第三話 悪夢
前回のあらすじ
火山にある宝玉を手に入れようとするが、中々の苦戦を強いられ、間一髪のところで取得することができた。
何かに呼ばれた気がした。女の声だ。この声はどこか懐かしい。だが、俺の記憶にはその声はなかった。
『こちらにおいで』
やがて目の前に広がるのは両親が殺される場面。母が俺を抱きしめた。俺の顔に傷をつけた。そして、母の体は貫かれた。
「やめろ……やめろぉぉおお‼︎」
物凄い音を立て、起き上がる俺。
「ハァハァ……。夢……か……」
俺が悪夢を見るとはな。何かの予兆なのか。
「レイン、どうしたの? 汗すごいよ」
クロスもまた、俺の声によって起きたようだった。今は俺の汗を拭いてくれている。
「……悪夢を見た」
「悪夢?」
「ああ。……どうやら行かなくてはならないところがあるみたいだ」
「どこなの」
「地図にはないところだ。……リベルトたちも呼んだ方がいいだろう。あいつら興味を示していたからな。おそらく、俺の出生に関することだ」
「わかった。でも、無理はだめよ」
「……こればかりは無理を通していくしかない。たとえそれが残酷な現実だとしてもだ」
リベルトたちを呼んだ後、その場所の近くまできていた。世界地図には載っていないが、載せるとしたらかなり上の真ん中辺り、といったところか。そこに小さな村があった。
「なんか薄気味悪いところね」
ここの村にきっと何かがある。
「村人も皆鬱みたいな感じだぜ」
「……すみません、お聞きしたいことがあります」
「レインが敬語って珍しいね」
これでも礼儀はあるつもりなのだがな。
「……なんじゃい、若者よ」
「かつてこの村にデグラストルの者が来ませんでしたか」
「ああ、居たのう。しかし、あの日魔族によって殺されたきり、音沙汰がなくての。皆怖がって誰も近寄らないんじゃよ。結局、十五年間経ってしもうた」
「そうですか。して、それはどこに」
「村の一番奥の洞窟じゃよ」
「ありがとうございます」
「行くのかえ?」
「ええ」
「気をつけての」
「なんか複雑な気分だぜ」
洞窟の前に来た俺たちは、確かに十五年間何もされていないように感じた。
「……行くぞ」
洞窟の中に入ると、蜘蛛の巣が大量にあった。それを除けて奥に入ると、居間のようなところに出た。
「うっ……なんだよ、これ。ひでえ……」
そこには無惨にも、屍が四つあった。
「……二つは両親のだ……」
「わかるの?」
「今朝、あの悪夢の通りだった。俺は夢の中で聞こえた声に導かれてここに来たのだ」
居間の隣には聖都に繋がる川があった。大体察せた。
「あと二つの死体は?」
「これは魔族のものだな」
「でも、待てよ。世界の法則の破った者を裁くのは天空人だろ? なんで魔族がやったんだ?」
「……推測だが、天空人によって裁かれる前に魔族が俺の両親を殺した。そして、デグラストルの王ではなく、魔王の幹部として育て上げようとした魂胆だろう。だが、それに気付いた天空人はこの魔族を殺した」
「そんでそこの川からレインを聖都に流し、絶乱戦無一族に引き取られたと」
「……妹はこの時既に別のところで養っていてもらっていたようだな」
「よく気が狂わないな、レイン。俺だったらもうだめになる。というか、今すぐに出たい。なあ、ハース、クロス。お前たちもここから出たいだろ」
「本当はね……」
「うん……」
当然の反応だ。ただでさえ村人はここに近づこうともしないというのに。
「……すまない。お前たちは先に外に出ていてくれ」
「そうさせてもらうぜ……うっ……」
瘴気に当てられそうだ。
「……ここに何かあるな」
引き出しのような物を開ける。そこには宝玉が二つあった。
「''究''と''極''の宝玉……」
究極の力、か。いや、今はそれどころではないな。
『真実を知りたいか』
「!?」
夢で聞いたあの女の声が今、聞こえた。
「……誰だ」
『知りたければ、明日、ここに来るがいい。一人でな。汝の仲間は一度帰してやれ』
その女の声はそれきり消えた。一体何者なのか。
その後、事情を話し、それぞれ帰る場所に皆を帰した。
一方、俺は天地の剣が究極の宝玉に共鳴していることに気付き、宝玉を嵌める部分に嵌めてみた。
「……そういえば、この穴はそういうことだったのか」
天地の剣は四つの穴が空いている。上から順番に究極の宝玉を嵌めた。何故かしっくりとくる。そして、天地の剣がより強くなったと感じられた。
「明日、か」
そのためにも早めに寝ておかなければ。
重要回。




