第八話 武器
前回のあらすじ
宝玉の祠に行った俺は残りの宝玉の数を確認することができた。そこで風と無の宝玉を手に入れる。そしてオルレインから次に伝えられたことは武器を確保しろ、ということらしい。
デグラストルに帰った俺は、まず宮殿の王座に向かった。あまり俺は王座が好まず、近づくことはなかったのだが、今回は別だ。
「……この剣か」
王座の後ろの壁に剣がかかっていた。何の変哲もない刀身、刃渡りは三十センチから四十センチくらいか。かなり短い。ちなみに天地の剣は一メートル五十センチだ。前に使っていた剣と、このレイガリングは形が似ている。
「……なんだ、この重さは」
持ち上げようとしたが、ビクともしなかった。
仕方なく、飛びながら引っ張ることにした。下からがだめなら上からだ。
「っ……!」
いつも以上に力を出し、レイガリングを持つ。しかし、持続は無理だった。落とすと、地響きを立てる。
「よくこんなものを初代は持っていたな……」
『恐らく人間の手では無理だ』
なるほど、そういうことか。
擬龍態になる。体の本質は人間だが、手、足、翼、尻尾が龍になる。皮膚は鱗を纏い、緑色である。その状態でレイガリングを持ってみる。
「……これならば扱える」
「天地人ってなんでもありなのね」
クロスがやってきた。この姿でも俺だとわかるらしい。
「全くだ……」
擬龍態から擬人態に戻る。ただ、レイガリングを持つ手は部分的に擬龍態のままである。
「はいこれ、レインに届け物」
「……剣?」
「鍛冶屋の人が使って下さい、だってさ」
何だかよくわからない剣である。ガラクタが寄せ集めになっているような感覚。
『市街地に行く手間が省けた』
「マシーンブレイドっていうらしいんだけど……ただの剣じゃないのよ。鍔の部分にスイッチがあるでしょ。そこを押すことが前提らしいわ」
そう言ってクロスは俺から離れて柱の陰に隠れた。何が起きるというのだ。
スイッチを押すと、その寄せ集めが飛び散った。寄せ集めは小さい剣たちだったのだ。その剣たちは磁力か何かわからないが、浮いている。
「中央の剣と他の剣が一定の間隔を保っているのよ。そのまま振るうと他の剣も共に振った方向に飛ぶのよ。中央の剣を離しても問題ないわ。その剣の展開力を利用して、転移術を使ってあらゆる方向から攻撃できると思う」
「……これもまた一般人には扱えなさそうな武器だな」
時空間転移術を使いながら試し斬りする。
「これは……!」
テクニックが必要とされるが、敵を惑わすには使えそうだ。
「ありがとう、クロス」
「どういたしまして。あ、宝玉二つ見つけてきたわ」
彼女から渡された宝玉は、''夢''の宝玉、''幻''の宝玉だった。確かに宝玉である。
「なんだか夢見ていたらこれの在処がわかって……勝手に一人で行動してごめんね」
「いや、助かる……」
「夢と幻の宝玉が見せた夢は、これからの未来を暗示しているかのようだった。レインはこれからどんどん戦うことになるのかしら」
「ああ……。そのための準備なわけだ」
「そっか。約束、覚えているよね」
「……勿論。俺は死なない」
彼女は微笑んでいた。不思議とこの笑顔を守りたいと思ってしまった。我ながらくさい考えだ。
『それが光の感情』
そうかもしれないな。
「またしばらく宝玉探しの旅に出る。あと五つだ」
「気をつけてね」
「ああ。クロスはこの国を頼んだ」
「頼まれたよ!」
これで、武器調達は無事に終えることができた。俺の所持する武器は天地の剣、レイガリング、マシーンブレイド。状況に合わせて戦い方を変えていこう。ちなみにレイガリングは鞘に収めると軽くなった。初代が何かしら魔術を込めたのだろう。
さて、また宝玉探しの旅に戻るとするか。
宝玉、残り五つ。
間延び回その2。




