら邪魔だったからなぁ……!」
「邪魔で殺していいと思っているのか」
「当たり前だ! こいつらは鬼の掟を破っていやがった。それだけじゃねぇ! 俺たちを侮辱しやがったからなぁ‼︎」
もはや、絶、いやあの三人は倫理観はなくなっているというのか。
「絶……五月蠅い」
「滅、いいじゃねえか。獲物がわざわざこっちに来てくれたんだ」
「リーファン様の命令は絶対。戦闘回避」
「ちっ、うっせえな。わかったよ、わーった、おい、レイン! 次会ったとき、貴様はお陀仏なんだよ!」
「はしたない……」
そう言って二人は消えた。こいつらは一体何をしていたのだ。
家の中に入ると、何かを漁っていたようだ。部屋がぐちゃぐちゃになっている。
『ここに宝玉がある』
「なんだと……」
あいつらは宝玉を狙っていたわけではなかったのか。
『この床を壊せ』
オルレインの言うとおりにすると、穴が空いていた。
「この下か……」
降りると、宝箱があった。そしてそれを開けると、''絶''の宝玉、''滅''の宝玉を見つける。
『この宝玉は、世界の生物を絶滅させる危険性を持つ。使う時は気をつけるがいい』
名前からして危険そうだな。
「承知した」
何故、このようなものをこの一家が持っていたのだ。
いや、それは問題ではない。あいつらが探っていたものの方が問題だ。
ただ、今は魔王と神龍を殺す方が先決だ。
これで残り三つ。
まずは魔王をこの手で殺す。
「それはそうと、中心部に行かねばな」
『その必要はなくなった。もう聖都に用はない。ここにある宝玉は全て回収した。時は満ちたぞ、私よ。さぁ、魔王の住処に向かおうではないか』
「そうか……」
いよいよこの時が来たのか。俺は勇者などという名目も忘れ、ただひたすら復讐の怨念に取り憑かれていた。
宝玉、残り三つ。闇、龍、神を残すのみとなる。
因縁の相手のはずなのにそれほど本編では絡みのない三人。いずれ過去の話をやるのでそこで。




