第九話 第二の故郷
前回のあらすじ
デグラストルに帰り、武器を調達する。初代が使っていたレイガリングという短剣、機械じかけのマシーンブレイド。どちらも状況に合わせ、使っていくつもりだ。
前にオルレインが言っていた通りでは、闇、神、龍の宝玉は後々手に入る、ということらしいので、実質残り二つだった。
そして、その二つの在処は、俺の第二の故郷、鬼の住まう聖都だった。まずは絶乱戦無一家にでも訪ねてみるか。そういえば、この世界の一家とは、四年ぶりなのか。俺からすれば二年ぶりなのだが、あのときは未来の一家だったわけだしな。
絶乱戦無一家を訪れると、昔と変わらないようであり、少し安心した。
扉を叩くと、すぐに師匠が来てくれた。
「……お久しぶりです、師匠」
「お前……レインか。よく来たな」
俺の体年齢は十六で止まっていたが、最後に会ったのは十四だからニ年間でいくらか俺の体は変わったのであろう、師匠ははじめ誰かわからなかったようだ。俺と判断できたのはこの特徴的な髪型だろうな。
「今日は用事があったので来ました」
師匠にこれまでの経緯を話す。
「なるほどな、三年後に俺たちはやらねばならぬことがあるのか」
「そういうことです。……皆は?」
「蒼鬼も紅鬼もいる。今日はここでゆっくりしていけ」
「わかりました」
師匠の部屋を出て、廊下を歩いていると蒼鬼に会った。
「久しぶりだなーレイン。えっと、お前今王様なんだっけ。噂は聞いたぜ。やるなぁ、出世頭じゃねえか」
「ああ。……久しぶりだ、蒼鬼」
「相変わらずだなぁ、お前、その喋り方。今日は何しに来たんだ?」
「聖都の中心部に用事がある。……ここに来たのは挨拶だ。師匠に今日はここで泊まるように言われた」
「おう、夜にでもゆっくり話そうぜ」
「ああ、また後でな」
「おう!」
紅鬼の部屋の前に来た。
「お久しぶりです、レイン」
彼女は読書をしていた。
「久しぶり。……金鬼さんもいらっしゃったのですね」
金鬼もまた、紅鬼の部屋にいたのだ。
「いらっしゃい。既に銀鬼から聞いてます」
「……一日お邪魔します」
慣れない敬語は難しい。昔はよくしたものだが。
「レイン、近況報告してくれませんか?」
二人に師匠と同じことを話す。
「結婚……したのですね、おめでとうございます」
「紅鬼、やはり鬼の掟は破ることはできないのよ」
一体何の話をしているのだろうか。
「そう、ですよね、母上……」
紅鬼は何やら顔を曇らせていた。
「……?」
『君に恋煩いでもしていたのか』
「……まさか」
空気が重々しくなったので、去る事にした。
その後、夜明けまで蒼鬼の話に付き合った。
「いやー喋った喋った!」
「喋りすぎだ……もう少し他人の事を考えるがいい」
「いやぁ、嬉しくなっちまうじゃん? だって四年なんだぜぇー」
「まあ、それもそうなのか」
支度をした俺は家を出ようとする。一家全員に見送られることになった。
「では、また三年以内に……」
「そうだな、その日を待つことにしよう」
「そしてその時には」
「お前のリベンジを待っているぞ」
「……はい」
「レイン、またな!」
「また会いましょう」
俺は無言で頷いた。
ここにある宝玉を必ず見つけ出してみせる。
ここで第一部の神話編に繋がる会話をします。




