第四話 光
前回のあらすじ
かつて俺が住んでいたという村にやってきた。そこにあった洞窟は吐き気を催す瘴気が漂っていた。そして謎の声に導かれて俺は再びあの洞窟へと向かう。
翌日、再び洞窟に入った俺に待ち受けていたのは、一人の女だった。あの声の正体だろう。髪が長く、何故か俺と似たような存在に感じた。
『来たか』
「……何者なんだ、お前は」
『汝の光の部分と言ってもいいだろう』
「意味がわからないな」
『無理もない。……汝は生まれた時からまともな感情を得られない、理解できないのだから』
「質問に答えろ」
『気づかないのか? 何故、汝は感情を欠落している? 本来あるべき感情が何故ないのだ?』
質問を質問で返すな、と言いたいところだが、言っても無駄だろう。
「知る由もない……」
『そうであるな。ならば私が代わりに答えてやる。私は汝のもう一つの感情、人格だ』
「……」
『汝は生まれた時に三つの人格を生み出した。そして二つの人格は体を形成し、世界に飛び散った。そのうちの一つが私だ。……さて、本題に入ろうか。昨日、汝らが言っていた推測だが、半分は正解だ。だが、魔族を殺したのは私だ。汝の防衛本能が私を呼び、その魔族を殺せと命令した。行動に至るまでは二年かかってしまったが、無事に殺すことができた。そして、汝の安全のために聖都に送り込んだ。まあ、その時、汝は必死に反対し、だだをこねていたがな。……ちなみに、汝の十字傷だが、縦の方は防衛の時にナイフを持っていた母が、汝を庇う時に誤って付けたものだ。そして横の傷は庇っていた母が貫かれた時に同時に傷ついたものだ。なお、額の傷だが、それは言わなくてもいいだろう。鬼との訓練の時に傷つけたものだ』
「お前は俺のどこまで知っている」
『全て、だ』
「っ……」
『汝の監視のためにしていた。だが、それは汝がこの十八という時になるまでの話だ。そして、十八となった今、監視のいらなくなった私は汝の元へ帰ろうとする』
「……意味がわからないな」
『すぐにでもわかるさ』
目の前にいた女は消えた。
『聞こえるか』
突然、頭の中にさっきの声が響いた。
『まあ、聞こえるはずだ。紹介を忘れていた。私の名前はオルタナティブ・レイン。オルレインでいい』
「……本当に何なのだ」
調子が狂う。
『ふん……汝よ、少し感情が理解できただろう。まあ、すぐにでもとは言わない。言い忘れていたが、私が女であるのは、天地人の象徴の一つ、両性であることからだ。汝は元々男であろう。それに対し、私は女の部分だ。私が戻ったからには、いつでも汝は女になれる』
「……そんなことを言われてもな」
女になれる、ということは俺が女になる? それは必要なのか?
『いいではないか。……疲れた。この喋りをするのは本当に疲れる』
こいつは意外とアホなのかもしれない。
『というわけで、やりやすいように喋る。……とまあ、要するに私は君の光の人格で、君の失った感情を持っていて、君を補う存在なのだ』
汝と言うのが疲れていたのか。だったらはじめからそれでいいのではないか。
『君のことはもう、解明しきれただろう?』
「……そうだな。あやふやな点が幾つかあるが、大体はわかった」
これで、俺の全てがわかったのか。あっさりだな。
『あとは闇の人格だな。これは厄介なため、もう少し宝玉を手にいれてからにしよう。そうそう、私からのおすそ分けだ』
目の前に''光''の宝玉が現れた。
『君、いや、私よ、再びよろしく』
「……面倒だからオルレインと呼ぶ。……よろしく」
どうも納得しないが、納得するしかないのだろう。
『仲間はもう呼んでいいぞ』
何だか今日は疲れてしまった。骨折り損というわけではなかったが、この厄介な人格が住み着いたせいだろう。
そして、俺はこの時自らのことを理解できたと思っていた。出生後の謎も解けたと思い込んでいた。しかし、それは誤解の始まりだった。
今回からあらすじを主人公視点にしました。
そしてようやく感情の欠落、感情が理解できない伏線を回収できました。かなりの重要回です。




